581 / 697
第五幕
僕の言ってることを立証する羽目になる
しおりを挟む
僕が眷属にしたイゴールが何らかの事件を起こすと、人間はすぐに、
『殺しておかなかったからだ!』
とか言うよね? イゴールを殺しておかなかった僕に責任があると。
なのに、親がこの世に送り出した子供が何か事件を起こしても、
『親に責任はない』
とか言うんだ。しかも、
『どんな人間に育つかは生まれた時に決まってる』
なんて言って。生まれた時にどんな人間に育つか決まっているなら、その子供をこの世に送り出した当人の責任じゃないの? そしてこう言うと今度は、
『生まれた時点じゃ、そんなの分かるわけないだろ!』
みたいに言って、とにかく『自分には責任はない』ということにしたがる。
『子供は、生まれた時点じゃどんなのに育つか分からないけど、テロリストを生かしておいたらまた犠牲者が出て当然だろ!』
とも言うだろうな。
眷属化し、吸血鬼となったイゴールが人間に危害を加えるかどうかは、それこそ分からないよ。なにしろ彼は人間じゃなくなったんだから。人間とはまったく違う存在になり、人間だった時のことはただの記憶になってしまったんだから。その記憶に囚われてしまうかどうかは、僕にさえ分からない。
それでも、彼が人間に危害を加えれば僕に責任があると考えるんだよね?
『可能性はあるけど実際にどうなるかは分からない』
という意味では、
『どんな人間に育つか生まれつき決まっているにも拘らず子供を生んでこの世に送り出す』
ことと変わらないはずなんだけどな。
でもね、実際には『どんな人間に育つか生まれつき決まっている』なんてことはないんだよ。<そういう傾向>はあるとしても、決まってるわけじゃない。
『そういう傾向のある者に、それを助長するような認識を与えると先鋭化する可能性が高まる』
というだけでしかない。
イゴールも同じ。
彼には確かに人間に対する強い負の記憶があるけど、それが彼の行いに直結するとは限らない。当たり前の話だよ。
それが直結すると考えるのは、目先の感情を自らの行いに直結させるタイプの人間だろうね。
だからむしろそれを言っている人間の方がリスクは高いだろうね。実際に、ネット上で誰かを傷付けるための行いをしてるんじゃないの? そしてそれを、
<他者を傷付けるための行い>
であることを認識せず理解せず、<相手の所為>にして自らの行いを正当化しているんじゃないの?
もしそうじゃないと言うのなら、目先の感情を優先して悪態を吐いたりするのはやめた方がいいだろうね。
でないと、僕の言ってることを立証する羽目になる。
『殺しておかなかったからだ!』
とか言うよね? イゴールを殺しておかなかった僕に責任があると。
なのに、親がこの世に送り出した子供が何か事件を起こしても、
『親に責任はない』
とか言うんだ。しかも、
『どんな人間に育つかは生まれた時に決まってる』
なんて言って。生まれた時にどんな人間に育つか決まっているなら、その子供をこの世に送り出した当人の責任じゃないの? そしてこう言うと今度は、
『生まれた時点じゃ、そんなの分かるわけないだろ!』
みたいに言って、とにかく『自分には責任はない』ということにしたがる。
『子供は、生まれた時点じゃどんなのに育つか分からないけど、テロリストを生かしておいたらまた犠牲者が出て当然だろ!』
とも言うだろうな。
眷属化し、吸血鬼となったイゴールが人間に危害を加えるかどうかは、それこそ分からないよ。なにしろ彼は人間じゃなくなったんだから。人間とはまったく違う存在になり、人間だった時のことはただの記憶になってしまったんだから。その記憶に囚われてしまうかどうかは、僕にさえ分からない。
それでも、彼が人間に危害を加えれば僕に責任があると考えるんだよね?
