ショタパパ ミハエルくん

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
264 / 697
第二幕

そんなつもりは毛頭ないんだ

しおりを挟む
アオは言う。

「私はさ、復讐は認めないけど、だからってフィクションで復讐劇を描くことを批判するとか否定するとか、そんなつもりは毛頭ないんだ。

だって、フィクションって元々、現実では有り得ないこと、現実では許されないことを描くために存在してるんだよ? そのフィクションで復讐とかを描くのを禁止するとか、それはフィクションの存在意義そのものを否定する行為だよ。

あと、実際の事件とかの被害者や遺族が『復讐したい!』って考えてしまうことそのものも否定はしないし批判するつもりもない。

なにしろ、私自身が、家族にもしものことがあったら余裕で『復讐してやる!』って考えるのが分かってるもん。そんな風に考えないわけがないもん。

たださ、自分が復讐を実行するとなると、十中八九、まったく関係ない人を巻き込んじゃうのが分かるんだよ。それが分かるから認めちゃいけないって思うんだ。

私の恨みや憎しみはあくまで私自身の問題であって、私と何の関係もない人達にはそれこそ何の関係も責任もないんだよ。それで私の復讐に巻き込んでいいっていう道理なんてないんだ。だから、復讐したいと思ってしまうことはやめられなくても、実行に移すことは認めちゃいけないんだよ。

エンディミオンのためにもね。

彼は今、さくらや子供達のために復讐を思いとどまってくれてる。彼の境遇は、復讐でもしてなきゃやってられないほどのものだって私も感じる。

その彼が復讐を思いとどまってくれてるのに、私が復讐してちゃダメじゃん。それこそ不公平だよ。

復讐を果たせる人と果たせない人がいるのも、これはきっと不公平だと思う。

こっちの事件の遺族は復讐させてもらえるのに、あっちの事件の遺族はそれが許されないとか、許されない方の遺族は納得できないよ。きっと。どんな事情があってもね。

だとしたら、やっぱ、認められない方向で合わせるのが道理ってもんじゃないかな。

だからさ、あらかじめみんなにも言っとく。もし、私が何かの犯罪とかに巻き込まれて死んだとしても、復讐はしないでほしい。『復讐したい!』って思っちゃうのは仕方なくても、実行はしないでほしいんだ。それをしたら、まず間違いなく<加害者>になっちゃうから。

<絶対に誰も巻き込まない復讐>なんて、できっこないんだよ。私も散々、そういうプロットを考えてきたけど、無理だった。

遺族になって、それでまた無関係な人を巻き込んだ<復讐という犯罪の加害者>になるとか、どんな地獄だよ……

私は、みんなが、そんな風にして傷を広げるなんて耐えられないよ……」

「…ママ……」

拳を握り締めて、肩を震わせるアオを、悠里ユーリが、安和アンナが、椿つばきが抱き締めてくれたのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

未開の惑星に不時着したけど帰れそうにないので人外ハーレムを目指してみます(Ver.02)

京衛武百十
ファンタジー
俺の名は錬是(れんぜ)。開拓や開発に適した惑星を探す惑星ハンターだ。 だが、宇宙船の故障である未開の惑星に不時着。宇宙船の頭脳体でもあるメイトギアのエレクシアYM10と共にサバイバル生活をすることになった。 と言っても、メイトギアのエレクシアYM10がいれば身の回りの世話は完璧にしてくれるし食料だってエレクシアが確保してくれるしで、存外、快適な生活をしてる。 しかもこの惑星、どうやらかつて人間がいたらしく、その成れの果てなのか何なのか、やけに人間っぽいクリーチャーが多数生息してたんだ。 地球人以外の知的生命体、しかも人類らしいものがいた惑星となれば歴史に残る大発見なんだが、いかんせん帰る当てもない俺は、そこのクリーチャー達と仲良くなることで残りの人生を楽しむことにしたのだった。     筆者より。 なろうで連載中の「未開の惑星に不時着したけど帰れそうにないので人外ハーレムを目指してみます」に若干の手直しを加えたVer.02として連載します。 なお、連載も長くなりましたが、第五章の「幸せ」までで錬是を主人公とした物語自体はいったん完結しています。それ以降は<錬是視点の別の物語>と捉えていただいても間違いではないでしょう。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

狼神様と生贄の唄巫女 虐げられた盲目の少女は、獣の神に愛される

茶柱まちこ
キャラ文芸
 雪深い農村で育った少女・すずは、赤子のころにかけられた呪いによって盲目となり、姉や村人たちに虐いたげられる日々を送っていた。  ある日、すずは村人たちに騙されて生贄にされ、雪山の神社に閉じ込められてしまう。失意の中、絶命寸前の彼女を救ったのは、狼と人間を掛け合わせたような姿の男──村人たちが崇める守護神・大神だった。  呪いを解く代わりに大神のもとで働くことになったすずは、大神やあやかしたちの優しさに触れ、幸せを知っていく──。  神様と盲目少女が紡ぐ、和風恋愛幻想譚。 (旧題:『大神様のお気に入り』)

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

処理中です...