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人懐っこい
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まるでフードファイターのようなパフォーマンスを見せた女性のおかげで逆にゆっくりと食事ができたミハエル達は、会計を済ませ店を出た。
しかし、そのすぐ後で、
「あ、あの、すいません…!」
と、日本語で声を掛けられ、立ち止まる。
振り向いた先には、先ほどの店から出てきた、例の日本人らしき女性が少し上気した顔でミハエル達を見ながら歩いてくる姿があった。
「やっぱり、日本語分かるんですね! 日本に住んでらしたんですか…!?」
と問い掛けてくる。
こうなるともう変に誤魔化しても意味がないので、セルゲイが、
「はい。私は生物学者をしていて研究のために世界中をまわることが多いのですが、幼い子を連れて行くには大変なことが多く、そのため、年に半分は日本の友人に子供達を預かってもらってます。
なので子供達はロシア語よりも日本語の方が上手くなってしまいました」
と応えた。
「へえ! そうなんですか!?」
女性は感心したように声を上げ、笑顔を見せた。
ゆるくウェーブしたふわりとした印象の髪と相まって、とても『やわらかい』感じのする女性だった。
そして女性は、
「私、厨崎美千穂っていいます。大学生です。カナダには留学で来てます!」
嬉しそうにそう自己紹介する女性に、セルゲイも穏やかに笑みを返し、
「私はセルゲイ。ロシア出身の生物学者です。こちらは息子のアントニーとヴァレリー、そして娘のアンゲリーナです」
と応える。
アントニーはミハエル。
ヴァレリーは悠里。
アンゲリーナは安和。
今回のように見知らぬ人物からアプローチを受けた場合に使う名前だった。吸血鬼やダンピールはどうしても身元を偽らないといけないことが多いので、いくつも身元は用意してある。
今回名乗ったそれの身分証も用意されている。
厨崎美千穂と名乗った女性は、当然、そんな事情は知らないのでそのまま受け入れた。
その上で、
「よろしくね、アントニーくん、ヴァレリーくん、アンゲリーナちゃん♡」
と、腰を屈めて笑顔で挨拶する。そんな人懐っこい様子が、どこか<犬>も思わせた。
さらに彼女は、顔を上げつつ、
「ところで皆さん、これからまたどこかで食事されるんじゃありませんか?
などと問い掛けてくる。
「…!」
さすがにそれにはセルゲイも少し驚いた様子を見せ、
「なぜそれを?」
と訊き返してしまう。
すると彼女は得意げに笑みを浮かべながら、
「分かりますよ。さっきの店の料理だけじゃ満足した顔になってませんでしたから。
実は私もなんです。もしよかったらご一緒させていただけませんか?」
日本人には割と珍しいくらいに物怖じせずにぐいぐいと来る彼女に、ミハエル達も心の中で苦笑いしていたのだった。
しかし、そのすぐ後で、
「あ、あの、すいません…!」
と、日本語で声を掛けられ、立ち止まる。
振り向いた先には、先ほどの店から出てきた、例の日本人らしき女性が少し上気した顔でミハエル達を見ながら歩いてくる姿があった。
「やっぱり、日本語分かるんですね! 日本に住んでらしたんですか…!?」
と問い掛けてくる。
こうなるともう変に誤魔化しても意味がないので、セルゲイが、
「はい。私は生物学者をしていて研究のために世界中をまわることが多いのですが、幼い子を連れて行くには大変なことが多く、そのため、年に半分は日本の友人に子供達を預かってもらってます。
なので子供達はロシア語よりも日本語の方が上手くなってしまいました」
と応えた。
「へえ! そうなんですか!?」
女性は感心したように声を上げ、笑顔を見せた。
ゆるくウェーブしたふわりとした印象の髪と相まって、とても『やわらかい』感じのする女性だった。
そして女性は、
「私、厨崎美千穂っていいます。大学生です。カナダには留学で来てます!」
嬉しそうにそう自己紹介する女性に、セルゲイも穏やかに笑みを返し、
「私はセルゲイ。ロシア出身の生物学者です。こちらは息子のアントニーとヴァレリー、そして娘のアンゲリーナです」
と応える。
アントニーはミハエル。
ヴァレリーは悠里。
アンゲリーナは安和。
今回のように見知らぬ人物からアプローチを受けた場合に使う名前だった。吸血鬼やダンピールはどうしても身元を偽らないといけないことが多いので、いくつも身元は用意してある。
今回名乗ったそれの身分証も用意されている。
厨崎美千穂と名乗った女性は、当然、そんな事情は知らないのでそのまま受け入れた。
その上で、
「よろしくね、アントニーくん、ヴァレリーくん、アンゲリーナちゃん♡」
と、腰を屈めて笑顔で挨拶する。そんな人懐っこい様子が、どこか<犬>も思わせた。
さらに彼女は、顔を上げつつ、
「ところで皆さん、これからまたどこかで食事されるんじゃありませんか?
などと問い掛けてくる。
「…!」
さすがにそれにはセルゲイも少し驚いた様子を見せ、
「なぜそれを?」
と訊き返してしまう。
すると彼女は得意げに笑みを浮かべながら、
「分かりますよ。さっきの店の料理だけじゃ満足した顔になってませんでしたから。
実は私もなんです。もしよかったらご一緒させていただけませんか?」
日本人には割と珍しいくらいに物怖じせずにぐいぐいと来る彼女に、ミハエル達も心の中で苦笑いしていたのだった。
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