『可能性はあるけど実際にどうなるかは分からない』
という意味では、
『どんな人間に育つか生まれつき決まっているにも拘らず子供を生んでこの世に送り出す』
ことと変わらないはずなんだけどな。
でもね、実際には『どんな人間に育つか生まれつき決まっている』なんてことはないんだよ。<そういう傾向>はあるとしても、決まってるわけじゃない。
『そういう傾向のある者に、それを助長するような認識を与えると先鋭化する可能性が高まる』
というだけでしかない。
イゴールも同じ。
彼には確かに人間に対する強い負の記憶があるけど、それが彼の行いに直結するとは限らない。当たり前の話だよ。
それが直結すると考えるのは、目先の感情を自らの行いに直結させるタイプの人間だろうね。
だからむしろそれを言っている人間の方がリスクは高いだろうね。実際に、ネット上で誰かを傷付けるための行いをしてるんじゃないの? そしてそれを、
<他者を傷付けるための行い>
であることを認識せず理解せず、<相手の所為>にして自らの行いを正当化しているんじゃないの?
もしそうじゃないと言うのなら、目先の感情を優先して悪態を吐いたりするのはやめた方がいいだろうね。
でないと、僕の言ってることを立証する羽目になる。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
甘灯の思いつき短編集
甘灯
キャラ文芸
作者の思いつきで書き上げている短編集です。 (現在16作品を掲載しております)
※本編は現実世界が舞台になっていることがありますが、あくまで架空のお話です。フィクションとして楽しんでくださると幸いです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
乙女フラッグ!
月芝
キャラ文芸
いにしえから妖らに伝わる調停の儀・旗合戦。
それがじつに三百年ぶりに開催されることになった。
ご先祖さまのやらかしのせいで、これに参加させられるハメになる女子高生のヒロイン。
拒否権はなく、わけがわからないうちに渦中へと放り込まれる。
しかしこの旗合戦の内容というのが、とにかく奇天烈で超過激だった!
日常が裏返り、常識は霧散し、わりと平穏だった高校生活が一変する。
凍りつく刻、消える生徒たち、襲い来る化生の者ども、立ちはだかるライバル、ナゾの青年の介入……
敵味方が入り乱れては火花を散らし、水面下でも様々な思惑が交差する。
そのうちにヒロインの身にも変化が起こったりして、さぁ大変!
現代版・お伽活劇、ここに開幕です。
貸本屋七本三八の譚めぐり ~実井寧々子の墓標~
茶柱まちこ
キャラ文芸
時は大昌十年、東端の大国・大陽本帝国(おおひのもとていこく)屈指の商人の町・『棚葉町』。
人の想い、思想、経験、空想を核とした書物・『譚本』だけを扱い続ける異端の貸本屋・七本屋を中心に巻き起こる譚たちの記録――第二弾。
七本屋で働く19歳の青年・菜摘芽唯助(なつめいすけ)は作家でもある店主・七本三八(ななもとみや)の弟子として、日々成長していた。
国をも巻き込んだ大騒動も落ち着き、平穏に過ごしていたある日、
七本屋の看板娘である音音(おとね)の前に菅谷という謎の男が現れたことから、六年もの間封じられていた彼女の譚は動き出す――!
はじまりはいつもラブオール
フジノシキ
キャラ文芸
ごく平凡な卓球少女だった鈴原柚乃は、ある日カットマンという珍しい守備的な戦術の美しさに魅せられる。
高校で運命的な再会を果たした柚乃は、仲間と共に休部状態だった卓球部を復活させる。
ライバルとの出会いや高校での試合を通じ、柚乃はあの日魅せられた卓球を目指していく。
主人公たちの高校部活動青春ものです。
日常パートは人物たちの掛け合いを中心に、
卓球パートは卓球初心者の方にわかりやすく、経験者の方には戦術などを楽しんでいただけるようにしています。
pixivにも投稿しています。
毒小町、宮中にめぐり逢ふ
鈴木しぐれ
キャラ文芸
🌸完結しました🌸生まれつき体に毒を持つ、藤原氏の娘、菫子(すみこ)。毒に詳しいという理由で、宮中に出仕することとなり、帝の命を狙う毒の特定と、その首謀者を突き止めよ、と命じられる。
生まれつき毒が効かない体質の橘(たちばなの)俊元(としもと)と共に解決に挑む。
しかし、その調査の最中にも毒を巡る事件が次々と起こる。それは菫子自身の秘密にも関係していて、ある真実を知ることに……。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる