(完)仕方ないので後は契約結婚する

(７４) 現在の彼ら

セプテムの城では、経済省の大臣の部屋でベネディットが机の上に積まれた山のような書類を片付けていた。お怒りのご様子です。


「どうやったら、こんなにデタラメな書類が出来るんだ？前の大臣は何をやってたのだ！」


職員たちは逃げて近づきもしないのに、ノックもせずに入って来た者がいる。そして、机の上の書類を指差した。


「魔法の力よ。計算を正しい形に訂正して！」


その指示に書類が舞い上がる。バタバタとめくられたかと思うと、机の上に綺麗に重ねられた。

ベネディットが不満そうに文句を言う。


「そんなに簡単に仕事が終わるのなら、魔法でやればいい。私は必要ないでしょう。マルグリート様？」

「魔法にばかり頼ってたら、駄目になるだけだわ。頭に赤で書かれているのが、計算を変えて不足になった金額よ。こうしないと、私との夕食の約束も守れないわね。」

「忘れてない、本当です。」

「では、妹さんの結婚式には行かなかったのは？たった１人の家族なのに。はい、どうぞ。」


マルグリートが手渡す紙をベネディットは眺めて、裏返しにすると伏せる。マルグリートは、笑った。


「まあ、貴方の顔が気に入らないのかしら？」


ベネディットは、マルグリートを睨んだ。知らないうちに、実行されたらしい。自分の意図では無い事を。


「私は、妹の罪を許せません。あなたに、した事を！」

「いいじゃない。私がいいと言ってるのだから。ヘルミーナが連れて行ってくれたのよ。人形の口数が少なくても、事が事だから誰も不信には思わなかったそうよ。」

「マルグリート様、私は。」

「私を哀れに思わないで。ノエミ様が貴方を見て泣いたと聞きましたわ。魔人形でも出席したのだから良しとしましょう。」

「・・・・・・・・」


知らないうちに、身代わり人形が拒否したはずの妹の結婚式に出席していたとは。ふてくされて黙り込む男に歩み寄る令嬢。椅子に座っている彼の背後から首を抱く。

そして、耳に何かを言った。ベネディットは、驚きに目を見開く。


「マルグリート様、本当ですか？私と、私と！」

「はいはい、夕食を食べながら話してあげるから。」


微笑みながら出て行く令嬢の後をベネディットは追いかけながら叫んだ。


「本当に、プロポーズを受けてくれるんですね！」

「毎日、プロポーズするんだもの。仕方がないから契約結婚するわ。フフッー。」


どうやら、マルグリートはベネディットと結婚するようです。でも、契約結婚すると言ったのは冗談ですけど。ベネディットは、契約結婚だろうと結婚できるだけで夢のよう。

だって、天使と夫婦になれるのですから。