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(11) 親友だった

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エドワード・ランスロット。輝く金の髪とエメラルドの瞳。精霊の祝福を受けた美姫と唄われた母親の容姿を受け継ぎ、画家が描かせてくれと望む美貌の持ち主で。

女達が彼を追い回して、何処でも騒動だった。1つを思い出すと、パトリシアの記憶から次々に湧いてくる楽しい思い出。


(婚約者を取られたから腹が立って思い出さないようにしてたからな。こんなに気の会う奴は居なかったんだが。)


パトリシアは座っていた椅子から立ち上がった。胸の中がモヤモヤする。憎い相手のはずが、XXされようとしていた。もう少し遅かったら命は無かっただろう。

部屋へ運んで毒抜きして寝かせた王子は、目を覚まさない。その寝姿は、やはり、エドワードの姿が重ならない見えていた。どうしてなのだろう。


(もしかして、こいつも魔法を掛けられたのか?だから、天国へ行けないとか。)


だったら、親友としてまよえる魂を送ってやらねば。と考えていると、王子が目を開けた。立って睨んでいる少女に驚いて声にならない悲鳴を上げる。毒薬で喉をやられていたのだ。


「だ、誰?入るなって、言っただろ!」


掠れた少年の声。ランプの灯りだけの暗い部屋の中。パトリシアは、片腕を上げて天井に灯りを点した。途端に寝台から飛び出して寝台の下へ逃げ込むから驚かされる。


「お願い、お願い、殺さないで!」


泣きながら哀願するのは、この城の王子であった。


「皆が、僕を殺そうとするんだ。兄さま達みたいに、僕も殺されるんだ。嫌だ、嫌だ、死ぬのは!」


骨と皮に痩せこけて、暗殺されるという死の恐怖に怯えている少年。哀れだった。パトリシアは、呟く。


「君は、勇敢な騎士だったじゃないか?」


笑いながら敵陣に突入して行く勇者だったのに。その変わりようは、何だ。別人みたいじゃないか。

パトリシアは、歩みよると手首のブレスレットを外して震える少年の手首に付けた。


「何、何、これ?」
「お守りだ。君を守ってくれるから。」


少年の涙に濡れた瞳が、目の前の少女を見上げた。栗色の髪に栗色の瞳。目立たない容姿の女の子。男の子の服を着ているけど。

綺麗な顔立ちじゃなくて、丸い顔に小柄だから安心できた。お城では、綺麗な侍女や貴族は怖い。 


「ブレスレットの緑の石が黄色になると微少の毒。ピンクは重い毒。赤になると猛毒。毒が強くなると解毒に時間がかかる。休んでれば、毒は薄れるから。」


嘘みたいな話だった。だけど、誰にも守ってもらえない王子は信じてみようと思った。そして、その時から毒を洩られて寝込む事が無くなったのだ。

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