上 下
155 / 697
第二幕

四方山話

しおりを挟む
「お~、帰ってきたか~♡」

翌日は日曜日。ミハエル達が帰ってきたと聞いて恵莉花えりか秋生あきおがやってきた。残念ながらあきらは今回、ルート営業の当直なので来られなかったが。

「え~? あっくん来れないの~?」

あきらのことが好きな椿つばきは最初は残念そうにしていたものの、恵莉花と秋生も一緒になってボードゲームを始めると、すぐに上機嫌になって楽しんでいた。

さらには、悠里ユーリ安和アンナが語る海外話には、恵莉花と秋生も興味津々である。

そこに、

「あ、初めまして。厨崎美千穂くりやざきみちほです。トロントで大学に通ってます」

ビデオ通話で美千穂も参加した。

「あ~、懐かしい、それ! 私も日本にいた時やりました♡」

ということで、ゲームにも参加する。

そしてゲームをしながら、

「しっかしさ~、フランスって変質者までオシャレなんだよ? 笑うって」

フランスに立ち寄った時に目撃した<事件>について安和が言うと、

「え~? 何々? どういうこと?」

恵莉花が食いつく。

「実はさ~、日本人の女の子三人連れの観光客にさ、花束抱えた中年男が近付いてったの。で、

『シルブプレ(お願いします)』

とか言ってたから、花束売りつけようとしてんのかと思ったら、どうも違ってたみたいで、花束覗き込んだ女の子らがびっくりして逃げてったんだ。

その中年男、花束の中に自分の<アレ>を紛れ込ましてて、それで女の子に見せて回ってる変質者だったんだよ」

「あはははは! 何それ~っ! マジありえないんですけど~!?」

「でしょ~? 今から思えば、やけに花束を低い位置に抱えてて不自然だな~って分かるけど、さすがにそんなの予測しないって。

だって、ぱっと見はマジで<オシャレなオジサン>って感じだったんだよ? 中年だったけど。私の好みじゃなかったけど。それでも普通にしてたらまあ女の人とも普通に付き合えそうなタイプだったのに、何やってんの?って思ったね」

「ひ~っ! ひ~っ!! おなか痛い……!」

どうやらツボに入ったのか、恵莉花は腹を抱えて笑ってた。

「あはは……フランス人って、こう、独特な感性の人が多いから……」

フランス語を学ぶためにカナダに留学した美千穂はひたすら苦笑いだ。

とは言え、美千穂の場合は笑い話にならない事件に巻き込まれたクチなので、それを思えばまだマシだったけれど。

他にも、イタリアでタクシーに乗ったらそれが酷いポンコツで、走ってる時の振動でドアの内装が外れたと思ったら中から雑草が生えた土が出てきたり、同じくイタリアでセルゲイの<友人>に某有名高級スポーツカーに乗せてもらったのはいいものの、急に雨が降り出してワイパーのスイッチ入れたら、ワイパーが窓じゃなくてボンネットを拭いたりと、実に『イタリアン』な笑い話が出てきたのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

はじまりはいつもラブオール

フジノシキ
キャラ文芸
ごく平凡な卓球少女だった鈴原柚乃は、ある日カットマンという珍しい守備的な戦術の美しさに魅せられる。 高校で運命的な再会を果たした柚乃は、仲間と共に休部状態だった卓球部を復活させる。 ライバルとの出会いや高校での試合を通じ、柚乃はあの日魅せられた卓球を目指していく。 主人公たちの高校部活動青春ものです。 日常パートは人物たちの掛け合いを中心に、 卓球パートは卓球初心者の方にわかりやすく、経験者の方には戦術などを楽しんでいただけるようにしています。 pixivにも投稿しています。

毒小町、宮中にめぐり逢ふ

鈴木しぐれ
キャラ文芸
🌸完結しました🌸生まれつき体に毒を持つ、藤原氏の娘、菫子(すみこ)。毒に詳しいという理由で、宮中に出仕することとなり、帝の命を狙う毒の特定と、その首謀者を突き止めよ、と命じられる。 生まれつき毒が効かない体質の橘(たちばなの)俊元(としもと)と共に解決に挑む。 しかし、その調査の最中にも毒を巡る事件が次々と起こる。それは菫子自身の秘密にも関係していて、ある真実を知ることに……。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

冷たい舌

菱沼あゆ
キャラ文芸
 青龍神社の娘、透子は、生まれ落ちたその瞬間から、『龍神の巫女』と定められた娘。  だが、龍神など信じない母、潤子の陰謀で見合いをする羽目になる。  潤子が、働きもせず、愛車のランボルギーニ カウンタックを乗り回す娘に不安を覚えていたからだ。  その見合いを、透子の幼なじみの龍造寺の双子、和尚と忠尚が妨害しようとするが。  透子には見合いよりも気にかかっていることがあった。  それは、何処までも自分を追いかけてくる、あの紅い月――。

下っ端妃は逃げ出したい

都茉莉
キャラ文芸
新皇帝の即位、それは妃狩りの始まりーー 庶民がそれを逃れるすべなど、さっさと結婚してしまう以外なく、出遅れた少女は後宮で下っ端妃として過ごすことになる。 そんな鈍臭い妃の一人たる私は、偶然後宮から逃げ出す手がかりを発見する。その手がかりは府庫にあるらしいと知って、調べること数日。脱走用と思われる地図を発見した。 しかし、気が緩んだのか、年下の少女に見つかってしまう。そして、少女を見張るために共に過ごすことになったのだが、この少女、何か隠し事があるようで……

あばらやカフェの魔法使い

紫音@キャラ文芸大賞参加中!
キャラ文芸
ある雨の日、幼馴染とケンカをした女子高生・絵馬(えま)は、ひとり泣いていたところを美しい青年に助けられる。暗い森の奥でボロボロのカフェを営んでいるという彼の正体は、実は魔法使いだった。彼の魔法と優しさに助けられ、少しずつ元気を取り戻していく絵馬。しかし、魔法の力を使うには代償が必要で……?ほんのり切ない現代ファンタジー。

処理中です...