ショタパパ ミハエルくん

京衛武百十

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第四幕

生存競争を行う敵

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ダンピールである安和アンナにとって人間は、

<別の種>

だ。だからこそ理解できない部分が出てくる。それをアオが補ってくれる。

安和アンナの言うことはもっともだと思う。だってさあ、人間以外の生き物で、年老いた親の世話をする生き物って、いる? 子離れの時に子供を追い出しておいてそれで『体が弱ったから自分を守れ』とか言われて子供が納得する? 子離れした後は、かつては親と子であっても、<生存競争を行う敵>になるわけじゃん。親が年老いて弱ったとなったら、それこそ叩き潰して縄張りとか奪うチャンスじゃん。<自然>ってそういうもんでしょ?

だけど人間は、自分が歳をとったら子供に世話をさせようとする。<育ててやった恩>とかいう虚構の概念をでっち上げて、弱った自分が子供から攻撃されないようにしようとするんだ。これだけでも人間って生き物がいかに自然に反してるかってのが分かるじゃん。

そういう意味じゃ、私は、歳をとってもみんなに守ってもらおうとは思ってないんだ。自分の力で生きていけなくなったら退場してもいいと思ってる。

でもさ、その一方で人間は、<自分にとって大切な相手>ってのを見殺しにはできない生き物でもあるよね。<自分にとって大切な相手>に危害を加えられたら復讐を考えずにいられない生き物でもあるよね。だから守ろうとする。子供にとって親が<守りたい相手>なら、まあ守ってもおかしくはないんじゃないの?

だからさ、『守ってもらいたい』と思うのなら、せめて<守りたいと思ってもらえる存在>でいる努力はしなくちゃいけないって思うんだよ。親が子供を守るのは、自分の勝手でこの世に送り出したことに対するいわば<尻拭い>だから子供がどうあれ自分の力で生きていけるようになるまでは守らなきゃとは思うけど、赤の他人の場合は、それも関係ないからね? 『自分が気に入らないから』なんてくだらない理由で誰かを傷付けようと躍起になってる奴なんて、なんで守ってやらなきゃいけないのさ? 誰かを傷付けようとするってことは、自分が誰かから傷付けられることも覚悟しなきゃおかしいよ。

イジメもそうだよね。『自分が気に入らないから』なんてくだらない理由で誰かをイジメようとするのなら、同じように『自分が気に入らないから』なんてくだらない理由で誰かからイジメられて当然じゃん。

でも、だからこそ、私はみんなに誰かを理不尽に攻撃するようにはなってほしくないんだよ。だってそれは<誰かから理不尽に攻撃されても仕方ない原因>を作るってことだからさ」

食後のコーヒーを口にしながら、アオは安和達にそう説くんだ。

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