ショタパパ ミハエルくん

京衛武百十

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家族関係

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こうして仕事を終え、さくらが家に帰ると、

「……お疲れ…」

「ただいま」と言いながら玄関を開けたと同時に声を掛けられた。いつもはあきら恵莉花えりか秋生あきおだったのが、今日は違った。

「え…あ、ただいま…!」

思わず再度そう言って、見詰めてしまう。

そこにいたのは、仏頂面をした子供、いや、エンディミオンだった。

そんな彼の姿を見たさくらの顔が、見る見るほころぶ。まるで十代の少女のようにあどけない笑顔だった。

「風呂の用意はできてる……それとも先に飯にするか…?」

決して愛想はよくないが、それでも怒っているとか不機嫌とかそういうのではないのが分かる問い掛けに、

「ありがとう、夕食は済ませてきたから」

と応えつつ、玄関を上がった。

そして、

「ね、一緒にお風呂入らない……?」

と問い掛ける。

するとエンディミオンも、表情は崩さずに、無愛想なままで、

「…分かった……」

とだけ応えた。

そのやり取りを二階の階段近くでこっそりと覗いていた、洸、恵莉花、秋生が、

『よし…!』

声には出さずに小さくガッツポーズをする。

両親の仲がいいのは疑っていないものの、やはりこうしてちゃんとそれが確認できるというのは子供としても嬉しい。

世の中には自分の両親が仲良くしているのを見るのが『気持ち悪い』というようなことを言う者がいるが、恵莉花達にはその気持ちは分からなかった。

両親の仲がいいということに何の問題があるのか?

恵莉花が言う。

「しっかしさ~、親がイチャイチャしてるのをキモいとか思うのって、なんかもったいないと思わない?」

それに洸が応える。

「うん。仲がいいのはすごく素敵なことだよね」

公的な書類上は『三十二歳』となっているものの実年齢は十八歳の洸は、実年齢以上にあどけない印象のある笑顔を浮かべて言った。

そこに、

「僕もそう思う…」

やや控えめな感じで秋生も言った。

蒼井家でも月城家でも、男女の関係を淫猥なものとは見做してこなかった。もちろん節度は必要でも、だからといって後ろ暗いものとは考えない。

互いを大切に想う気持ちは尊い。それに伴ってスキンシップを図る分には何も恥じる必要はない。

だから両親がイチャイチャしていても、何も悪いことじゃない。

それどころか、月城家の子供達は、両親に、もっとイチャイチャしてほしいとさえ思っていた。

「お父さん、奥手過ぎ。もっと堂々とイチャイチャしてくれていいのに」

恵莉花が腕を組みながら少し不満げにこぼす。

「だよね~」

洸がそれに同調し、

「だけどあれが父さんだから……」

と秋生がフォローする。

その姿は、月城家の家族関係そのものなのだった。

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