愛しのアリシア

京衛武百十

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ロボット忍者、アリシアの街角忍法帳

旧式化し市場価値を失ったロボット、活躍す

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なお、ニューオクラホマには、その<大規模食品生産工場>の中でも最大規模のものが存在していた。

人間の従業員を使って同じ規模のものを運営すると二十一世紀初頭の日本のレートに換算して年間数十億円ものコストがかかるところが、

『人間は、管理者として配されている者が二人。それ以外はすべて旧式化し市場価値がなくなったロボットを再利用』

しているそこの運営コストは、僅か年間一千万円弱なのだという。

『電源は大規模太陽光発電。使われるロボットは、メンテナンスも行わず限界が来れば新たに出た<旧式化し市場価値を失ったロボット>と置き換えられるだけ。廃棄されたロボットは再資源化されるため処理費用も掛からない。肥料は都市で出る生ゴミ(主に破棄された食品)をロボットの管理の下で堆肥に変えたもの。農薬の使用量は細菌性の病気を防ぐための最低限』

という形なので、実質的なコストは、管理者二人の給与。僅かな農薬に、生ゴミの回収・運搬費用と、生産した食品を出荷するための輸送費用だけというものだった。

まさに夢のようなものではあるものの、それを、食品生産全体に広げようとすると『<人間の職>が奪われることになる』というのもあり、あくまで、

<生活困窮者の救済のための事業>

及び、

<旧来の農耕技術の再検証のための実験>

として行われているのが実情である。

そして、実際の<食品工場>の光景は、農業が機械化される以前の、牛や馬が<プラウ>を牽いて土を耕し、そこに人間が手で種を蒔くというものを、すべてロボットに置き換えたそれであった。

比較的大型でパワーのあるタイプのレイバーギアが牛の代わりにプラウを牽き、メイトギアが種を蒔く。

しかも、そこで運用されているメイトギアは、通常のエプロンドレスを模した外装ではなく、スカート部分を外しその上に農作業用の服を着ているという形なので、それこそ遠目には人間に見えてしまう。

場合によっては、プラウを牽くレイバーギアに牛を模した布製のカバーを掛けていたりすることもあり、ますます大昔の農地の光景のようだったりもする。

また、人間では苦役にも等しい重労働になってしまう<草抜き>の作業もまったく苦にならないので、除草剤もほとんど使わない。

ゆえに、大変にのどかで牧歌的な風景が広がっており、これもまた、観光の目玉だったりするのだ。

高度に機械化され自動化された現在の農地では見られない、昔ながらの田園風景だということで。

ちなみに観光客が落とす金も、運営資金の一部となっていたのだった。


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