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ロボット勇者、アリシアの電脳異世界冒険記
宣戦布告
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アリシアが男の顔に「フッ!」と呼気を吹きかけると、
「痛っ!」
男が目を瞑って顔を背けた。何か小さく固いものが目の近くに当たった気がしたのだ。
しかしそれは、ただの空気だった。アリシアの口で圧縮された空気の塊が、ほとんど実際の<硬さ>を知覚させるほどに強くぶつかったことで、男は、痛みすら感じてしまったのである。
とは言えそれは錯覚だ。実際には固形物など当たっていない。
それでも牽制には十分すぎる威力だった。
アリシアが再び口をすぼめるのに気付くと、男は慌てて彼女の体を放した。
するとアリシアは地面に降り立つと同時に、男の襟首を掴み、そのまま真っ直ぐ天に向かって掲げるように持ち上げてみせた。
少なく見積もっても体重百二十キロはありそうな男を、右手だけで高々と。
身長差があるので実際にはそれほど高くないものの、男の足は完全に地面に届いていなかった。
アリシアは言う。
「これだけのことができる私に何らかの害をなすことができる方がいるとするなら、私はむしろその方に会ってみたいですね。ですので、私は店に入らせていただきます。『入るな』と店側がおっしゃっているのに入るのですからこれはれっきとした<不法侵入>に当たりますので、そちらとしても自己防衛を行う権利はあるでしょう。
ゆえに、これは、私からあなた方への<宣戦布告>です。男爵の爵位を持つ者として、反社会組織を排除します。
本当は、この店の責任者に対して宣告するはずだったのですが、あなたが入れてくれないのでここで告げることにします」
男を吊り上げたままでそう口にしたアリシアの周囲を、いつの間にか、ナイフや剣を構えた強面の男達が取り囲んでいた。
店の前でこれだけ騒げば当然かもしれないが、店にいた<ゴクソツ>の関係者達が出てきてしまったのである。
なのにアリシアはまったく怯む様子さえなく、
「この店とは無関係な方は、直ちに避難してください! これからここは<戦場>になります! これより先、敵対する方には容赦はしません!!」
高らかに注意勧告を発する。これは、逃げずに立ち向かってくる者は<反社会組織の一味>として武力によって制圧するという警告でもあった。
そうして、その場を離れようとする者を確認し、その一方であからさまな敵意を向けながら武器を手に残った者達に向けて、右手に掲げた男を振り回した。
「なあっ!?」
片手で巨漢の男を持ち上げているだけでも信じ難いというのに、さらにそのまま片手で鞄でも振り回すかのように男を振り回すアリシアに、動揺が広がるのが分かったのだった。
「痛っ!」
男が目を瞑って顔を背けた。何か小さく固いものが目の近くに当たった気がしたのだ。
しかしそれは、ただの空気だった。アリシアの口で圧縮された空気の塊が、ほとんど実際の<硬さ>を知覚させるほどに強くぶつかったことで、男は、痛みすら感じてしまったのである。
とは言えそれは錯覚だ。実際には固形物など当たっていない。
それでも牽制には十分すぎる威力だった。
アリシアが再び口をすぼめるのに気付くと、男は慌てて彼女の体を放した。
するとアリシアは地面に降り立つと同時に、男の襟首を掴み、そのまま真っ直ぐ天に向かって掲げるように持ち上げてみせた。
少なく見積もっても体重百二十キロはありそうな男を、右手だけで高々と。
身長差があるので実際にはそれほど高くないものの、男の足は完全に地面に届いていなかった。
アリシアは言う。
「これだけのことができる私に何らかの害をなすことができる方がいるとするなら、私はむしろその方に会ってみたいですね。ですので、私は店に入らせていただきます。『入るな』と店側がおっしゃっているのに入るのですからこれはれっきとした<不法侵入>に当たりますので、そちらとしても自己防衛を行う権利はあるでしょう。
ゆえに、これは、私からあなた方への<宣戦布告>です。男爵の爵位を持つ者として、反社会組織を排除します。
本当は、この店の責任者に対して宣告するはずだったのですが、あなたが入れてくれないのでここで告げることにします」
男を吊り上げたままでそう口にしたアリシアの周囲を、いつの間にか、ナイフや剣を構えた強面の男達が取り囲んでいた。
店の前でこれだけ騒げば当然かもしれないが、店にいた<ゴクソツ>の関係者達が出てきてしまったのである。
なのにアリシアはまったく怯む様子さえなく、
「この店とは無関係な方は、直ちに避難してください! これからここは<戦場>になります! これより先、敵対する方には容赦はしません!!」
高らかに注意勧告を発する。これは、逃げずに立ち向かってくる者は<反社会組織の一味>として武力によって制圧するという警告でもあった。
そうして、その場を離れようとする者を確認し、その一方であからさまな敵意を向けながら武器を手に残った者達に向けて、右手に掲げた男を振り回した。
「なあっ!?」
片手で巨漢の男を持ち上げているだけでも信じ難いというのに、さらにそのまま片手で鞄でも振り回すかのように男を振り回すアリシアに、動揺が広がるのが分かったのだった。
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