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第7章 魔王
01 魔の紋章
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・・・68日目・・・
早朝とも言っていい夜明け前、午前4時を回ったところでマピツ山に行った諜報部からの連絡があった。
すぐさま各部署のトップが召集され報告を聞いた。
それによるとミュゼリアは確かに囚われていた。
マピツ山は高度な隠蔽と堅固な結界に包まれ侵入するのが容易ではなかった。だがリフーが得意の水魔法をマピツ山に沁み込ませ結界に魔力を供給している魔石の力を緩め、同時に隠蔽の魔法を弱めることに成功。かつてマピツ山の東側にあった洞穴がそのまま利用されていたようだった。そして諜報部は誰にも気づかれず侵入に成功。
そして一つの部屋でミュゼリアを発見。ドアの細い隙間から見えただけだがミュゼリアの意識はなく何か薄い繭のようなものの中でなんと全裸で眠っていたようだと。近づこうと思ったのだがその部屋の結界に阻まれ断念せざるを得なかった。
そして、先に進んだ超三人組が見たものは……、なんと魔族が壁に開いた穴から白竜城を見ている姿だった。
「魔族なのやっぱり……」
そう呟いたのはシャリーナ隊長だ。
「また魔族だ。あいつら何をしようとしてるんだ」
ベルクリットはそう小さく呟いた。
「超三人組からの報告を続けます」
ハンス副団長が諜報部からの連絡を読み進めた。
「その魔族は全身が真っ黒で耳まで避けた口には鋭い牙が並び、頭に羊のようなツノを生やし真っ赤な目をしている。恐らくは……」
ハンスは読むのをやめると全員を見渡した。誰かが…まさか…と呟いたのを聞くとハンスはその一文を読んだ。
「魔王ゼドン」
部屋に沈黙が拡がった。
「な、なんてことだ。まさかゼドンが……」
緑の騎士団団長のテクアス・ジェルムが眉間を寄せて机を睨む。
……ゼドンだろうが……、悪魔だろうが……、神でも悪魔でもこのさいどっちでもかまわん!ミュゼリアを、ミュゼリアを助けるだけだ!」
ベルクリットはバンッと机を叩くと怒りの目で周囲を睨む。
「ベルクリット団長、落ち着いてくれ。団長が興奮し冷静さを無くしていては必ず敗退する。なあ、落ち着けベルク」
「あ、ああ、すまん。つい……。ふう」
ベルクリットは何度も深呼吸をすると己の興奮を納めた。
さてどう動くかと会議を始めようとした時。
「大変です皆さま!」
勢いよくドアを開け入ってきたのはなんとバスティーアだった。
「どうしたのだバスティーア殿!」
「大変でございます!今マピツ山から……」
いつも冷静な家令がノックもせずあわてて入室してきた。それには全員驚いたがバスティーアの発した次の言葉に全員が一層驚愕した。
「ミュゼリアが、竜化したミュゼリアが頭にゼドンを乗せてマピツ山を飛び立ったと今報告がありました!」
「なんだと!!」
「姫様!大変でございます!お起きになってください!」
乱暴にシオンベールの部屋のドアを開け入ってきたのはライラ副侍女長だった。
「何事ですかライラ!」
就寝中のシオンベールはライラのただ事ではない声で一瞬のうちに覚醒。寝室に入ってきたライラを見た。
「ゼドンが、ゼドンがミュゼリアの頭に乗って白竜城に近づいてきています!」
「へ?ゼドン…が?ミュゼリアの頭に…?どういうことなのですか?わかるように説明なさい!」
「は、はい。申し訳ございません。私も少し狼狽しておりまして、はい。あのですね。あの諜報部がマピツ山でミュゼリアを発見したそうです」
「そうですか。それはよかった」
「でも、そこで魔王ゼドンを確認したそうです」
「ゼドン……!なんですって魔王ゼドンをですか!」
「はい、それでミュゼリアを攫ったのはゼドンでした。そのゼドンが竜化したミュゼリアの頭に乗ってここ白竜城に向かったと連絡がありました」
「な、なんてことでしょう……。ミュゼリアがゼドンを乗せてるだなんて。きっと、いえ、間違いなくゼドンに操られているんだわ。ミュゼリア……」
顔を覆うシオンベール。
「姫様……。今はここから退避してください。おそらく我が軍とゼドンとの戦になるでしょう。もし姫様の身に何かあれば大ごとです。さあ、避難の準備を」
「わかりました。避難しましょう」
城の前の演習場。61日まえ功助とフェンリルが戦ったあの広場に騎士や兵士が散開している。
超三人組から一報があった五分後には青の騎士団、緑の騎士団、魔法師隊、そして白竜城を護る兵士たちが集結した。
「あまりよく見えないな」
功助は目を凝らすが真っ暗な空に何かが飛んでいるくらいしかわからなかった。
「ダーリン、目に魔力を集中してみて。たぶん見えるから」
「えっ、はい」
功助は目に魔力を集中させた。
「あっ!あれは……!」
知らず功助は拳を握っていた。
白竜城の南にある小高いマピツ山。その上空を竜化したミュゼリアが旋回していた。
薄紫の美しかった身体にはまがまがしい黒いまだら模様が浮かび、そしてキラキラしていた薄紫の瞳は燃えるような真っ赤な目になり、何より竜族の命ともいえる胸の人竜球、それが赤黒く変色していた。おまけにその鋭い牙の口から赤い炎が時折吐き出されている。
そしてその頭の五本のツノの間には、黒い身体に羊のようなツノの魔王ゼドンが腕組みをして立っていた。
「ミュゼ…。本当にミュゼなのか……」
信じがたいことだが事実だった。竜化したその頭の横に立つ耳にはあのシオンベールから贈られた紫水晶のピアスがキラリと輝いていたのだから。
「ゼドンの野郎め!ミュゼリアの頭に乗りやがって!許さん!絶対に許さん!」
今にも飛び出しそうなベルクリットを制したのはハンスだった。
「待てベルク!さっきも言っただろうが!興奮するな、我を忘れるな、お前は騎士団の団長だ。今は白竜軍を率いる大将なのだぞ!冷静になれ!」
「うぐぐっ!し、しかし……」
「冷静になるんだベルクリット大将!」
「あ、ああ。すまん。でもなハンス」
「わかってる、わかってるさ。俺も腸が煮えくり返ってる。怒りで我を忘れそうだ」
ハンスはその鋭い眼光をミュゼリアの頭に立つゼドンに向けた。
ハンスのその目に気づいたかどうかはわからないが、ゼドンは山頂の上空でこちらを向いて止まった。
「何をする気だ?」
するとゼドンを乗せたミュゼリアはゆっくりとこちらに近づいてきた。
この広場は1㎞四方ととても広大で騎士団が演習したり、魔法師隊の訓練にも使われる
城竜城を背にしゼドンを待ち受ける騎士団。ゼドンを乗せたミュゼリアはゆっくりと広場に近づくとその正面に着陸した。その距離約100メートル。
「魔王ゼドンに問う!何が目的か!?」
前に出たベルクリットは大音声で前方にいるゼドンに向けて問うた。
だがその問に答えることもなく真っすぐにベルクリットを見るゼドン。
そしてニヤリと口が歪んだかと思えばミュゼリアの口が開き、いきなり強力な真っ赤なブレスが吐き出された。
「風魔法師隊!風壁!!」
シャリーナが叫ぶと同時に軍の後方にいる6人の風属性を持つ魔法師から放たれた魔力が軍の前方に風の壁を作り出した。
ミュゼリアのブレスはその風の壁にぶち当たった。だが6人の力による風の壁はそれをなんなく止めた。
「くそっ!話し合いも何もないか……」
ゼドンを睨むベルクリット。
すると今度はミュゼリアの周囲にいくつもの水の矢が出現した。どんどん増える水矢。
「くそっ!ミュゼリアの得意の水魔法か!どんどん増える……。いかん!防御体制を取れ!!」
ベルクリットが命令する。すると全員が目の前に盾を構えた。
「今度は氷壁!」
シャリーナが8人の水属性を持つ魔法師に命令する。
すると城竜軍の頭上に氷でできたドーム状の壁が出現した。
