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第五幕

ただの感情論じゃない

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先進国と呼ばれる国においては、<少子高齢化>が決して無視できないものになってきてるよね。それに対して、『どうせ人間なんていくらでも生まれてくる』と考えられるような国は、実際には<先進国>と言えるようなところなのかな? 人口の多さや出生率の高さが際立っているような国は、実際には<先進国>だったりする?

『どうせ人間なんていくらでも生まれてくる』と考えられるということは、つまりそういうことじゃないかな。いくら国力があったってそれだけじゃ<先進国>とは呼べないんじゃないかな?

大変な軍事費を使いつつ他国から支援をもらってたような国もあるよね? それって自慢できるようなこと?

『どうせ人間なんていくらでも生まれてくる』と考えて同じ人間の命を軽んじてるような国は、<先進国>とは呼べないと僕は思うんだけどな。

人間が同じ人間の命を蔑ろにするのは、人間として生きる上で重要な<他者というリソース>を奪う行為だ。だから禁忌とされる。ただの感情論じゃないんだよ。

対して、吸血鬼は人間とはまったく別の種族であり、吸血鬼は自らが生きるだけであれば<他者というリソース>はそれほど重要じゃない。ましてや人間がいなくても種としては実は大して困らない。

ただ、僕がアオを愛しているように、そしてエンディミオンがさくらを愛しているように、<愛することができる相手>でもあるんだ。だから、

『必ずしも必要な存在ではないけれど、蔑ろにしようとも思わない』

ってだけなんだよ。

そんな僕達吸血鬼でさえ人間の命を蔑ろにしていいとは考えないのに、人間が同じ人間の命を蔑ろにすることを、とても残念に思う。ましてや、自分達の力では国を維持していくこともままならないような人間達が<誇り>を口にしてテロを行うだなんて、滑稽すぎていたたまれない。

『誇りなんてものに拘る前に、自立できるようになったらどうなの? 自立もできないような人間が口にする誇りに、何の価値があるの?』

と思わずにいられないんだ。

しかも人間自身が、<価値>というものに拘るよね? 価値に拘りながらおよそ価値のなさそうなものに依存する。依存するだけじゃなく、それを根拠に他者の命を蔑ろにする。

あまりにも愚かだとしか思えないんだけどな。

だから僕達は、テロリストの理屈には一切共感しない。

『自分達の国と誇りを取り戻す』

なんてお題目を掲げる前にするべきことがあるとしか思わないんだ。まずは自分の力で国を維持していけるようになることだってね。

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