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ロボット主任、アリシアの細腕奮戦記
舞台装置
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泥酔した上、エリナ・バーンズに一方的に絡んだことで、結果的に警察に<保護>されることになったジョン・牧紫栗は、エリナ・バーンズには何の落ち度もないのに、
『何で俺が連行されんだ? やっぱ火星人にゃまともな奴はいねーってことだな……! あのエリナ・バーンズとかいうクソ女みたいな、な』
などという見当違いな恨みを拗らせていた。
警察のご厄介になるという時点で自分に非があったことを気付き、自らのあり方を改めていければ<舞台装置>にならずにすんだであろうに、なぜ自分を客観的に見るということができないのか。
それも結局、そういうものの見方を教わっていないからということに限るのかもしれない。
何度か口で説教しただけで身につくなら、赤ん坊は何度か話しかけるだけで普通にしゃべれるようになるだろう。しかし現実は、「ママ」や「パパ」と、明らかに意味を分かって使い始めてからも、普通の日常会話ができるようになるまでには一年二年とかかる。周囲の人間が普通に会話しているのを常に見ていてもである。
だから人として他人を労わったり敬ったりするという姿勢も、何度か片手間に説教するだけで身に付くものではないのではないのか? その手本を毎日のようにそばで見せていてこそ身に付くものではないのか?
幸い、良い出逢いに恵まれて家族以外の誰かからそれを教わる可能性はあるとしても、そんなことを期待するのがそもそも間違ってはないか? 親がその手本にならないというのなら、何のために親はいるのか? 子供を養うためか? しかし養うだけなら家畜と同じように一箇所に集めて食事だけ与えておけば生きていられるのでないのか?
そうではなく親の下で養育されるというのは、金を稼いで子供を学校に通わせてとすればいいというわけではないからとは思わないか?
千堂がアリシアを自身の下においているのは、『管理する』ということだけではないのだ。彼女に人間というものはどういうものであるかということを、他人を労わり敬うというのはどういうことであるかというのを、身をもって教えるためである。
ロボットは人間を労わり敬ってくれているように見える。しかしそれはただのアルゴリズムによってもたらされる<反応>でしかないのだ。
『こういう時はこういう対処をすれば、人間からは労わってもらえている敬ってもらえていると認識できる』
というものでしかないのである。
これは決して、労わっているのでも敬っているのでもない。<上辺だけの演技>となにも変わらない。ロボットの場合はその裏に隠している本心がない、下心がないというだけでしかないのだ。
『何で俺が連行されんだ? やっぱ火星人にゃまともな奴はいねーってことだな……! あのエリナ・バーンズとかいうクソ女みたいな、な』
などという見当違いな恨みを拗らせていた。
警察のご厄介になるという時点で自分に非があったことを気付き、自らのあり方を改めていければ<舞台装置>にならずにすんだであろうに、なぜ自分を客観的に見るということができないのか。
それも結局、そういうものの見方を教わっていないからということに限るのかもしれない。
何度か口で説教しただけで身につくなら、赤ん坊は何度か話しかけるだけで普通にしゃべれるようになるだろう。しかし現実は、「ママ」や「パパ」と、明らかに意味を分かって使い始めてからも、普通の日常会話ができるようになるまでには一年二年とかかる。周囲の人間が普通に会話しているのを常に見ていてもである。
だから人として他人を労わったり敬ったりするという姿勢も、何度か片手間に説教するだけで身に付くものではないのではないのか? その手本を毎日のようにそばで見せていてこそ身に付くものではないのか?
幸い、良い出逢いに恵まれて家族以外の誰かからそれを教わる可能性はあるとしても、そんなことを期待するのがそもそも間違ってはないか? 親がその手本にならないというのなら、何のために親はいるのか? 子供を養うためか? しかし養うだけなら家畜と同じように一箇所に集めて食事だけ与えておけば生きていられるのでないのか?
そうではなく親の下で養育されるというのは、金を稼いで子供を学校に通わせてとすればいいというわけではないからとは思わないか?
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ロボットは人間を労わり敬ってくれているように見える。しかしそれはただのアルゴリズムによってもたらされる<反応>でしかないのだ。
『こういう時はこういう対処をすれば、人間からは労わってもらえている敬ってもらえていると認識できる』
というものでしかないのである。
これは決して、労わっているのでも敬っているのでもない。<上辺だけの演技>となにも変わらない。ロボットの場合はその裏に隠している本心がない、下心がないというだけでしかないのだ。
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