1 / 43
プロローグ
しおりを挟む
私、アグアニエベという名前の悪魔でございます。悪魔ですが天使の役目を果たしているのです。
「私は日本という国でサラリーマンをしておりました。真面目に務め上げて(ご機嫌とりと陰口をされましたが)定年を待つ歳になって不慮の事故死。そこから要領よく這い上がって悪魔へ転生したという身の上」
そんな話は、聞きたくない?お前は、天使になって何をやってるんだ?
勿論、人助けですよ。仕事は早いので並の天使の数倍は処理能力があります。なので、癒しが欲しいのですよ。
「あったー!」
私は、とある都の裏通りにある下町の商店街に来ております。そして、1人が通る通路しかない小さな書店で本を手に取る。
高価な書物は手に入らない庶民に流通している安価な出来の悪い半紙にガリバン刷りの本。インクはカスれて読みにくいが値段を考えたら文句は言えない。
「あー、私の好きな「悪役令嬢ストーリー」です!」
今、あちこちの国で「乙女ゲーム」というジャンルの小説が人気で直ぐに売り切れる。品切れで増産状態だそうです。
かくいう私の城の書斎には、買い集めた本が山積みでございまして。ふと、考える。
「そうだ、私は悪魔なのです。現実の悪役令嬢の断罪の場面を目にできるではありませんか!」
私とした事が、今になって気がつくとは。悪魔の職権乱用で大好きな場面を観覧できるのに。
あれが、大好きなので。「婚約破棄」の場面が。
そこは、メンドラという小国。その王城では、舞踏会が開かれていた。貴族達が集い溢れている。
「あら、あれは王子様のアンジェラ・エドウィン公爵令嬢婚約者ではないでしょうか。」
「そうでございますね。今夜もお供を連れて賑やかですこと。」
「先程、あの男爵令嬢を見ましたわ。」
「イレーヌ・ボンド男爵令嬢ですか?今夜の舞踏会の招待状は出ていないはずですけど。下級貴族には。」
「それは、王子様が招待されて。」
「まあ、面白くなりそうですこと!」
側で聞いていたアグアニエベは、その会話を聞いてほくそ笑む。ドキドキものです。さあ、これから何が起きる事やら。
燃えるような赤毛の貴族令嬢が、お供の令嬢たちを引き連れて現れる。すると、会場の人々の視線が集中した。皆が同じ事を思っているらしい。
「ほら、次期王妃が男爵令嬢へ向かっていく!」
「これから、修羅場だわ!」
明日は、貴族達の間で話題になるだろう。1つも見逃すまいと目をこらす者ばかり。王子の婚約者は、会場の隅に居る美少女の前に立った。美少女は、ビクッとする。
「イレーヌ・ボンド男爵令嬢さま、ごきげんよう。」
イレーヌは、青ざめて震える。自分のドレスを見回す相手の視線が刺さるようだ。それが、王子からの贈り物と分かったのだろう。
「あなたは、私の忠告を無視なさいましたわね。」
アンジェラは、その扇で金髪の令嬢を打ち据えた。その様に、周りに居る貴族達が離れていく。王宮の舞踏会のホールに残された2人の令嬢。
「公爵令嬢として、私、アンジェラ・エドウィンがご忠告いたしますわ。あなたは、ここに相応しくない。元の平民の暮らしに戻りなさいませな!」
「待て、アンジェラ・エドウィン公爵令嬢。この王宮での彼女に対する侮辱を私が許さないぞ。ここに、宣言する。君との婚約は破棄だ!」
この国の次期王に決定しているステファン・シェフィールドであった。
「私は日本という国でサラリーマンをしておりました。真面目に務め上げて(ご機嫌とりと陰口をされましたが)定年を待つ歳になって不慮の事故死。そこから要領よく這い上がって悪魔へ転生したという身の上」
そんな話は、聞きたくない?お前は、天使になって何をやってるんだ?
勿論、人助けですよ。仕事は早いので並の天使の数倍は処理能力があります。なので、癒しが欲しいのですよ。
「あったー!」
私は、とある都の裏通りにある下町の商店街に来ております。そして、1人が通る通路しかない小さな書店で本を手に取る。
高価な書物は手に入らない庶民に流通している安価な出来の悪い半紙にガリバン刷りの本。インクはカスれて読みにくいが値段を考えたら文句は言えない。
「あー、私の好きな「悪役令嬢ストーリー」です!」
今、あちこちの国で「乙女ゲーム」というジャンルの小説が人気で直ぐに売り切れる。品切れで増産状態だそうです。
かくいう私の城の書斎には、買い集めた本が山積みでございまして。ふと、考える。
「そうだ、私は悪魔なのです。現実の悪役令嬢の断罪の場面を目にできるではありませんか!」
私とした事が、今になって気がつくとは。悪魔の職権乱用で大好きな場面を観覧できるのに。
あれが、大好きなので。「婚約破棄」の場面が。
そこは、メンドラという小国。その王城では、舞踏会が開かれていた。貴族達が集い溢れている。
「あら、あれは王子様のアンジェラ・エドウィン公爵令嬢婚約者ではないでしょうか。」
「そうでございますね。今夜もお供を連れて賑やかですこと。」
「先程、あの男爵令嬢を見ましたわ。」
「イレーヌ・ボンド男爵令嬢ですか?今夜の舞踏会の招待状は出ていないはずですけど。下級貴族には。」
「それは、王子様が招待されて。」
「まあ、面白くなりそうですこと!」
側で聞いていたアグアニエベは、その会話を聞いてほくそ笑む。ドキドキものです。さあ、これから何が起きる事やら。
燃えるような赤毛の貴族令嬢が、お供の令嬢たちを引き連れて現れる。すると、会場の人々の視線が集中した。皆が同じ事を思っているらしい。
「ほら、次期王妃が男爵令嬢へ向かっていく!」
「これから、修羅場だわ!」
明日は、貴族達の間で話題になるだろう。1つも見逃すまいと目をこらす者ばかり。王子の婚約者は、会場の隅に居る美少女の前に立った。美少女は、ビクッとする。
「イレーヌ・ボンド男爵令嬢さま、ごきげんよう。」
イレーヌは、青ざめて震える。自分のドレスを見回す相手の視線が刺さるようだ。それが、王子からの贈り物と分かったのだろう。
「あなたは、私の忠告を無視なさいましたわね。」
アンジェラは、その扇で金髪の令嬢を打ち据えた。その様に、周りに居る貴族達が離れていく。王宮の舞踏会のホールに残された2人の令嬢。
「公爵令嬢として、私、アンジェラ・エドウィンがご忠告いたしますわ。あなたは、ここに相応しくない。元の平民の暮らしに戻りなさいませな!」
「待て、アンジェラ・エドウィン公爵令嬢。この王宮での彼女に対する侮辱を私が許さないぞ。ここに、宣言する。君との婚約は破棄だ!」
この国の次期王に決定しているステファン・シェフィールドであった。
0
お気に入りに追加
156
あなたにおすすめの小説
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろうにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
魔法のせいだからって許せるわけがない
ユウユウ
ファンタジー
私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。
すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる