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第二幕

歳取ってから

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結婚するにしてもしないにしても、とにかく当人が卑屈にならないようにするには、

『それを選択するに足る明確かつゆるぎない根拠』

が必要だと思われる。

それがあれば、多少、他人にとやかく言われたところで堪えないだろう。はっきりとした根拠もなくなんとなくで結婚するかしないかを決めるから、他人からあれこれ言われるだけで揺らいでしまうのかもしれない。

というわけで、この話題についても、蒼井家も月城つきしろ家も、徹底的に話し合う。

子供達にとって、アオもミハエルもさくらも、

<徹底的にこういう話をするに値する大人>

なので、飽きることなく続けられる。

「にしてもさ、『歳取ってから子供の世話になろうとする親とかクソ!』みたいに言うのもいるんだけど、これについてはどう思う?」

恵莉花えりかがそんな風に話を切り出した。

それに対しては、あきらが、

「僕は、さくらがもし、歳を取って体が不自由になったら放っておきたいとは思わないよ」

膝に座った椿つばきの頭を撫でながら穏やかに言う。

それに対して悠里ユーリが、

「ネットとか見てると、『子供に寄生する年寄りとかマジクソ』みたいに言ってるのもいるよね。

けど、僕もあきらと同じで、お母さんが歳を取って体が弱ったりしたら全力でサポートしたいと思うよ。

だって僕を生んでくれた人だよ? それが弱ってるのに力にならないとか有り得ない」

と発言する。

洸と悠里のそれには、恵莉花も秋生あきお椿つばきも、

「うんうん」

と大きく頷いた。

けれどそこに、

「ありがとう。みんながそう言ってくれるのはすごく嬉しい。涙が出そうだよ。

でもさ、世の中には、子供から見てそう思えない親っていうのも現にいるんだ。

私も、本音を言わせてもらえば、自分の両親のことは面倒見たいとか一ミリも思えないっていうのはあるんだよ。

だからさ、『子供に寄生する年寄りとかマジクソ』みたいに言う人は、自分の親をイメージしてるんじゃないかなって気はする」

アオが少し悲しそうな表情で言った。

自分のことをこんなに想ってくれる子供達に比べて、自分は両親のことを完全に見限っている。

『兄貴ばっかり大事だったんだから、兄貴に面倒見てもらえばいいじゃん!』

と思っていた。

事実、アオの両親は兄にばかり手間と金を費やしてきて、アオに対してはおそらくその三分の一も力を注いでない。それでもし、アオに対して、

『自分達の面倒を見ろ』

とでも言ってきたら、これはもう、

『ふざけんな!!』

と言われても仕方ないのかもしれない。

アオは、自分の老後の面倒を見てもらうために子供達を生んだわけじゃない。

『自分のことを自分でできるようになるのが<大人>であり<自立>だというのなら、自分の老後も自分でちゃんとできるのが大人なのではないのか?』

とも思っていた。

でもその一方で、

『さくらがもし私のお母さんだったら、歳取って体が不自由になったりしたら放っておけないよなあ……』

とも思うのだった。

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