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ロボット探偵、アリシアの路地裏探検記
千堂アリシア、路地裏を歩く
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アナログ極まりない<手描きの地図>を基に、アリシアはいかにもな路地裏を歩いた。当然、GPSも使い自分自身でもマッピングしながらなので、人間ほどは困らない。困らないものの、なんとも言えない不可解な<気分>もある。自分が持つ<データ>がここまで当てにならないというのがこんなにも不安な気持ちにさせるとは……
普通のロボットであればその辺りは気にしない。データが当てにならないのならならないで『そういうもの』として割り切ってしまうからだ。しかし千堂アリシアは、<心|(のようなもの)>を持っていることで<動揺>してしまう。その動揺こそが<不安な気持ち>というものなのかもしれない。
現在、千堂アリシア=アリシア2234-LMN-UNIQUE000についての一番の<懸念>こそが、この<動揺からくる暴走>である。周囲に、<ただの通りすがりのメイトギア>として配された複数のメイトギアが、即応状態に入る。
千堂アリシアのことは、
<特殊な条件下での運用試験のために用意された特別仕様機>
という認識が与えられているので、
『この<アリシア2234>は故障している』
的な捉え方はしないが。
かつて、アリシアが千堂京一に引き取られた際、彼の邸宅で先に運用されていた<アリシア2305-HHS>に、
<故障して暴走状態にある危険なメイトギア>
と認識されて敵視されたという先例があったことで、先手を打ったということである。
もっとも、当時の千堂アリシアと現在の彼女とではそもそもまったく状態が違うので問題はないはずだが、それでも万が一に備えるのは当然だろう。
アリシア自身、自分の暴走について対策が講じられていることは承知しているものの、それを気に病むことももうない。
『自分は危険視されている』
と卑屈になることもない。
ただ堂々と、与えられた役目を果たすだけだ。
でも、その時、
「あれは……?」
見る者によってはどこか郷愁さえ感じさせるような、雑然と家々が並ぶ<路地裏>で、さらに狭くもやは路地とさえ呼べないような<家と家の隙間>を覗き込んでいる者の姿を、彼女のカメラが捉えていた。
それは、<少女>だった。十歳になるかならないかくらいの、黒髪を胸の辺りまで伸ばし、それを半分ずつ両肩の辺りで束ね、ピンクのワンピースをまとった、いかにもあどけない少女が、少し困ったような様子で、隙間を覗き込んでいるのである。
その様子に、アリシアは黙っていられなかった。
別に自分がお節介を焼かなくても、人通りこそないものの、複数のメイトギアが待機しているのは分かっている。となれば任せておいても何も心配はないはずだ。
けれど……違う。そういうことじゃなかった。なぜかは分からないけれど、論理的に説明はできないけれど、アリシアは通り過ぎることができなかったのだった。
普通のロボットであればその辺りは気にしない。データが当てにならないのならならないで『そういうもの』として割り切ってしまうからだ。しかし千堂アリシアは、<心|(のようなもの)>を持っていることで<動揺>してしまう。その動揺こそが<不安な気持ち>というものなのかもしれない。
現在、千堂アリシア=アリシア2234-LMN-UNIQUE000についての一番の<懸念>こそが、この<動揺からくる暴走>である。周囲に、<ただの通りすがりのメイトギア>として配された複数のメイトギアが、即応状態に入る。
千堂アリシアのことは、
<特殊な条件下での運用試験のために用意された特別仕様機>
という認識が与えられているので、
『この<アリシア2234>は故障している』
的な捉え方はしないが。
かつて、アリシアが千堂京一に引き取られた際、彼の邸宅で先に運用されていた<アリシア2305-HHS>に、
<故障して暴走状態にある危険なメイトギア>
と認識されて敵視されたという先例があったことで、先手を打ったということである。
もっとも、当時の千堂アリシアと現在の彼女とではそもそもまったく状態が違うので問題はないはずだが、それでも万が一に備えるのは当然だろう。
アリシア自身、自分の暴走について対策が講じられていることは承知しているものの、それを気に病むことももうない。
『自分は危険視されている』
と卑屈になることもない。
ただ堂々と、与えられた役目を果たすだけだ。
でも、その時、
「あれは……?」
見る者によってはどこか郷愁さえ感じさせるような、雑然と家々が並ぶ<路地裏>で、さらに狭くもやは路地とさえ呼べないような<家と家の隙間>を覗き込んでいる者の姿を、彼女のカメラが捉えていた。
それは、<少女>だった。十歳になるかならないかくらいの、黒髪を胸の辺りまで伸ばし、それを半分ずつ両肩の辺りで束ね、ピンクのワンピースをまとった、いかにもあどけない少女が、少し困ったような様子で、隙間を覗き込んでいるのである。
その様子に、アリシアは黙っていられなかった。
別に自分がお節介を焼かなくても、人通りこそないものの、複数のメイトギアが待機しているのは分かっている。となれば任せておいても何も心配はないはずだ。
けれど……違う。そういうことじゃなかった。なぜかは分からないけれど、論理的に説明はできないけれど、アリシアは通り過ぎることができなかったのだった。
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