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第六幕

<徳>は世代を超えて受け継がれることは少ないが

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『自分だけが救われればいい。自分だけが報われればいい。目先の面倒だけなんとかなればいい』

人間というのはとにかくそれで済まそうとする傾向がある。嘘でその場を取り繕うとするのも、暴力で手っ取り早く問題を処理しようとするのも結局はそれであろう。その先で何が起ころうと自分には関係ないと思っているのだ。

だから問題が根本的に解決されなかったり余計に拗れたりする。その場でムカついたからといって煽り運転などをして事故に至ったりするような事例など、その典型ではないだろうか。

『目先の感情を優先したことでその後さらに厄介なことになる』

という形で。

『他者を暴力で支配しようとする』などというのも、それが何を招くのかということについて考えていないからこそできることであろう。

独裁者などの場合はそれこそ、自身がその立場にいる間だけ上手くできれば、死んだ後のことなどどうでもいいと思っているのかもしれないが。

しかし、本当にそんなことが実現できた独裁者が果たしてどれだけいただろう。

独裁を受け継いだ者がいても、先代が積み上げた不平不満や恨みをコントロールすることに汲々とするだけだったりはしないか? 

それどころか先代が積み上げた不平不満や恨みがついに爆発して代わりにぶつけられることになってしまったりしないか?

そのような事態であることを窺わせるような事例は、人間の歴史上にも数限りなくあったのではないか?

人間の世代をまたいで観察を続けることができる吸血鬼にとっては当たり前のこととして得られる実感だった。

さらに、<徳>は世代を超えて受け継がれることは少ないが、逆に憎悪は容易く残り続け、それどころか濃縮されていくことが多くないだろうか?

その実感があればこそ、憎悪を蓄積させるのは結局のところ全体の収支で見るなら大きな損になるということも理解できる。

戦争という行為も、その後何十年、場合によっては何百年も遺恨を残し、『手を取り合い協力して事をなす』ということさえ容易にできない状況を作り出すのではないのか?

実際に、それによって話が進まないという状態を目の当たりにしていたりするのではないのか?

なるほど確かに、戦争になる以前からそういう状況であったり、そもそも戦争に至った原因がそれであったりということもあるだろう。<迷惑な隣人>とは手を取り合うことなどしたくないと考えるだろう。

だが、

『そもそもなぜ迷惑な隣人になってしまったのか?』

ということを考えると、思うところもあるのではないだろうか。

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