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第六幕

同年代くらいに

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それに、長命の吸血鬼である以上、人間の年齢に換算すると、外見からしても今のディマは三十どころかそれこそトードやカミラと同年代くらいになると思う。

でもまあ実年齢だと、こちらは反対の意味で三十どころじゃないからね。いずれにしても人間の感覚とは噛み合わないかな。

でも三人の関係性そのものはとてもいい感じに思える。あたたかみを覚えさせるそれなんだ。

ドートとカミラが一方的にディマに依存しているというのじゃなくて、ディマ自身も彼女達に支えられているというのが分かる。それがいいんだ。

そして話をしているところに、

「おい、リハの時間だぞ」

ノックの後に声がかけられた。するとディマは、

「じゃあ二人でよろしく」

ドートとカミラに向かって手をひらひらとさせながら言った。

「おいこら」

「お前も一緒にやるんだよ」

二人は揃って返す。まあ当然だよね。

なのにディマは、

「あたしはイゴール達の相手してなきゃいけないから。それにあたしは二人と違って天才だし」

堂々と本当にそう言ってのけた。

だけど二人もそう簡単に引き下がるワケもなく、

「だからふざけんなっての!」

「お前の演奏はいつも一人で突っ走りすぎなんだよ! ちったああたし達に合わせるってことをしやがれ!」

二人はキレ気味だ。だけどこれすらいつものことなんだろうなというのは、二人が本気で怒ってるわけじゃないっていうところからも察せられる。

恒例のレクリエーションなんだろう。

だけどイゴールはまだそういうのを感じ取れないからか、少し慌てた様子で、

「お、俺、三人が演奏してるのを見たいな。俺達だったら大丈夫だから、ここで待ってるから」

そう口にした。

これにはディマも、

「お、おう、そうか。悪ぃ、気を遣わせちまったな」

途端に申し訳なさそうな様子になって、ドートとカミラも、

「サンドラの客に気を遣わせてんじゃねえよ」

と声を合わせて言うものの、やっぱりバツが悪そうだ。思いがけない反応だったんだろう。

「じゃ、お詫びに、リハだけどちょっと本気見せちゃおうかな」

ディマが頭を掻きながらも笑った。

「リハとはいっても客席の方に入ると色々あれだから、ステージ脇から見ててもらえるかな」

「最近は何かとうるさいからね」

「ごめんな」

言いながら僕達を楽屋から連れ出したところに、

「おい、子供は……」

スタッフが声をかけるけど、

「しょうがねえなあ。周りからなるべく見えないようにしてくれよ」

苦笑いしながら通してくれた。

「すまねえ、マズかったか?」

イゴールがまた申し訳なさそうに口にすると、

「なあに、大丈夫大丈夫。気にすんな」

三人は悪戯っぽく笑ったのだった。

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