愛しのアリシア

京衛武百十

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ロボット勇者、アリシアの電脳異世界冒険記

悪意

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ゴーディンについてはナニーニとコデットが完全に対処してくれていて、アリシアはラウルに集中するだけでよかった。

と言うかむしろ、ラウルに集中しなければこのバランスは実現できなかっただろう。ジョッシュとファの援護も含めて。

それほどまでにラウルは強かった。それどころか、

「ぐふう……! ぐううっふうう……!!」

何か、様子がおかしい。しかも、

『肉体が、崩れてきている……っ?』

アリシアがそう感じたとおり、ラウルの肉体のシルエットが歪み始めていた。しかも、防御も兼ねていたローブの大半が削り取られ、ラウル自身の肉体さえ、ジョッシュの空間断裂魔術によって抉り取られ始めたというのに、その削れた部分が歪に復元されていくのだ。

それはもう、<人間>の在り様ではなかった。

「不正なコードが、サーバー内で猛烈に増殖! ラウルのコードが書き換えられていきます……!」

「く…っ! 抑えられないのか!?」

「ダメです! 対応が追いつきません……!」

VRアトラクションの外で、オペレーター役の女性と宿角すくすみとがやり取りしているのを、アリシアも聞いていた。

『増殖した不正コードによる書き換えが、視覚的にはこのように再現されているということですか……!』

ラウルの<変化>を、アリシアはそう理解した。しかもこの不正コードは、いよいよ、サーバー内の<ORE-TUEEE!>のスプリクトそのものを侵食しているのも分かる。

おそらく、プレイを進めていくことで発動するトラップなのだろう。そしてサーバーの一つがこれほどの異常な状態になればその影響は<ORE-TUEEE!>全体に波及し、最悪、アトラクションそのものが崩壊する。

つまり、それが<犯人>の狙いということか。

しかし、やはり仕掛けそのものが稚拙で合理性があまり感じられない。加えて、<ORE-TUEEE!>の破壊を狙ってはいるものの、だからと言って何らかの要求も出してこないというのも不自然だ。ここまでのことをするなら、金銭の要求なり何なりがある方がむしろ自然だろう。

なのに、それもない。

もっとも、もしかすると<犯人>自身がそれをできる状態にないのかもしれないが。

いずれ金銭の要求なり何なりをするつもりで仕掛けていたもののその前に何かが犯人自身に降りかかって、この<仕掛け>だけがそのままになっていたという可能性もある。

もちろん。本当にただの<愉快犯>でしかなく、<ORE-TUEEE!>を破壊したいだけという可能性も否定はできない。

いずれにせよ、これを仕掛けた者の悪意だけは明白と言えるのだろうが。

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