93 / 258
95
しおりを挟む関東諸連合
ドンっ ドンっ ドンっ
絶え間なく天雷の音が響き渡り、すぐさま周りで人が吹き飛んでゆく。北条の嫡男は八幡の使いであり未知なる力を操っていると聞いていたがこれはまさしく、天を操る力…こんなもの勝てるわけがない!
「殿!お逃げくだされ!我々は触れてはならぬものに触れてしまったのです!今は引きましょう!!!ここにいてはやられてしまうだけにございまする!」
「あ…ああ!引け!引け!!!!」
関東諸連合の国人衆達はどこもかしこも同じような光景で溢れただただ逃げ惑っているだけであった。だが、そこで待ったをかける人物もいた。
「ひくでない!敵に近づけばむやみやたらにその力を振るうことは出来ぬはずだ!むしろ突っ込むのだ!坂東武者の力をここで見せるのだ!上杉憲政が命じる!進め!進め!」
周りにいた既に襲われていた上杉傘下の武士達が周りの関東諸連合の軍にお目付役としてそばにいたため、引けずにその場に軍を止め、むしろ突っ込んでいくしかない状況に追い込まれていた。これによって、約3万ほどいた兵はまともに機能できずに突撃を敢行する兵に至っては半分以下にもなっていった。
「突撃しろおおおお!死にたくなければ進むのだ!!!!お前達が帰っても罰せられるだけだぞ!生きるために死ね!!!!」
そこら中で農民を指揮する武士達は涙を流し鼻水や小水を漏らしながらその腰にある刀を振り突撃させていく。だが、そんなこと関係ないとばかりに砲撃は続いた。
「くそったれえ!!!!死にたくねえ!死にたくねえよぉぉおおおお!」
「あああああ!すまない!父さんは帰れない!!!」
「嫌だ!嫌だ!!!!こんなところで死にたくない!!!助けてくれぇ!!!」
あちらこちらで農民達が悲鳴を上げながらその命を散らしていく。突撃しようとするも北条軍が用意した竜騎兵によって鉄砲を射掛けられまともに進むこともできずにいた。
~~~
北条氏康
「悲惨だな。」
ポツリと誰が呟いたのだろうか。だが今はそんなことは関係なかった。氏政に率いられた伊豆軍とは別の相模武蔵軍である氏康が率いる将兵達は初めて砲撃の悲惨さ 残酷さを目の当たりにした。もちろん訓練などでどのような音や威力があるかはある程度は理解していたが一斉砲撃と実際に攻められている人々を見てやっと実感が湧いてきたのだ。
「だが、我らはより多くの民を慈しみ関東の秩序を守り、関東の安寧を作り出すためにこの業を背負っていくのだ。恨むならワシを恨むといい。だが、その分お前達は北条の民のために働いてやってくれ。」
「と、殿!そのようなこと仰らないでくだされ!我々は氏康様だからこそついてきているのです!初代様から3代にわたって民のことを考え、新しいことに恐れずに取り組み我々のために力を尽くしてくれている北条家だからこそなのです!だから、そのようなことを言わずに我々にも未来のためのお手伝いをさせていただきたく存じます。」
多目が氏康の言葉に反応して心のうちを語ると、周りの臣下達も同様に頷き、そうですぞ!と声を上げて氏康に寄り添おうとする。
「お主達のような臣がいて我々北条家や民は幸せ者だ…感謝しよう!では、我々の手でこの戦を、悲惨な戦いを終わらせにいこうぞ!皆のもの武器を手に取れ!雄叫びを上げろ!我々がこの関東を守るのだ!」
「「「応!!!」」」
多目が声を張り上げて周りに指示を出していく
「一列目の歩兵隊は1速!二列目の盾隊は待機!三列目の槍隊は2速!弓隊は左右に展開して逃げようとする敵を撃て!騎馬隊は他の隊が展開するまで相手に突撃をして戦線を乱れさせろ!砲撃は止むから気にせずに突っ込むのだ!
左右の歩兵隊は中央に集まりながら層を厚くせよ!圧殺するのだ!」
砲撃をした後の強烈な横からの一撃に合わせ中央から歩兵の厚い層による殲滅。逃さないための左右からの弓隊。軍学校で教えられる戦法の一つ。地均しの陣である。
1速とは徒歩 2速とは早歩き 3速とは小走り 4速とは駆け足である。ちなみに腹足が匍匐前進となる。
11
お気に入りに追加
193
あなたにおすすめの小説
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
いや、婿を選べって言われても。むしろ俺が立候補したいんだが。
SHO
歴史・時代
時は戦国末期。小田原北条氏が豊臣秀吉に敗れ、新たに徳川家康が関八州へ国替えとなった頃のお話。
伊豆国の離れ小島に、弥五郎という一人の身寄りのない少年がおりました。その少年は名刀ばかりを打つ事で有名な刀匠に拾われ、弟子として厳しく、それは厳しく、途轍もなく厳しく育てられました。
そんな少年も齢十五になりまして、師匠より独立するよう言い渡され、島を追い出されてしまいます。
さて、この先の少年の運命やいかに?
剣術、そして恋が融合した痛快エンタメ時代劇、今開幕にございます!
*この作品に出てくる人物は、一部実在した人物やエピソードをモチーフにしていますが、モチーフにしているだけで史実とは異なります。空想時代活劇ですから!
*この作品はノベルアップ+様に掲載中の、「いや、婿を選定しろって言われても。だが断る!」を改題、改稿を経たものです。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
彼の名はドラキュラ~ルーマニア戦記~ ヴラド・ツェペシュに転生したら詰んでます
高見 梁川
ファンタジー
大学の卒業旅行でルーマニアの史跡を訪れた俺はドラキュラの復活を目論むカルト宗教の男に殺されたはずだった……。しかし目覚めて見ればそこはなんと中世動乱の東欧。「ヴラド兄様……」えっ?もしかして俺ドラキュラですか??
オリジナル小説
元おっさんの幼馴染育成計画
みずがめ
恋愛
独身貴族のおっさんが逆行転生してしまった。結婚願望がなかったわけじゃない、むしろ強く思っていた。今度こそ人並みのささやかな夢を叶えるために彼女を作るのだ。
だけど結婚どころか彼女すらできたことのないような日陰ものの自分にそんなことができるのだろうか? 軟派なことをできる自信がない。ならば幼馴染の女の子を作ってそのままゴールインすればいい。という考えのもと始まる元おっさんの幼馴染育成計画。
※この作品は小説家になろうにも掲載しています。
※【挿絵あり】の話にはいただいたイラストを載せています。表紙はチャーコさんが依頼して、まるぶち銀河さんに描いていただきました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
とある辺境伯家の長男 ~剣と魔法の異世界に転生した努力したことがない男の奮闘記 「ちょっ、うちの家族が優秀すぎるんだが」~
海堂金太郎
ファンタジー
現代社会日本にとある男がいた。
その男は優秀ではあったものの向上心がなく、刺激を求めていた。
そんな時、人生最初にして最大の刺激が訪れる。
居眠り暴走トラックという名の刺激が……。
意識を取り戻した男は自分がとある辺境伯の長男アルテュールとして生を受けていることに気が付く。
俗に言う異世界転生である。
何不自由ない生活の中、アルテュールは思った。
「あれ?俺の家族優秀すぎじゃね……?」と……。
―――地球とは異なる世界の超大陸テラに存在する国の一つ、アルトアイゼン王国。
その最前線、ヴァンティエール辺境伯家に生まれたアルテュールは前世にしなかった努力をして異世界を逞しく生きてゆく――
俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる