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(32) 病を広げている誰か

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ヘルミーナが出資者としてお金を出し療養所を建てるのだが、どれだけの患者を預かるかで建物の大きさが決まる。ヘルミーナは考えた計画を打ち明けた。


「悪い呪文に掛けられているのは、人に知られたくない事でしょ。だから、数は少ない方がいいと考えたの。1人か2人の患者にしたいわ。」


こういう考え方をするヘルミーナにハーパー店長は感心する。商会で働くようになって貴族の女性に応対してきた。我が儘や横暴ぶりを目にしてきただけに、彼女の純真さに気持ちが洗われるようだ。


(全く、食えない女性ばかりだ。貴族階級という世界は。使用人を家畜のように扱い平民を蔑み暇つぶしの道具にしか考えていない。私など、奥様や令嬢のゲームの対象にして声をかけてくるくらいだから!)


思えば、ゴメス商会の新入社員として仕事を覚えていた時期にヘルミーナは手助けしてくれた恩人である。

幼さを残した少女は、見習いの男が客に騙されかけていたのを救ってくれた。1目で見抜く鑑定スキルの凄さにも驚かされた。聞いた事も無いレベルなのだ。








まずは、スタンレー国の都にある治療魔法院へ2人で向かう。そこが、呪文に犯された人の治療としては名が知られていたからだ。


「私が、ここの院長です。」


そう自己紹介する老人を見てヘルミーナは院長の魔力を素早く鑑定する。その評判は、間違いないようだ。黒魔力に強く知識も高い。黒魔力に勝てず虜になる治療師もいるのだ。

ヘルミーナは土地のサンプルを取り出し療養所を建てる話をした。院長は協力を約束して事情を教える。


「実は、貴族の方に奇妙な病が増えているので困っています。知られたくないばかりに入院をされません。」


その病は、誰かが呪いをかけているというのだ。治療に急を要する。早く呪者を見つけて助けてやって欲しいと。


「元気だったのに、ある日を境に体力が失せて寝込むようになる。それが、その病の患者の症状です。何とか、治療魔法で押さえてますが。このままでは、命が危ない!」


ハーパー店長は協力を約束した。人助けである。

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