「キュワァァァ!」
ミュゼリアが一声鳴くと何百もの水矢が一斉に射出された。
矢はまるで豪雨のように白竜軍に降りかかるが、魔法師の氷壁はその威力を発揮し水矢をほとんど受け止めた。しかし一部が氷壁を通過し騎士や兵士に降り注ぐ。だが騎士たちもベルクリットの命令どおり盾を構えておりケガをするものはいなかった。
ミュゼリアが放った矢の一部は軍を飛び越え背後の白竜城の壁にも突き刺さる。いくつかは窓の奥に消えていく矢もあった。
「きゃっ!」「うわっ!」「いったぁい!」
窓から戦況を見ていた人たちが何人かその矢で負傷した。
水矢を受け止めた白竜軍。だが城から悲鳴が聞こえると歯噛みしゼドンを睨む。
「いくらなんでもあの矢の数は尋常じゃない。ミュゼリアだけの魔力であそこまで数多くの矢を射れるとは思えん」
ハンスが一つ呟く。
「では……、もしかしてゼドンの……?」
「おそらくはな。あのミュゼリアの身体中の黒い斑模様がそれを証明していると思う」
ミュゼリアのあの薄紫の美しい鱗にはまるで泥水をぶちまけたような黒い模様が浮かんでいる。それがゼドンから与えられた魔力の素ではないかとベルクリットたちは考えた。
ゼドンを見ると白竜軍がブレスや水矢を防いだことをまるで感心しているように口の端をあげていた。
ゼドンはニヤリと笑むと指をパチンと鳴らす。すると周囲の空間が避けて中から種々の魔物たちが出てきたのだった。
「ちっ!マジかよ!」
それを見て舌を鳴らすベルクリット。
「総員攻撃!」
ベルクリットの命令で騎士や兵士たちが一斉に魔物たち目掛け走る。
「姫様こちらへ」
シオンベールを先導し廊下を進むライラ。一本の廊下を横切ろうとした時…。
「キャッ!」
目の前を水の矢が数本横切り壁に刺さった。あわてて後退るライラ。
「ライラ!大丈夫ですか!?」
後退ったライラの背中をその手で支えるシオンベール。
「ひ、姫様……。申し訳ございません」
少しライラは震えていた。
「戦の流れ矢でしょう」
シオンベールは曲がり角からそっと矢が飛んできた方を見た。そこには数人が窓から飛び込んできた流れ矢に当たり倒れていた。幸いみんな命にかかわるようなケガではなくホッとする。
「あっ!あれは……!」
窓の外を見たシオンベールはその光景に怒りを覚えた。
竜化したミュゼリアの頭の上になんとゼドンが立っていたのだ。ミュゼリアの身体にもまがまがしい黒い斑模様があり真っ赤な目で白竜軍を見ている姿だった。
「ミュゼ……、ミュゼリア……、なんて惨い……」
シオンベールはたまらず窓に走り寄った。
「姫様!危のうございます!姫様!」
その後を追いかけるライラ。
「なんてことでしょう!……ミュゼリア……」
城竜軍に向け狂ったようにブレスを吐くミュゼリアを見てシオンベールは知らず知らず拳を握っていた。
「うわああああ!」「おのれぇぇぇぇ!」「ま、負けるか!」「う、腕がぁぁぁぁ!」
ゴブリンやオークなどの小物からヘルハウンド、そしてワーウルフやキマイラやグリフォン、巨大なサイクロプスやオーガ、なぜか海の魔獣マーマンやシーサーペントまでいた。
そんな魔獣と戦う騎士や兵士たち。魔物を一刀両断する騎士や数人で魔獣を駆逐する兵士、背後から襲われ絶命する者、腕を失うも果敢に剣をふるう者と必死に戦っている。
その時、ミュゼリアがゆっくりと白竜城の方に顔を向けて少しずつ口を開く。
「まずい!ミュゼリアが城にブレスを吐くぞ!」
ハンスが叫んだ。ミュゼリアまでの距離は遠い。
「まかせろ!」
急に走り出すベルクリット。
「おいベルク!」
ベルクリットは身体を白く輝かせると走りながら竜化した。
「何をする気だ!待てぇぇぇ!」
ハンスの絶叫とともにミュゼリアの咆哮が響いた。
「グワアアアア!」
ミュゼリアの口の奥が白く光ったかと思えばその口から青白いブレスが白竜城に向けて吐き出された。
高温度のそのブレスは真っすぐに白竜城に向かう。が、その間に青い竜となったベルクリットが滑り込むように翼を拡げ立ちはだかった。
「グワルルルアアアアア!」
そのブレスを浴びたベルクリットは悲鳴のような咆哮を上げた。
「ベルクゥゥゥゥ!」
青白いブレスに包まれるベルクリットに手を伸ばし目を見開くハンス。
「ちっ!」
ゼドンはミュゼリアのブレスを身体を張って防いだ青い竜を見て眉間を寄せた。
ブレスを吐き口を閉じたミュゼリアは、身体から炎を出して燃えているベルクリットを真っ赤な目で見つめていたが、ゼドンが爪先で合図すると魔物たちと戦っている騎士たちにその視線を移した。
だがその時燃えているベルクリットに向かい走る黒髪の男に気づき視線を向けるゼドン。
「黒髪……?」
いぶかしそうに見つめた。
急いで駆け寄った功助は燃えているベルクリットを水魔法で消火する。
「ベルクリットさん!……よかった、まだ生きてるぞ!」
顔に近づきその命の灯火がまだ消えてないことを知ると両手を大きく広げ白い治癒の光を充てる。
炎を消した黒髪の男は今度治癒魔法を行使している。
「何者だ?」
その男に興味を持つゼドン。
功助の白い治癒の光は巨大な青い竜をすっぽりと覆った。そして数分後。
「ベルクリットさん!」
長い首を持ち上げるとベルクリットの身体が白く光り徐々に小さくなり人族サイズに縮んだ。
「ふう。コースケ魔法師隊名誉隊長。命を助けていただき感謝する。この恩は生涯忘れない」
そういうとベルクリットは左旨に右拳を当てて敬礼をした。
「ベルクリットさん。。気にしないでください。それより身体の調子はどうですか?」
「問題ない。礼は後日改めてさせてもらう。今はミュゼリアとゼドンだ。いくぞコースケ!」
「はい!」
騎士たちのところに走り戻る功助とベルクリット。
「あれを治癒させるとはな。ふふふふ」
ますます興味を持つゼドン。
一連の行動を見ていたこの間も魔物たちと白竜軍の戦いは続いており、幾度もゼドンとミュゼリアは攻撃魔法を受けているがまったく損害はない。
「ほんっとにもう!なんで当たらないのよ!」
何発も何十発も魔法攻撃をするもゼドンにもミュゼリアにもダメージを与えることどころか当たりもしないことに地団太を踏むシャリーナ。
「緑の騎士の矢や槍の物理攻撃も聞かないとは」
その横でラナーシアも歯噛みしている。
「戻りました」
「あっ、お帰りダーリン。お疲れ様。ベルクリット団長、復活のようね」
「ああ。すまない。感謝はまたあとでする。で、戦況に変化は?」
「見ての通りあれだけの攻撃をしてもなーんのダメージも与えられないわ。ほんっと腹立つ。ミュゼちゃんを早く助けたいけど……」
かなり少なくなった魔物や魔獣と戦う兵士たちと、ミュゼリアとゼドンに矢を射る緑の騎士たちを見てまた地団太を踏むシャリーナ。
ミュゼリアはその場を動くことなく白竜軍の攻撃を受けているがゼドンの障壁に守られてまったくダメージがない。
「うっとうしいな」
ゼドンが再び爪先で合図すると今度ミュゼリアはその大きな翼を広げた。
そして大きく一度翼を上下すると周囲の兵士や騎士が、おまけに味方であろう魔物や魔獣たちも吹き飛ばされた。そして数舜後に青の騎士団や魔法師隊のいるところまで暴風が迫りその風圧で何人かが吹き飛ばされた。
「きゃっ!」
小柄なシャリーナがその風に飛ばされそうになったが功助がその身体を抱き留めた。
「あ、ありがとダーリン」
「いえ。でもあのミュゼリアの力……」
「うん。竜化してるとはいえすごい力ね」
「どうすれば……。できればゼドンをミュゼから離したいところだけど」
再び兵士や騎士が攻撃を開始したがミュゼリアはあまり動かず見ず槍や水矢を生み出し兵士たちに撃ち出している。
「シャリーナさん。もしかしてミュゼはフログス子爵と同じなんじゃ?」
「え、うん。たぶん、っていうか十中八九同じだと思う。そう、契約の紋章を無理やり描かれたってことだと思う」
「解呪はできないんですか?」
「うーん。今は難しいわね。なんせミュゼちゃんは今覚醒してるから、つまり眠りについてないから。フログス子爵を解呪できたのは子爵が気を失って意識がなかったからよ。でも今のミュゼちゃんは……」
「それじゃ眠らせればいいってことですか?」
「そう。…………ちょっと待って、今何か思い出しそうなの。なんだったかなあ、えーとえーとえーとーーー……」
暴れるミュゼリアを見つめながら何かを思い出そうとしているシャリーナ。
「あっ!思い出した!」
「えと、思い出したって何を?」
「そうよそうよ、うん。あのね、契約の紋章を刻まれてもとても意志が強ければ己の力で解呪できたわよ確か」
「はい?どういうことですか?」
「あのね、そもそも契約の紋章は術者が肉体的、精神的に相手を自分の意のままに動くようにするためのものなの。でもその相手が強い拒絶をしたり、刻まれたあとでも強い意志があれば跳ねのけられるの。わかる?」
「つまり精神的に強い者になら契約の紋章に打ち勝てると?」
「そうよ。あたし思うんだけど、ミュゼちゃんってとっても意志が強いと思うの。ダーリン専属の侍女としてどう?きっと一本筋が入ってるような行動とかしてない?」
「うーん。そうだな。侍女が転職だと言ってて強い誇りをもっているし、侍女として一生懸命俺を世話してくれるし。何よりベルクリットさんを思う心はとても強いと思う」
「でしょ。だから契約の紋章で縛られている心を解放してあげればミュゼちゃんの契約の紋章は消え去るわよ」
「でも、どうやって?」
「そうねえ……。可能性があるとしたら……。ミュゼちゃんの心に、ゼドンの支配の奥底に追いやられている心に直接話かけて覚醒させられれば……。でも、そんなこと……」
と、それを聞いていたハンス。
「シャリーナ隊長。それできるかもしれん」
「へ・できそうなのハンス副団長?」
目を見開いてハンスを凝視した。
早朝とも言っていい夜明け前、午前4時を回ったところでマピツ山に行った諜報部からの連絡があった。
すぐさま各部署のトップが召集され報告を聞いた。
それによるとミュゼリアは確かに囚われていた。
マピツ山は高度な隠蔽と堅固な結界に包まれ侵入するのが容易ではなかった。だがリフーが得意の水魔法をマピツ山に沁み込ませ結界に魔力を供給している魔石の力を緩め、同時に隠蔽の魔法を弱めることに成功。かつてマピツ山の東側にあった洞穴がそのまま利用されていたようだった。そして諜報部は誰にも気づかれず侵入に成功。
そして一つの部屋でミュゼリアを発見。ドアの細い隙間から見えただけだがミュゼリアの意識はなく何か薄い繭のようなものの中でなんと全裸で眠っていたようだと。近づこうと思ったのだがその部屋の結界に阻まれ断念せざるを得なかった。
そして、先に進んだ超三人組が見たものは……、なんと魔族が壁に開いた穴から白竜城を見ている姿だった。
「魔族なのやっぱり……」
そう呟いたのはシャリーナ隊長だ。
「また魔族だ。あいつら何をしようとしてるんだ」
ベルクリットはそう小さく呟いた。
「超三人組からの報告を続けます」
ハンス副団長が諜報部からの連絡を読み進めた。
「その魔族は全身が真っ黒で耳まで避けた口には鋭い牙が並び、頭に羊のようなツノを生やし真っ赤な目をしている。恐らくは……」
ハンスは読むのをやめると全員を見渡した。誰かが…まさか…と呟いたのを聞くとハンスはその一文を読んだ。
「魔王ゼドン」
部屋に沈黙が拡がった。
「な、なんてことだ。まさかゼドンが……」
緑の騎士団団長のテクアス・ジェルムが眉間を寄せて机を睨む。
……ゼドンだろうが……、悪魔だろうが……、神でも悪魔でもこのさいどっちでもかまわん!ミュゼリアを、ミュゼリアを助けるだけだ!」
ベルクリットはバンッと机を叩くと怒りの目で周囲を睨む。
「ベルクリット団長、落ち着いてくれ。団長が興奮し冷静さを無くしていては必ず敗退する。なあ、落ち着けベルク」
「あ、ああ、すまん。つい……。ふう」
ベルクリットは何度も深呼吸をすると己の興奮を納めた。
さてどう動くかと会議を始めようとした時。
「大変です皆さま!」
勢いよくドアを開け入ってきたのはなんとバスティーアだった。
「どうしたのだバスティーア殿!」
「大変でございます!今マピツ山から……」
いつも冷静な家令がノックもせずあわてて入室してきた。それには全員驚いたがバスティーアの発した次の言葉に全員が一層驚愕した。
「ミュゼリアが、竜化したミュゼリアが頭にゼドンを乗せてマピツ山を飛び立ったと今報告がありました!」
「なんだと!!」
「姫様!大変でございます!お起きになってください!」
乱暴にシオンベールの部屋のドアを開け入ってきたのはライラ副侍女長だった。
「何事ですかライラ!」
就寝中のシオンベールはライラのただ事ではない声で一瞬のうちに覚醒。寝室に入ってきたライラを見た。
「ゼドンが、ゼドンがミュゼリアの頭に乗って白竜城に近づいてきています!」
「へ?ゼドン…が?ミュゼリアの頭に…?どういうことなのですか?わかるように説明なさい!」
「は、はい。申し訳ございません。私も少し狼狽しておりまして、はい。あのですね。あの諜報部がマピツ山でミュゼリアを発見したそうです」
「そうですか。それはよかった」
「でも、そこで魔王ゼドンを確認したそうです」
「ゼドン……!なんですって魔王ゼドンをですか!」
「はい、それでミュゼリアを攫ったのはゼドンでした。そのゼドンが竜化したミュゼリアの頭に乗ってここ白竜城に向かったと連絡がありました」
「な、なんてことでしょう……。ミュゼリアがゼドンを乗せてるだなんて。きっと、いえ、間違いなくゼドンに操られているんだわ。ミュゼリア……」
顔を覆うシオンベール。
「姫様……。今はここから退避してください。おそらく我が軍とゼドンとの戦になるでしょう。もし姫様の身に何かあれば大ごとです。さあ、避難の準備を」
「わかりました。避難しましょう」
城の前の演習場。61日まえ功助とフェンリルが戦ったあの広場に騎士や兵士が散開している。
超三人組から一報があった五分後には青の騎士団、緑の騎士団、魔法師隊、そして白竜城を護る兵士たちが集結した。
「あまりよく見えないな」
功助は目を凝らすが真っ暗な空に何かが飛んでいるくらいしかわからなかった。
「ダーリン、目に魔力を集中してみて。たぶん見えるから」
「えっ、はい」
功助は目に魔力を集中させた。
「あっ!あれは……!」
知らず功助は拳を握っていた。
白竜城の南にある小高いマピツ山。その上空を竜化したミュゼリアが旋回していた。
薄紫の美しかった身体にはまがまがしい黒いまだら模様が浮かび、そしてキラキラしていた薄紫の瞳は燃えるような真っ赤な目になり、何より竜族の命ともいえる胸の人竜球、それが赤黒く変色していた。おまけにその鋭い牙の口から赤い炎が時折吐き出されている。
そしてその頭の五本のツノの間には、黒い身体に羊のようなツノの魔王ゼドンが腕組みをして立っていた。
「ミュゼ…。本当にミュゼなのか……」
信じがたいことだが事実だった。竜化したその頭の横に立つ耳にはあのシオンベールから贈られた紫水晶のピアスがキラリと輝いていたのだから。
「ゼドンの野郎め!ミュゼリアの頭に乗りやがって!許さん!絶対に許さん!」
今にも飛び出しそうなベルクリットを制したのはハンスだった。
「待てベルク!さっきも言っただろうが!興奮するな、我を忘れるな、お前は騎士団の団長だ。今は白竜軍を率いる大将なのだぞ!冷静になれ!」
「うぐぐっ!し、しかし……」
「冷静になるんだベルクリット大将!」
「あ、ああ。すまん。でもなハンス」
「わかってる、わかってるさ。俺も腸が煮えくり返ってる。怒りで我を忘れそうだ」
