9 / 76
(8) 豊作できます
しおりを挟む
その作りたい作物とは。それは、マンダゴラであった。ヘルミーナは、令嬢とは思えない程に博学だ。マルグリートやイトウ子爵家の人々に説明してくれる。
「魔物としてマンダゴラは意味嫌われてますけど、貴重な薬材であり魔材なんですの。育てるのは難しかったのが、栽培方法を開発して出来るようになりました。だけど、適した土地が無くて。」
マンダゴラを植えられるのは、農薬が1度も使用されて無い土地でないと枯れてしまうらしい。そして、水が枯れて栄養が無くて草木も嫌がる日差しの無い場所。
何と収穫には不適切な土地でないと駄目だという事なのだ。反対に、ここの土地は農作物の収穫はできないと言われたようなものだが。
「夢に見たマンダゴラの栽培が出来るなんて素晴らしいわ。是非、契約して下さい!」
それは、イトウ子爵家の台詞であった。農作物の収穫の少ない土地で苦労して来たのに、マンダゴラとは。想像を越えた作物だ。素人には考えもつかない。
とにかく、家族が1人できた事でもある。収入を増やさなくては。家長の父親は決意して契約を結ぶ。背に腹は変えられない。せっかく結婚した息子の嫁に逃げられては困るのだ。
契約が交わされた子爵家の母屋に令嬢が登場。田舎には不似合いな着飾った姿は浮いて見えた。
「おはようございます、お父様、お母様。あら、ハーパー店長。入らしてたの?」
知ってるから来たのだろう。誰もが分かってた事実。そうで無ければ離れに閉じ籠って出て来ませんから。気を使いながら義父が客を引き合わせる。
「マルグリートさん、私と仕事の契約をしに見えたヘルミーナ・セレント伯爵令嬢です。」
マルグリートは、微笑みながら相手を見つめる。ブロンド美人を素早く値踏みした。交わす視線にバチバチと火花が散るようだ。眼の掛け合い潰し合い。負けてたまるかの見えない果たし合いです。
だが、相手が上だった。余裕あり気に腰を折る。
「お会い出来て嬉しいですわ。都から嫁がれてお寂しいでしょう。でしょうねえ(こんな殺風景な田舎だもの)」
「いいえ(ムッ)、夫も義父も義母も優しいですので寂しくないの(嘘よー)」
「まあ、それは良かったわ(バレバレ)。私で良ければ、お友達にして欲しいですわ(友達申請)」
「ありがとうございます、喜んで(いらない)」
笑顔で会話する下では、冷たい攻防戦が行われているのを見守る新しい家族は気がついてない。彼らは、馴染みそうな嫁に安堵していた。
1人だけ、感づいているのがハーパー店長だ。イケメンには、女の修羅場は付き物である。
「魔物としてマンダゴラは意味嫌われてますけど、貴重な薬材であり魔材なんですの。育てるのは難しかったのが、栽培方法を開発して出来るようになりました。だけど、適した土地が無くて。」
マンダゴラを植えられるのは、農薬が1度も使用されて無い土地でないと枯れてしまうらしい。そして、水が枯れて栄養が無くて草木も嫌がる日差しの無い場所。
何と収穫には不適切な土地でないと駄目だという事なのだ。反対に、ここの土地は農作物の収穫はできないと言われたようなものだが。
「夢に見たマンダゴラの栽培が出来るなんて素晴らしいわ。是非、契約して下さい!」
それは、イトウ子爵家の台詞であった。農作物の収穫の少ない土地で苦労して来たのに、マンダゴラとは。想像を越えた作物だ。素人には考えもつかない。
とにかく、家族が1人できた事でもある。収入を増やさなくては。家長の父親は決意して契約を結ぶ。背に腹は変えられない。せっかく結婚した息子の嫁に逃げられては困るのだ。
契約が交わされた子爵家の母屋に令嬢が登場。田舎には不似合いな着飾った姿は浮いて見えた。
「おはようございます、お父様、お母様。あら、ハーパー店長。入らしてたの?」
知ってるから来たのだろう。誰もが分かってた事実。そうで無ければ離れに閉じ籠って出て来ませんから。気を使いながら義父が客を引き合わせる。
「マルグリートさん、私と仕事の契約をしに見えたヘルミーナ・セレント伯爵令嬢です。」
マルグリートは、微笑みながら相手を見つめる。ブロンド美人を素早く値踏みした。交わす視線にバチバチと火花が散るようだ。眼の掛け合い潰し合い。負けてたまるかの見えない果たし合いです。
だが、相手が上だった。余裕あり気に腰を折る。
「お会い出来て嬉しいですわ。都から嫁がれてお寂しいでしょう。でしょうねえ(こんな殺風景な田舎だもの)」
「いいえ(ムッ)、夫も義父も義母も優しいですので寂しくないの(嘘よー)」
「まあ、それは良かったわ(バレバレ)。私で良ければ、お友達にして欲しいですわ(友達申請)」
「ありがとうございます、喜んで(いらない)」
笑顔で会話する下では、冷たい攻防戦が行われているのを見守る新しい家族は気がついてない。彼らは、馴染みそうな嫁に安堵していた。
1人だけ、感づいているのがハーパー店長だ。イケメンには、女の修羅場は付き物である。
0
お気に入りに追加
232
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
もしかして私ってヒロイン?ざまぁなんてごめんです
もきち
ファンタジー
私は男に肩を抱かれ、真横で婚約破棄を言い渡す瞬間に立ち会っている。
この位置って…もしかして私ってヒロインの位置じゃない?え、やだやだ。だってこの場合のヒロインって最終的にはざまぁされるんでしょうぉぉぉぉぉ
知らない間にヒロインになっていたアリアナ・カビラ
しがない男爵の末娘だったアリアナがなぜ?
叶えられた前世の願い
レクフル
ファンタジー
「私が貴女を愛することはない」初めて会った日にリュシアンにそう告げられたシオン。生まれる前からの婚約者であるリュシアンは、前世で支え合うようにして共に生きた人だった。しかしシオンは悪女と名高く、しかもリュシアンが憎む相手の娘として生まれ変わってしまったのだ。想う人を守る為に強くなったリュシアン。想う人を守る為に自らが代わりとなる事を望んだシオン。前世の願いは叶ったのに、思うようにいかない二人の想いはーーー
レイブン領の面倒姫
庭にハニワ
ファンタジー
兄の学院卒業にかこつけて、初めて王都に行きました。
初対面の人に、いきなり婚約破棄されました。
私はまだ婚約などしていないのですが、ね。
あなた方、いったい何なんですか?
初投稿です。
ヨロシクお願い致します~。
【完結】緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長
五城楼スケ(デコスケ)
ファンタジー
〜花が良く育つので「緑の手」だと思っていたら「癒しの手」だったようです〜
王都の隅っこで両親から受け継いだ花屋「ブルーメ」を経営するアンネリーエ。
彼女のお店で売っている花は、色鮮やかで花持ちが良いと評判だ。
自分で花を育て、売っているアンネリーエの店に、ある日イケメンの騎士が現れる。
アンネリーエの作る花束を気に入ったイケメン騎士は、一週間に一度花束を買いに来るようになって──?
どうやらアンネリーエが育てている花は、普通の花と違うらしい。
イケメン騎士が買っていく花束を切っ掛けに、アンネリーエの隠されていた力が明かされる、異世界お仕事ファンタジーです。
*HOTランキング1位、エールに感想有難うございました!とても励みになっています!
※花の名前にルビで解説入れてみました。読みやすくなっていたら良いのですが。(;´Д`)
話の最後にも花の名前の解説を入れてますが、間違ってる可能性大です。
雰囲気を味わってもらえたら嬉しいです。
※完結しました。全41話。
お読みいただいた皆様に感謝です!(人´∀`).☆.。.:*・゚
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろうにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
うたた寝している間に運命が変わりました。
gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる