(完)仕方ないので後は契約結婚する

(１６) これでも仮住まい

即、行動。意外にライアンは、やれる人だったらしい。町の偉い人に交渉して、その日のうちに土地を見つけてきてくれたのだ。

そう、土地を。壊れた家が残骸として残っている場所で、住む為には手間がかかりそうだ。ライアンは、詫びる。


「ごめん、町の側となると。ここだけだったんだ。僕が若いから足元を見られた気がするよ。」


悔しそうな彼の様子だが、王女は喜んだ。


「いいえ、充分よ。これで。ありがとう。後は、出来るから。」

「出来るって、何を？」


瓦礫があるだけの廃屋に何が出来るというのか。それとも、言ってみただけなのか。やっぱり、王宮へ行く事になりそうだと諦めた時。始まったのだ。

ヘルミーナは、旅行鞄からズルズルと大きなを取り出した。ライアンは、気になった。


(んー、鞄の容量と引き出した袋の大きさが違うように見えるけど。おかしいなあ。)


そんな事を気にも止めない侍女。気にも止めずに手伝うから普通なのだろう。それを適当な場所へ持って行くと、ヘルミーナが声をかけた。


「じゃあ、ここにするわ。設置！」


ライアンは、目を疑った。次の瞬間には三角テントが立っていたからだ。成人男性が２人は入れるだろう。それを、ヘルミーナは２つ立てる。


「こちらは、ライアン様が使って下さいな。お供の片と。私達は、こちらを使います。」


ライアンの従者もビックリ。言われるままに恐る恐る入った従者が、又、ビックリ。


「王子様、中がー！」


中に何かあるのかと入ったライアンもビックリ。思わず、外へ出て入りなおすくらいに。


「これは、魔法か？」


それ以外、考えられないでしょう。テントの入り口をめくると、玄関だった。小さなテントの中は、家だったのだ。

家の中には、寝室が２つ。バス、トイレ、キッチンが備え付けで広いリビングまである。慣れるまで戸惑いそうだ。


「ヘルミーナ様って魔法使いたったんですね。知りませんでした。」

「違うわよ、魔法使いじゃないわ。魔法道具を持ってるだけだから。私にしか使えないようになってて、防犯セキュリティも付いてるの。」

「こんな物を見たのも聞いた事もありません。何処で手に入れられたのですか？」

「そういうのを扱ってる商会があるのよ。あなたにも、紹介してあげるわ。ゴメス商会ていうの。」


農作物の少ない国にヘルミーナはゴメス商会に食べ物を発注したので、ライアンは親しくなる事になる。

家が建つまでは、テント暮らしをするとヘルミーナは言うのだが。ライアンは、テントでも充分だと思った。この国の暮らしから考えたら、普通に生活できるからだ。