405 / 697
第三幕
本当に、来てよかったよ
しおりを挟む
こうしてドゥオーモ(ミラノ大聖堂)の見学を終えた僕達は、そのまま、
<ヴィットーリオ・エマヌエーレⅡ世のガッレリア>
へと進んだ。これは、超有名ブランドのそれをはじめとしたたくさんの店が並んだアーケードだね。
ここも、ガラス天井そのものの造形もそうだし、アーケードを構成する建物も、緻密な彫刻や細工が施された、
<創造に対する狂おしいまでの情熱>
を感じさせるものだ。<ヴィットーリオ・エマヌエーレⅡ世のガッレリア>そのものが<一個の作品>なんだろうな。
その<作品>の中に、世界的にも有名なブランドの店舗が並んでる。
「うお~っ! これよこれ! 滾るわ、痺れるわ~っ!!」
アーケードに入った途端、安和が興奮する。アクセサリーとかにも興味がある彼女にとっては、まさに<宝の山>なんだろうな。
「さすが本物は違う! この空気感! この存在感! これは現場に来ないとやっぱ分からないよね! そそるぅ~っ!!」
そう声を上げながら、
「こっちこっち! これよ!」
セルゲイを促してアーケード内を行ったり来たり。正直、僕と悠里はまったくついていけなかった。でも、
「でも、昆虫とかを前にした僕とセルゲイの姿も、安和にはこんな風に見えてるんだろうな……」
苦笑いを浮かべながら彼は言う。
確かに、悠里の言うとおりだと僕も感じた。自分の興味のあるものを前にした二人の様子は、本質的にはほとんど同じものだ。だから、自分にとって興味のないものに興奮するその姿を馬鹿にするというのは、違うんだと思う。そういうのは、自身を客観視できていない者の愚行なんじゃないかな。
悠里も安和も、それを分かってくれているから、呆れたような態度も覗かせつつ、面と向かって嘲るようなことはしないんだ。
他人を嘲るような者は、自身も嘲られるからね。
それに、安和自身が言ってたように、
<現場に来ないと分からない空気感や存在感>
もあるし、それに実際に触れることで彼女の創作のプラスになるなら、何よりなんだ。
そして安和は、
「これこれ! ビリっときた!!」
そう言って、店先に展示されていたアクセサリーを、自分のお金で買った。
それは、誰もが知ってるであろう超有名ブランドとは違う、『知る人ぞ知る』という店のものだったけど、彼女にとっては、
『超有名ブランドのだから欲しい』
じゃなくて、彼女の感性に刺さるものが欲しいということだね。
今回のは、日本円にして二万円程度のものでありつつ、
「~♪」
安和はとても満足そうなのだった。
本当に、来てよかったよ。
<ヴィットーリオ・エマヌエーレⅡ世のガッレリア>
へと進んだ。これは、超有名ブランドのそれをはじめとしたたくさんの店が並んだアーケードだね。
ここも、ガラス天井そのものの造形もそうだし、アーケードを構成する建物も、緻密な彫刻や細工が施された、
<創造に対する狂おしいまでの情熱>
を感じさせるものだ。<ヴィットーリオ・エマヌエーレⅡ世のガッレリア>そのものが<一個の作品>なんだろうな。
その<作品>の中に、世界的にも有名なブランドの店舗が並んでる。
「うお~っ! これよこれ! 滾るわ、痺れるわ~っ!!」
アーケードに入った途端、安和が興奮する。アクセサリーとかにも興味がある彼女にとっては、まさに<宝の山>なんだろうな。
「さすが本物は違う! この空気感! この存在感! これは現場に来ないとやっぱ分からないよね! そそるぅ~っ!!」
そう声を上げながら、
「こっちこっち! これよ!」
セルゲイを促してアーケード内を行ったり来たり。正直、僕と悠里はまったくついていけなかった。でも、
「でも、昆虫とかを前にした僕とセルゲイの姿も、安和にはこんな風に見えてるんだろうな……」
苦笑いを浮かべながら彼は言う。
確かに、悠里の言うとおりだと僕も感じた。自分の興味のあるものを前にした二人の様子は、本質的にはほとんど同じものだ。だから、自分にとって興味のないものに興奮するその姿を馬鹿にするというのは、違うんだと思う。そういうのは、自身を客観視できていない者の愚行なんじゃないかな。
悠里も安和も、それを分かってくれているから、呆れたような態度も覗かせつつ、面と向かって嘲るようなことはしないんだ。
他人を嘲るような者は、自身も嘲られるからね。
それに、安和自身が言ってたように、
<現場に来ないと分からない空気感や存在感>
もあるし、それに実際に触れることで彼女の創作のプラスになるなら、何よりなんだ。
そして安和は、
「これこれ! ビリっときた!!」
そう言って、店先に展示されていたアクセサリーを、自分のお金で買った。
それは、誰もが知ってるであろう超有名ブランドとは違う、『知る人ぞ知る』という店のものだったけど、彼女にとっては、
『超有名ブランドのだから欲しい』
じゃなくて、彼女の感性に刺さるものが欲しいということだね。
今回のは、日本円にして二万円程度のものでありつつ、
「~♪」
安和はとても満足そうなのだった。
本当に、来てよかったよ。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
甘灯の思いつき短編集
甘灯
キャラ文芸
作者の思いつきで書き上げている短編集です。 (現在16作品を掲載しております)
※本編は現実世界が舞台になっていることがありますが、あくまで架空のお話です。フィクションとして楽しんでくださると幸いです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

