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第六幕

まずは体を拭いて着替えようか

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こうしてエイスネは、メイヴと共にアパートメントの一室で暮らすこととなった。

「とにかく、生活するために必要なものはだいたい用意してあるから。服も、サイズは完全には合わないだろうけど、取り敢えず二着、用意してある。まずは体を拭いて着替えようか。その服も洗わないといけないし」

いわゆる<クラシカルメイド>的な格好をしているメイヴは、まさしく<ナースメイド>や<レディースメイド>そのままの存在のようだ。

あらかじめ用意してあったと思しき湯の入ったタライに手を浸し、

「ん、ちょうどいいかな」

湯加減を確かめた上で、

「ごめんね」

と言いながら手際よく、エイスネの、もはや<服>と言うにはあまりにもなただの<服の形をしたボロキレ>に等しいそれを脱がせていく。だが、決して乱暴だったり雑な扱いはしない。この時代、子供が身に着けている服はたいてい、母親などが作ってくれたものである場合が多いので、その母親を亡くしているエイスネのような子供にとってはそれこそ<母親の形見>に等しいものであったりもするからだ。それを粗雑に扱うのは、子供の存在そのものを粗雑に扱うのに等しい場合もあるだろう。ゆえにどんなに傷んでいても、子供自身が『要らない』と言わない限りは丁寧に扱うことをメイヴ達は信条としていた。

とは言え、今日初めて会った相手に服を脱がされることには、さすがに戸惑いもある。そんなエイスネに対しても、

「本当にごめんね。でも必要なことなんだ。病気とかを未然に防ぐためにも」

確かに、エイスネが身に着けていた服にはノミやシラミのような害虫をはじめどんな病原菌が付着しているか分からない。ゆえに、処分はしないとしても防疫処置は必要になる。これは<情>に対しても優先されないといけなかった。いけないが、その範囲内で可能な限り丁寧に対処は心掛ける。乱暴にはしない。

脱がせた服は蓋の付いたカゴにしまい、部屋の外に待機していた別のスタッフに引き渡す。防疫処置を行うために。この際、もちろん部屋の中は見えないように目隠しのカーテンは引いてある。

そうして裸にしたエイスネを、メイヴは、清潔な布を湯に浸して濡らし、それで彼女の体をそっと拭き始めた。拭きながら体の状態を確かめる。

が、エイスネの体は、血色こそあまり良いとは言えなかったものの、それこそミイラと変わらないほどだったとはまったく思えないほどに<普通>だった。なのにメイヴは、そのことについてはまったく疑問も抱いていないようであった。

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