上 下
183 / 697
第二幕

類は友を呼ぶ

しおりを挟む
『<冠井迅かむらいじん>のような男子』

『<山下羽楼やましたはろう>や<藤木一紅ふじきぴんく>のような女子』

というのはやや極端な例だとしても、アオは言う。

「この世には、<完璧な人間>なんていないよ。だからって、自分の周りに<完璧な人間の完成品>がいないからって、嘆くのはおかしいと思う。

だってさ、そう言って嘆いてる自分がもう<完璧>じゃないじゃん?

私は自分が完璧な人間だなんて一ミリも思ってないよ。

さくらだってそれは同じ。私達は、不完全で駄目な部分があるのを、お互いに補い合ってきただけなんだ。だから今がある。

ミハエルに出逢う以前に、私は、さくらと出逢ってたんだよ。そのおかげで、人間に絶望せずに済んだ。

それまでにも、私を小説の道に導いてくれた作品をこの世に送り出してくれた作者がいてくれたからこそ私がいるんだ。

ただ、その作者さん、作品は素晴らしいんだけど本人の人間としての評価は割とアレでさ。作家本人の人間性と作品の質は必ずしも一致しないんだなあというのも教えてくれたね。

だけど逆に、そのおかげで私もダメな人間でありつつこうやって仕事を続けてられるっていうのもあるんだ。

<完璧な人間>はいない。いないけど、<お互いを高め合っていける相手>っていうのは、実はいるんだよ。

結婚とかそういう狭い話じゃなく、ある種の<パートナー>って言える人間は確かにいるんだ。そういう相手に巡り会えれば、それでもし相手が異性で、お互いの気持ちが噛み合えば、結婚だってしていいと思うんだよ。

まあ、言うほど簡単じゃないのも事実だけどさ。

だけど、『類は友を呼ぶ』って言葉もあるくらい、<他人を貶すんじゃなく自分を高めていこうとしてる人間>の前には同じタイプが現れる可能性が高くなるのも事実だと思うんだよね。

他人を罵って貶して攻撃するような人間の周りにはさ、そういうタイプが集まってくるんだよ」

アオのその言葉には、恵莉花えりか秋生あきおも、そして椿つばきも、思い当たる節があった。

つるむのも似たようなタイプだし、そしてやたらと衝突するのも同じようなタイプだという実感がある。

学校での人間関係を見ているだけでも。

椿にとっての<山下羽楼やましたはろう>や<藤木一紅ふじきぴんく>の例が特に分かりやすいだろうか。

そして、恵莉花や秋生も、それと似たような事例は散々見てきた。

結局、似たような人間同士が強く関わりあうのだと。

しかし、それに対しても、恵莉花えりかは敢えて問うた。

「だけど、椿は、冠井かむらいとかいうのに付きまとわれたりしたんだよね? それについてはどうなの? これは『類は友を呼ぶ』っていうのとは違うよね?」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

甘灯の思いつき短編集

甘灯
キャラ文芸
 作者の思いつきで書き上げている短編集です。 (現在16作品を掲載しております)                              ※本編は現実世界が舞台になっていることがありますが、あくまで架空のお話です。フィクションとして楽しんでくださると幸いです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

はじまりはいつもラブオール

フジノシキ
キャラ文芸
ごく平凡な卓球少女だった鈴原柚乃は、ある日カットマンという珍しい守備的な戦術の美しさに魅せられる。 高校で運命的な再会を果たした柚乃は、仲間と共に休部状態だった卓球部を復活させる。 ライバルとの出会いや高校での試合を通じ、柚乃はあの日魅せられた卓球を目指していく。 主人公たちの高校部活動青春ものです。 日常パートは人物たちの掛け合いを中心に、 卓球パートは卓球初心者の方にわかりやすく、経験者の方には戦術などを楽しんでいただけるようにしています。 pixivにも投稿しています。

宵風通り おもひで食堂

月ヶ瀬 杏
キャラ文芸
瑠璃色の空に辺りが包まれた宵の頃。 風のささやきに振り向いた先の通りに、人知れずそっと、その店はあるという。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

毒小町、宮中にめぐり逢ふ

鈴木しぐれ
キャラ文芸
🌸完結しました🌸生まれつき体に毒を持つ、藤原氏の娘、菫子(すみこ)。毒に詳しいという理由で、宮中に出仕することとなり、帝の命を狙う毒の特定と、その首謀者を突き止めよ、と命じられる。 生まれつき毒が効かない体質の橘(たちばなの)俊元(としもと)と共に解決に挑む。 しかし、その調査の最中にも毒を巡る事件が次々と起こる。それは菫子自身の秘密にも関係していて、ある真実を知ることに……。

下っ端妃は逃げ出したい

都茉莉
キャラ文芸
新皇帝の即位、それは妃狩りの始まりーー 庶民がそれを逃れるすべなど、さっさと結婚してしまう以外なく、出遅れた少女は後宮で下っ端妃として過ごすことになる。 そんな鈍臭い妃の一人たる私は、偶然後宮から逃げ出す手がかりを発見する。その手がかりは府庫にあるらしいと知って、調べること数日。脱走用と思われる地図を発見した。 しかし、気が緩んだのか、年下の少女に見つかってしまう。そして、少女を見張るために共に過ごすことになったのだが、この少女、何か隠し事があるようで……

処理中です...