貸本屋七本三八の譚めぐり ~実井寧々子の墓標~
茶柱まちこ
キャラ文芸
時は大昌十年、東端の大国・大陽本帝国(おおひのもとていこく)屈指の商人の町・『棚葉町』。
人の想い、思想、経験、空想を核とした書物・『譚本』だけを扱い続ける異端の貸本屋・七本屋を中心に巻き起こる譚たちの記録――第二弾。
七本屋で働く19歳の青年・菜摘芽唯助(なつめいすけ)は作家でもある店主・七本三八(ななもとみや)の弟子として、日々成長していた。
国をも巻き込んだ大騒動も落ち着き、平穏に過ごしていたある日、
七本屋の看板娘である音音(おとね)の前に菅谷という謎の男が現れたことから、六年もの間封じられていた彼女の譚は動き出す――!
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく

素晴らしい世界に終わりを告げる
桜桃-サクランボ-
キャラ文芸
自分の気持ちを素直に言えず、悩んでいた女子高生、心和愛実は、ある日子供を庇い事故に遭ってしまった。
次に目を覚ましたのは、見覚えのない屋敷。そこには、世話係と名乗る、コウヨウという男性が部屋に入る。
コウセンという世界で、コウヨウに世話されながら愛実は、自分の弱い所と、この世界の実態を見て、悩む。
コウヨウとは別にいる世話係。その人達の苦しみを目の当たりにした愛実は、自分に出来る事なら何でもしたいと思い、決意した。
言葉だけで、終わらせたくない。
言葉が出せないのなら、伝えられないのなら、行動すればいい。
その先に待ち受けていたのは、愛実が待ちに待っていた初恋相手だった。
※カクヨムでも公開中

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
怪盗ヴェールは同級生の美少年探偵の追跡を惑わす
八木愛里
キャラ文芸
運動神経がちょっと良い高校生、秋山葵の裏の顔は、怪盗ヴェールだった。老若男女に化けられる特技を活かして、いとこの長島澪のサポートを受けて高価な絵を盗む。
IQ200の頭脳で探偵を自称する桐生健太は、宿敵の相手。怪盗ヴェールが現れるところに、必ず健太の姿がある。怪盗ヴェールは警察の罠を華麗にかわして、絵を盗む。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる