上 下
27 / 43

(26) 婚約披露の夜③

しおりを挟む
最近の流行りの高価なドレスを着た美しい貴婦人。何処かの貴族の家の令嬢なのだろうか。でも、名前が出て来ない。知っているはずなのに。

じっと見つめて、やっと誰なのかを知る。それは、よく知っている人物であった。


「ええっ、エドワードさん!?」


メークをした顔がウイングしてくる。


「当たりーー。今夜は、ゴメスのパートナーで舞踏会に来てるんだ。会いたかったよ、アンジェラ。」


ギュッと抱き締められてしまう。甘い香水の匂いに包まれて。でも、胸に大きな何かの感触が。口に出てしまった。


「え、胸?」
「当たり前でしょ、女性だから。ゴメスは巨乳が好みだしね。うふっ。」


そうなんだ、巨乳が好きなんだ。私、無いから(残念!)。それに、エドワードに耳元で囁かれてしまった。


「ゴメスを好きになったら駄目だよ、僕のだから!」


それって、何の冗談ですか。だって、あなたは男。ゴメスも男だし。笑っていいのか分からない。

エドワードは手慣れたもので、手早くアンジェラの化粧をなおしてくれる。そして、待っているゴメスにジャレつくのだ。


「ねー、今夜の僕は綺麗だと思わない?僕と結婚しようよう。」
「嫌だね、他をあたれ。」


本気なんだか分からない会話。でも、気がついてしまった。ドレスを着た女性エドワードは、独占欲を剥き出してゴメスに抱きついている。ゴメスから押しやられてはいるが。

ゴメスがアンジェラを手を貸して立たせると、きつい眼差しになる。まるで、嫉妬しているような。


(え、私に焼きもちなの?)


そんな事になった経験が無いので、どうすればいいのか。チラリとエスコートしてくれるゴメスを見やった。優しい目に心臓がドキッとする。


(そんな目をすると、誤解しちゃいます!)


ステファン王子に引きずり回された後だけに、優しくされると弱い。そういえば、やり直しの前はステファン王子だけを見ていたから他の男の人を知らなかった。

男の人って、嫌な人ばかりでは無いの?何しろ、強引で自己中の人ばかりだから。父親とか婚約者とか。


「もう、帰った方がいい。送るよ。」


ゴメスは見上げるアンジェラの視線に目を反らした。アンジェラがチラリと見たエドワードは凄い目だ。アンジェラに嫉妬?エドワードは憎まれ口を叩く。


「ゴメスってアンジェラに優しいよね。今夜だって、心配して来てるんだから。」
「当たり前だ、14歳の子供だぞ。」


ゴメスに子供扱いされてる事に物足りないのは何故だろう。大人なんですけど、私。身体は14歳だけど、中身は「やり直し前の」17歳ですよ。結婚も出来るんですよ!


(あら?私、何を怒ってるのかしら。ゴメスさんに、求愛されて欲しいとか。とかー!!)


変な事を考えたせいで気力を使いきる。限界です、倒れます。ゴメスが力強い腕に抱き止めてくれた。支えられながら、内心は悲鳴。


(え、え、きゃあああああ!ゴメスさんに抱き締められてるうううう!!)



エドワードが不機嫌にな声が響いた。


「ゴメス、変われ。僕が、運ぶ。アンジェラを任せられない。」

「何を言ってるんだ。それなら、お前に任せたら子供が出来るだろうが!」

「2人の合意なら、いいじゃないか。ゴメスみたいに、フェロモンを撒き散らして女たらしみたいのよりは!」


何か凄い事を言い合っていますよ、この2人。世間知らずの令嬢の前で言わないで。頭が理解能力を越えてダウンしそうですから。

子供を作る方と、女たらしの方。選ぶとしたら、どちらを選ぶ?究極の選択です!

アンジェラは揉め合う2人に運ばれて行くのだった。









気分が悪いと早々に舞踏会から帰宅して自分の部屋で休む。侍女が居なくなるとアンジェラは隠し部屋に飛び込んだ。ムシャクシャして、たまらない。


「こういう時は、ダンジョンよ!」


ダンジョンには、夜のコースもあります。ただ、危険な為に初心者は入れない規則になっている。移動ドアからギルドへ飛んだ。

すると、顔馴染みのカウンターの職員の男が喜んで迎える。


「良かった、頼みたい仕事があるんだ!」

「仕事?害獣駆除なの?」

「モンスターじゃなくて、特別な客だよ。護衛してもらいたいんだ。ご指名だせ。知り合いかい?」

「え、指名なの?」


それは、シークレットな客の依頼であった。なので、依頼者が誰なのかは当日まで明かされない。身分の高い人なのだろう。

護衛が必要という事は訳ありかもしれない。でも、1日の報酬が1万円というのは悪くない。だから、受けてしまった。選んでられないからだ。


(家を出て生活するとしたら、お金は必要よ。稼がなくちゃ!)


ステファン王子と結婚するくらいなら貧乏な生活でも我慢できると思う。あんな人に触れたくもないし、触られたくもない。

やり直しする前は、大好きだったのに。変われば変わるものだ。恋をしてるはずだったのに、あれは恋では無かったのかもしれない。


(恋って、どんなのかしら?)


無視されて他の令嬢とばかり居た婚約者。嫌な思い出しかないけど、他の人なら違うのかな。よく、分からない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

[完結]回復魔法しか使えない私が勇者パーティを追放されたが他の魔法を覚えたら最強魔法使いになりました

mikadozero
ファンタジー
3月19日 HOTランキング4位ありがとうございます。三月二十日HOTランキング2位ありがとうございます。 ーーーーーーーーーーーーー エマは突然勇者パーティから「お前はパーティを抜けろ」と言われて追放されたエマは生きる希望を失う。 そんなところにある老人が助け舟を出す。 そのチャンスをエマは自分のものに変えようと努力をする。 努力をすると、結果がついてくるそう思い毎日を過ごしていた。 エマは一人前の冒険者になろうとしていたのだった。

私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ

Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」 結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。 「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」 とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。 リリーナは結界魔術師2級を所持している。 ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。 ……本当なら……ね。 ※完結まで執筆済み

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません 

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。 まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。 だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥ たまにやりたくなる短編。 ちょっと連載作品 「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!

ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。 なのに突然のパーティークビ宣言!! 確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。 補助魔法師だ。 俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。 足手まといだから今日でパーティーはクビ?? そんな理由認められない!!! 俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな?? 分かってるのか? 俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!! ファンタジー初心者です。 温かい目で見てください(*'▽'*) 一万文字以下の短編の予定です!

悪役令嬢にざまぁされた王子のその後

柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。 その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。 そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。 マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。 人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。

授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草

ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)  10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。  親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。  同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……── ※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました! ※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※ ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

【完結】私の結婚支度金で借金を支払うそうですけど…?

まりぃべる
ファンタジー
私の両親は典型的貴族。見栄っ張り。 うちは伯爵領を賜っているけれど、借金がたまりにたまって…。その日暮らしていけるのが不思議な位。 私、マーガレットは、今年16歳。 この度、結婚の申し込みが舞い込みました。 私の結婚支度金でたまった借金を返すってウキウキしながら言うけれど…。 支度、はしなくてよろしいのでしょうか。 ☆世界観は、小説の中での世界観となっています。現実とは違う所もありますので、よろしくお願いします。

処理中です...