7 / 67
「 1ー5 」身代わりの役目
しおりを挟む
寮の職員の吉田さんが、部屋の前で薫を待っていた。職員に連れられた薫は、ホッとする。
「すみません、戻って来れなくなって。迷子になっちゃったんです。」
部屋から出たのはいいが、知らない場所だから帰れ無かった。
「御前様に助けて頂いて良かったですね。これ、届いていましたのでお持ちしました。お家からみたいですよ。」
台車に乗せられた段ボールの幾つかの箱。差し出し人は、叔父の留目だった。部屋の中で開けると、薫の少ない荷物と新しい衣服に新しい勉強道具。
入れられていた叔父からの手紙。
『お前の父親に貸した借金がある。留目馨に成りきれば減らしてやろう。お前を養った恩もある、忘れるな。』
これは、脅しだ。何かの理由があって、従兄弟の馨の身代わりにさせられたらしい。それは、分かった。
この服や勉強道具は、馨の偽物と分からせない為なんだ。
「わ、新品のスマホあるよ。なになに、週末に連絡しろ?」
あのケチな叔父が金を使う事事態、よっぽどの理由があるのだろう。薫は、窓を開けた。夕暮れの風景の中に見えている西洋のお城。
「御前様は、あそこに住んでるって言ってたな。」
あの時、直ぐにスマホで職員を呼んでくれた綺麗な男の子。寮へ連れていってくれた職員が教えてくれてのだ。
「あの方は、この孫塚井学園(まつかい がくえん)の理事長のご子息です。向こうのお城に住んでらっしゃいます。」
第3王子と言っていたけど、本当にお城に住む王子様だった。その王子様と自分が特別な関係になる事を薫は考えもしなかった。
ドアをノックして名前を呼ばれたので開けた。
「こんにちは、カオルさん。」
分からない。「カオル」と呼ばれると、この人の言うままに動き出してしまう薫の身体。眼鏡をかけた背広の男の人は催眠術師みたいだ。
先に立って歩く彼の後ろを歩く。寮から出て校舎に入ってグルッと回ってエレベーターに乗って。薫は、従うだけだ。
「さあ、カオルさん。代表のお部屋です、ご挨拶して下さい。」
偉い人の部屋へ案内されて、無表情で頭を下げる。すると、椅子に座っていた初老の紳士が薫を眺めた。
「これが、留目の息子か。身体が弱いと聞いたが大丈夫か。宿主(やどぬし)?」
あの背広の男が答える。
「はい、医者の診断では健康が基準値以下でした。改善して行きますが、係が決まるまでですので大丈夫かと。」
「そうだな、決まれば用なしだ。では、やってくれ。」
「かしこまりました。」
宿主は、鞄から小さな箱を取り出した。そして、その箱を開ける。中には、ピンクがかった白い玉が入っていた。
「さあ、これからの仮の器だ。行けっ!」
命令に玉が浮き上がる。それ自体が生きてるように。ふわふわと宙に浮き、薫に近づいた。そして、薫の胸に突進した。
バババ、バシュッーー!
玉は薫の胸板へと服の上から入って行くのだ。その違和感は、言い表しようの無い物であった。
それでも、薫はその瞬間に身体を痙攣させただけで終わる。それで、儀式は終了したのだ。宿主は、呪文を唱えた。
「代表、これで大丈夫です。」
「ご苦労だった。後は、第3王子との儀式だな。宜しく頼む。」
津海小路家の当主であり、孫塚井学園の代表理事。息子の為に留目馨を呼び寄せたのだ。
「すみません、戻って来れなくなって。迷子になっちゃったんです。」
部屋から出たのはいいが、知らない場所だから帰れ無かった。
「御前様に助けて頂いて良かったですね。これ、届いていましたのでお持ちしました。お家からみたいですよ。」
台車に乗せられた段ボールの幾つかの箱。差し出し人は、叔父の留目だった。部屋の中で開けると、薫の少ない荷物と新しい衣服に新しい勉強道具。
入れられていた叔父からの手紙。
『お前の父親に貸した借金がある。留目馨に成りきれば減らしてやろう。お前を養った恩もある、忘れるな。』
これは、脅しだ。何かの理由があって、従兄弟の馨の身代わりにさせられたらしい。それは、分かった。
この服や勉強道具は、馨の偽物と分からせない為なんだ。
「わ、新品のスマホあるよ。なになに、週末に連絡しろ?」
あのケチな叔父が金を使う事事態、よっぽどの理由があるのだろう。薫は、窓を開けた。夕暮れの風景の中に見えている西洋のお城。
「御前様は、あそこに住んでるって言ってたな。」
あの時、直ぐにスマホで職員を呼んでくれた綺麗な男の子。寮へ連れていってくれた職員が教えてくれてのだ。
「あの方は、この孫塚井学園(まつかい がくえん)の理事長のご子息です。向こうのお城に住んでらっしゃいます。」
第3王子と言っていたけど、本当にお城に住む王子様だった。その王子様と自分が特別な関係になる事を薫は考えもしなかった。
ドアをノックして名前を呼ばれたので開けた。
「こんにちは、カオルさん。」
分からない。「カオル」と呼ばれると、この人の言うままに動き出してしまう薫の身体。眼鏡をかけた背広の男の人は催眠術師みたいだ。
先に立って歩く彼の後ろを歩く。寮から出て校舎に入ってグルッと回ってエレベーターに乗って。薫は、従うだけだ。
「さあ、カオルさん。代表のお部屋です、ご挨拶して下さい。」
偉い人の部屋へ案内されて、無表情で頭を下げる。すると、椅子に座っていた初老の紳士が薫を眺めた。
「これが、留目の息子か。身体が弱いと聞いたが大丈夫か。宿主(やどぬし)?」
あの背広の男が答える。
「はい、医者の診断では健康が基準値以下でした。改善して行きますが、係が決まるまでですので大丈夫かと。」
「そうだな、決まれば用なしだ。では、やってくれ。」
「かしこまりました。」
宿主は、鞄から小さな箱を取り出した。そして、その箱を開ける。中には、ピンクがかった白い玉が入っていた。
「さあ、これからの仮の器だ。行けっ!」
命令に玉が浮き上がる。それ自体が生きてるように。ふわふわと宙に浮き、薫に近づいた。そして、薫の胸に突進した。
バババ、バシュッーー!
玉は薫の胸板へと服の上から入って行くのだ。その違和感は、言い表しようの無い物であった。
それでも、薫はその瞬間に身体を痙攣させただけで終わる。それで、儀式は終了したのだ。宿主は、呪文を唱えた。
「代表、これで大丈夫です。」
「ご苦労だった。後は、第3王子との儀式だな。宜しく頼む。」
津海小路家の当主であり、孫塚井学園の代表理事。息子の為に留目馨を呼び寄せたのだ。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
初恋も知らなさそうな恋愛少女漫画家と、恋がしたくてたまらない僕の期間限定な日々
あや
BL
かわいい系男子の高城千早(たかしろちはや)は人気少女漫画家“夕凪(ゆうなぎ)くれあ”の描く恋愛マンガが大好きな専門学校生。好きが高じて、SNSで募集されていた夕凪くれあの期間限定アシスタントに応募し、その座を見事ゲットする。
繊細で人間同士の交流を丁寧に描く作風でありながら、当の夕凪くれあ本人は最小限の人としか関わらない半ひきこもり状態。恋愛漫画しか描かないくせに、恋をしたことがあるのかどうかも怪しい状態。
そんな消極的な漫画家と、積極的に彼氏を作ろうと頑張る千早の期間限定な共同制作の日々。
BLですが、性描写はありません。少女漫画家らしいレベルです笑
この作品は「小説家になろう」さまにも掲載しています。
(アルファポリスさま 21:00更新 「小説家になろう」さま22:00更新です)
いとしの生徒会長さま
もりひろ
BL
大好きな親友と楽しい高校生活を送るため、急きょアメリカから帰国した俺だけど、編入した学園は、とんでもなく変わっていた……!
