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第四幕
優先順位を間違えちゃいけない
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けれど、こうやって紫音のことを僕が気に掛けるのも、あくまで余裕がある間だけ。椿を後回しにしてまで紫音を助けることはない。
椿と紫音のどちらかしか助けられないなら躊躇うことなく椿を選ぶ。何度も言うように、紫音を助けるのは本来は紫音の両親なんだ。椿でも僕でもない。
優先順位を間違えちゃいけない。
それに、優先順位を間違えているのは紫音の両親だ。紫音の両親は共に不貞を働いていて、紫音よりも不貞の相手を優先してる。咎められるべきは紫音の両親の方なんだよ。
それをわきまえない人間を僕は信用しない。
『親だって人間なんだ!』
と言う者もいるけれど、それを言うなら、
『子供だって人間だよ?』
というのを無視するのはおかしい。親が不貞を働いていて子供が喜ぶと思うの? 親の不貞を喜んでくれる、認めてくれる、許してくれる、そんな人間に育つと思うの? そういう、
<親にとって都合のいい人間>
を作れると、本気で思うの? そう思うのなら、それが可能だと思うのなら、どうして、
<わざわざ不貞なんかしなくても済む相手>
を選ばなかったの?
<不貞なんかしようとも思わない、自分にとって最高に都合のいい相手>
を探し出して結婚しなかったの?
それができない人間が、子供を、<親にとって都合のいい人間>に育てることができると本気で思うの?
事実、紫音はすでに<両親にとって都合のいい子供>には育ってない。彼の中には、
<両親に対する仄暗い感情>
が芽生えてて、それが順調に醸成されて行ってるのが、吸血鬼としての超感覚を持つ僕にはしっかりと見えていて、いつか爆発することが分かるよ。
今の状況が続くならね。椿はあくまで、それを緩和してくれているだけだ。完全には止められないし、椿にそれを止める義務はない。だって紫音をこの世に送り出した張本人は椿でもなければ僕やアオでもない。紫音の両親だ。
自分がやった、
<本人の承諾なく子供を勝手にこの世に送り出したという行いの報い>
を受けるのが、親の責務だよ。
それが幸せなものになるか凄惨なものになるかは、親自身が子供に対してやったこと次第だ。他人は関係ない。
僕もアオも、その覚悟があるからこそ、悠里を、安和を、椿をこの世に送り出した。一緒にこの世を楽しむために、<生きる>ということを楽しむために、それができるからこそ、迎えたんだ。
決して、自分達の世間体を整えるためじゃない。世間体を気にするなら、法律上はアオが<未婚の母>になる状態で迎えたりはしないよ。
だけど紫音の両親は、そうじゃなかった。体裁を整えるために結婚し、体裁を整えるために子供を設け、体裁を保つために共に不貞を働きながらも離婚はしない。
その中で紫音の心が磨り潰されていこうとも、彼の両親にとってはどうでもいいんだろうね。
椿と紫音のどちらかしか助けられないなら躊躇うことなく椿を選ぶ。何度も言うように、紫音を助けるのは本来は紫音の両親なんだ。椿でも僕でもない。
優先順位を間違えちゃいけない。
それに、優先順位を間違えているのは紫音の両親だ。紫音の両親は共に不貞を働いていて、紫音よりも不貞の相手を優先してる。咎められるべきは紫音の両親の方なんだよ。
それをわきまえない人間を僕は信用しない。
『親だって人間なんだ!』
と言う者もいるけれど、それを言うなら、
『子供だって人間だよ?』
というのを無視するのはおかしい。親が不貞を働いていて子供が喜ぶと思うの? 親の不貞を喜んでくれる、認めてくれる、許してくれる、そんな人間に育つと思うの? そういう、
<親にとって都合のいい人間>
を作れると、本気で思うの? そう思うのなら、それが可能だと思うのなら、どうして、
<わざわざ不貞なんかしなくても済む相手>
を選ばなかったの?
<不貞なんかしようとも思わない、自分にとって最高に都合のいい相手>
を探し出して結婚しなかったの?
それができない人間が、子供を、<親にとって都合のいい人間>に育てることができると本気で思うの?
事実、紫音はすでに<両親にとって都合のいい子供>には育ってない。彼の中には、
<両親に対する仄暗い感情>
が芽生えてて、それが順調に醸成されて行ってるのが、吸血鬼としての超感覚を持つ僕にはしっかりと見えていて、いつか爆発することが分かるよ。
今の状況が続くならね。椿はあくまで、それを緩和してくれているだけだ。完全には止められないし、椿にそれを止める義務はない。だって紫音をこの世に送り出した張本人は椿でもなければ僕やアオでもない。紫音の両親だ。
自分がやった、
<本人の承諾なく子供を勝手にこの世に送り出したという行いの報い>
を受けるのが、親の責務だよ。
それが幸せなものになるか凄惨なものになるかは、親自身が子供に対してやったこと次第だ。他人は関係ない。
僕もアオも、その覚悟があるからこそ、悠里を、安和を、椿をこの世に送り出した。一緒にこの世を楽しむために、<生きる>ということを楽しむために、それができるからこそ、迎えたんだ。
決して、自分達の世間体を整えるためじゃない。世間体を気にするなら、法律上はアオが<未婚の母>になる状態で迎えたりはしないよ。
だけど紫音の両親は、そうじゃなかった。体裁を整えるために結婚し、体裁を整えるために子供を設け、体裁を保つために共に不貞を働きながらも離婚はしない。
その中で紫音の心が磨り潰されていこうとも、彼の両親にとってはどうでもいいんだろうね。
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