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(56) お出かけして変な人と

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マルグリートが来るとゴメス商会に変な人が居た。ヘルミーナにお茶にさそわれて待ち合わせ場所にしたゴメス商会の事務所。


「ぬー?(お主は?)」


肩に流した幾つもの三つ編みは紫色の髪。造り物のように美しい顔立ちの中に硝子玉みたいな瞳。綺麗なのだが、生身の匂いがしない。


「私の第六勘が、何かを教えてるわ。」

「げー(この人、危険)」


眼の付け合い睨み合い。事務所の中の空気が張り詰める。そこへ、ハーパー店長が入って来た。


「マルグリートお嬢様、いらしてたんですか。今日は、何のご用で?」

「ヘルミーナ様と、ここで待ち合わせですの。」

「そうでしたか。では、うちの代表をご紹介します。フランソワ・カミュ氏です。」


どうして、自分で名を名乗らないの。紫色の髪の若者は、睨むのを止めて会釈してくる。


「マー、くっ(マルグリートさん、宜しく)」


ニコッと笑った顔は可愛い。子供みたいな男は嫌いじゃない令嬢。代表は話は終わったというように、予告なしに消え去った。魔法使いなのだ、強腕の。


(以外に、魔力は凄いのね。喧嘩しないで良かったわー。)


見かけは弱そうなのに、予想外だ。だから、代表になっているのか。それなら、教えて欲しかった。

ハーパー店長は、ヘルミーナが到着すると見知らぬ若い娘を引き合わせる。


「ヘルミーナお嬢様、新しい侍女です。この度は、ご迷惑をおかけして申し訳ありません。」


新しい侍女とは?あのコマシャカした侍女は、辞めたのかしら。根性娘みたいだったのに。ゴメス商会を2人で出て歩きながらヘルミーナに尋ねるマルグリート。


「ヘルミーナ様、あの侍女に何か?」

「いえ、婚約者が療養が必要になりましたの。それで、マルコをお貸ししただけですわ。」


マルグリートは、ヘルミーナの表情を見逃さなかった。何か、あったのね。探りだしてあげます。きっと。

ついでに、2人でショッピング。スタンレーの都で人気の店を見て回るのだ。実は、ヘルミーナの市場調査であった。


「このお店は、貴族の令嬢や奥方に人気なんですの。」


そうやって入った店は、貴族御用達の高級ドレスショップ。客が押し掛けて一杯なので予約制となっております。

その店でマルグリートは思いがけない人物と出会うのであった。


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