しかも、生徒会長になれとか言われるし。冗談じゃねえっつの!
【完結】遍く、歪んだ花たちに。
古都まとい
BL
職場の部下 和泉周(いずみしゅう)は、はっきり言って根暗でオタクっぽい。目にかかる長い前髪に、覇気のない視線を隠す黒縁眼鏡。仕事ぶりは可もなく不可もなく。そう、凡人の中の凡人である。
和泉の直属の上司である村谷(むらや)はある日、ひょんなことから繁華街のホストクラブへと連れて行かれてしまう。そこで出会ったNo.1ホスト天音(あまね)には、どこか和泉の面影があって――。
「先輩、僕のこと何も知っちゃいないくせに」
No.1ホスト部下×堅物上司の現代BL。
それはきっと、気の迷い。
葉津緒
BL
王道転入生に親友扱いされている、気弱な平凡脇役くんが主人公。嫌われ後、総狙われ?
主人公→睦実(ムツミ)
王道転入生→珠紀(タマキ)
全寮制王道学園/美形×平凡/コメディ?
もう一度、貴方に出会えたなら。今度こそ、共に生きてもらえませんか。
天海みつき
BL
何気なく母が買ってきた、安物のペットボトルの紅茶。何故か湧き上がる嫌悪感に疑問を持ちつつもグラスに注がれる琥珀色の液体を眺め、安っぽい香りに違和感を覚えて、それでも抑えきれない好奇心に負けて口に含んで人工的な甘みを感じた瞬間。大量に流れ込んできた、人ひとり分の短くも壮絶な人生の記憶に押しつぶされて意識を失うなんて、思いもしなかった――。
自作「貴方の事を心から愛していました。ありがとう。」のIFストーリー、もしも二人が生まれ変わったらという設定。平和になった世界で、戸惑う僕と、それでも僕を求める彼の出会いから手を取り合うまでの穏やかなお話。
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)
君が好き過ぎてレイプした
眠りん
BL
ぼくは大柄で力は強いけれど、かなりの小心者です。好きな人に告白なんて絶対出来ません。
放課後の教室で……ぼくの好きな湊也君が一人、席に座って眠っていました。
これはチャンスです。
目隠しをして、体を押え付ければ小柄な湊也君は抵抗出来ません。
どうせ恋人同士になんてなれません。
この先の長い人生、君の隣にいられないのなら、たった一度少しの時間でいい。君とセックスがしたいのです。
それで君への恋心は忘れます。
でも、翌日湊也君がぼくを呼び出しました。犯人がぼくだとバレてしまったのでしょうか?
不安に思いましたが、そんな事はありませんでした。
「犯人が誰か分からないんだ。ねぇ、柚月。しばらく俺と一緒にいて。俺の事守ってよ」
ぼくはガタイが良いだけで弱い人間です。小心者だし、人を守るなんて出来ません。
その時、湊也君が衝撃発言をしました。
「柚月の事……本当はずっと好きだったから」
なんと告白されたのです。
ぼくと湊也君は両思いだったのです。
このままレイプ事件の事はなかった事にしたいと思います。
※誤字脱字があったらすみません
王道学園のモブ
四季織
BL
王道学園に転生した俺が出会ったのは、寡黙書記の先輩だった。
私立白鳳学園。山の上のこの学園は、政財界、文化界を担う子息達が通う超名門校で、特に、有名なのは生徒会だった。
そう、俺、小坂威(おさかたける)は王道学園BLゲームの世界に転生してしまったんだ。もちろんゲームに登場しない、名前も見た目も平凡なモブとして。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる