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(18) 病気かしら

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2つ目の呼び出しは、放課後の生徒会室。授業が終わると教室をバタバタと飛び出して行くアンジェラであった。


「こんにちは、エドウィン公爵家のアンジェラでございます。お茶会にお招き頂き参りました。」


令嬢らしく、しとやかに生徒会室へ入る。1番、偉そうな女子生徒。あれだわ。


「はじめまして、ナターシャ・ローガン公爵令嬢様。」

「よく、いらっしゃいました。私が生徒会長ですの、お会いしたかったのよ。慣れない学園生活で何かありましたら、ご相談して下さいね。」

「ありがとうございます。」


内心、呆れる。できるわけが無い。あなたのお父上と私の親父は敵対派閥じゃないの。

それに、あなたはステファン王子の婚約者になれなかった婚約者候補ですもの。私が辺境から戻らなければ婚約者確実だったと聞きました。

生徒会長の味方が揃っている役員の目が憎しみを込めて見ている。それが、本音だった。誰も動かないのでナターシャは指示を出す。


「アンジェラ様に、お茶をお入れして。」


さあ、どうやって抜け出すか。ヒソヒソと話し始めるから話しの内容が筒抜け。聞こえるように話すのも嫌がらせの高度なテクニックです。


「図々しいったら、平気でお茶を飲んでるわ!」
「王子様に大怪我をさせておいて、平気で婚約者になってのよ。ナターシャ様に決まってたのに。泥棒猫!」


はい、泥棒猫です。でも、欲しかったら差し上げますわよ。あんな、クソ王子なんか。早く、婚約破棄したいわ。

一見、平静のよに見えて興奮してくる生徒達。アンジェラ以外は。ナターシャも、悔しくてたまらないのだ。苛立ちをこらえて座っている。居づらさの中でアンジェラは異変に気がついた。


(ん?何、これ?目が変よー。)


だって、目の前の景色が妙なんだもの。生徒会室の生徒達の首から上が違う物になってるんだけど。


(私が正気なら、私以外の全員がガーゴイルよ。モンスターの呪いなのかしら。警戒!)


「ガーゴイル」
モンスターで石像に擬態している。頭が悪魔で背中に羽がある。


首から上が悪魔で学園の制服を着てお茶を飲んでいる。首以外は、普通。魔力は感じないから危険性は無いようだ。モンスターのようでモンスターでは無かった。

こちらを睨み付けているお嬢様たちは、何も知らないらしい。アンジェラは自分の顔に手で触れてみた。大丈夫のようだ。人間のまま。


(この人達、モンスターになってる!?)


生徒会長から取り巻きまでが、1人残らずガーゴイルになっています。首から上だけだが。ドレス姿のガーゴイルがお茶を持って来る。


「どうぞ、お召し上がりください。アンジェラ様。」

「ど、どうも、ありがとうございます。うふっ。」

「えっ、何か?」

「いいえ、頂きます。美味しそうなクッキーだわ。お先に食べてもいいかしら。かしらー、うっふふふのふー。」


生徒達は、戸惑った。受け入れられない空気に直ぐに生徒会室から退散するだろうと予想していたのに。

なのに、アンジェラは生徒会室に居座って誰とも喋らずクッキーをバリバリ食べ紅茶を3杯もオカワリしたのだ。厚顔無恥の局地、恥知らずだ。


「なあに、あれ?」「品の無い人が王子様の婚約者なの?」「見て、クッキーは何枚たべてるのよ」「未来の王妃に相応しくないわ!」


ヒソヒソと囁かれる悪口も心地よい。アンジェラは笑顔で眺めていた。面白くて帰りたくない、楽しい。ドレスのガーゴイルがティーカップを持って陰口たたいてる。勇者仲間に見せてやりたいわ。珍しい光景だもの。

ふと、思い出して右手の指で輪っかを作ってみる。勇者仲間から教わった方法。すこしの魔力があれば使えるアイテム。胸の内で呪文を唱える。


「呪術簡易鑑定、ターゲットは私以外!」


簡単な鑑定なら教えてくれる。右手の指の輪っかの中に文字が浮かんだ。


『ゴニナル病の後遺症』

「あ、分かった。これねー!」


突然、上げたアンジェラの声に全員がビクッとする。そんな事にお構いなくアンジェラは立ち上がった。そして、礼を言うと帰って行くのだ。

スキップしながら校舎から出て行くアンジェラは満面の笑顔。だって、謎が解けたから。


(ゴニナル病って、ガーゴイルになる、だったのねー!)


その病になると、完治しても症状が出る。興奮すると、首から上がガーゴイルになるのだ。ダンジョンに居たら勇者に退治されてしまうだろう。だから、危険な病だ。

ナターシャもゴニナル病に犯された。だから、父親が強硬に娘を王子の婚約者に据える事が出来なかったのだ。他の生徒も病に。それを、皆が内緒にしている。分かったら、結婚話が壊れるから。








静かだった生活に排除しようという意思を示して来た。だが、アンジェラの防御魔法は特殊である。それを敵は理解していなかった。


(この香水、変な匂いだわ。何故かしら?)


アンジェラは届けられた知らない貴族からの香水を手に取って首を傾げる。勇者となってモンスターと戦う時に必要なのは直感と危機管理能力であった。


「この香水。あなたに、差し上げてよ。使わないのなら捨てて。」


悪役令嬢らしく振る舞います。気に入らないと捨てるふり。もらった侍女は大喜び。とても、高価な香水ですから。そして、翌日に知らせが入る。


「申し上げます。アンジェラお嬢様の侍女が病気になって休養する事に!」


何故か、アンジェラの周りに居る者が次々に病に犯されていく。アンジェラが病になるのを恐れた公爵は別荘へ娘を避難させる事にした。何しろ、次期王妃になる手駒である。失いたくない。


(可哀想ー、あの人達は私の代わりに病気になったのね。)


別荘に向かう馬車の中で考えにふけるアンジェラ。誰が仕掛けた罠。さて、次は、どんな攻撃か?絶対に生き残ってやるわ!


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