ハンスはその鋭い眼光をミュゼリアの頭に立つゼドンに向けた。
ハンスのその目に気づいたかどうかはわからないが、ゼドンは山頂の上空でこちらを向いて止まった。
「何をする気だ?」
するとゼドンを乗せたミュゼリアはゆっくりとこちらに近づいてきた。
この広場は1㎞四方ととても広大で騎士団が演習したり、魔法師隊の訓練にも使われる
城竜城を背にしゼドンを待ち受ける騎士団。ゼドンを乗せたミュゼリアはゆっくりと広場に近づくとその正面に着陸した。その距離約100メートル。
「魔王ゼドンに問う!何が目的か!?」
前に出たベルクリットは大音声で前方にいるゼドンに向けて問うた。
だがその問に答えることもなく真っすぐにベルクリットを見るゼドン。
そしてニヤリと口が歪んだかと思えばミュゼリアの口が開き、いきなり強力な真っ赤なブレスが吐き出された。
「風魔法師隊!風壁!!」
シャリーナが叫ぶと同時に軍の後方にいる6人の風属性を持つ魔法師から放たれた魔力が軍の前方に風の壁を作り出した。
ミュゼリアのブレスはその風の壁にぶち当たった。だが6人の力による風の壁はそれをなんなく止めた。
「くそっ!話し合いも何もないか……」
ゼドンを睨むベルクリット。
すると今度はミュゼリアの周囲にいくつもの水の矢が出現した。どんどん増える水矢。
「くそっ!ミュゼリアの得意の水魔法か!どんどん増える……。いかん!防御体制を取れ!!」
ベルクリットが命令する。すると全員が目の前に盾を構えた。
「今度は氷壁!」
シャリーナが8人の水属性を持つ魔法師に命令する。
すると城竜軍の頭上に氷でできたドーム状の壁が出現した。
「キュワァァァ!」
ミュゼリアが一声鳴くと何百もの水矢が一斉に射出された。
矢はまるで豪雨のように白竜軍に降りかかるが、魔法師の氷壁はその威力を発揮し水矢をほとんど受け止めた。しかし一部が氷壁を通過し騎士や兵士に降り注ぐ。だが騎士たちもベルクリットの命令どおり盾を構えておりケガをするものはいなかった。
ミュゼリアが放った矢の一部は軍を飛び越え背後の白竜城の壁にも突き刺さる。いくつかは窓の奥に消えていく矢もあった。
「きゃっ!」「うわっ!」「いったぁい!」
窓から戦況を見ていた人たちが何人かその矢で負傷した。
水矢を受け止めた白竜軍。だが城から悲鳴が聞こえると歯噛みしゼドンを睨む。
「いくらなんでもあの矢の数は尋常じゃない。ミュゼリアだけの魔力であそこまで数多くの矢を射れるとは思えん」
ハンスが一つ呟く。
「では……、もしかしてゼドンの……?」
「おそらくはな。あのミュゼリアの身体中の黒い斑模様がそれを証明していると思う」
ミュゼリアのあの薄紫の美しい鱗にはまるで泥水をぶちまけたような黒い模様が浮かんでいる。それがゼドンから与えられた魔力の素ではないかとベルクリットたちは考えた。
ゼドンを見ると白竜軍がブレスや水矢を防いだことをまるで感心しているように口の端をあげていた。
ゼドンはニヤリと笑むと指をパチンと鳴らす。すると周囲の空間が避けて中から種々の魔物たちが出てきたのだった。
「ちっ!マジかよ!」
それを見て舌を鳴らすベルクリット。
「総員攻撃!」
ベルクリットの命令で騎士や兵士たちが一斉に魔物たち目掛け走る。
「姫様こちらへ」
シオンベールを先導し廊下を進むライラ。一本の廊下を横切ろうとした時…。
「キャッ!」
目の前を水の矢が数本横切り壁に刺さった。あわてて後退るライラ。
「ライラ!大丈夫ですか!?」
後退ったライラの背中をその手で支えるシオンベール。
「ひ、姫様……。申し訳ございません」
少しライラは震えていた。
「戦の流れ矢でしょう」
シオンベールは曲がり角からそっと矢が飛んできた方を見た。そこには数人が窓から飛び込んできた流れ矢に当たり倒れていた。幸いみんな命にかかわるようなケガではなくホッとする。
「あっ!あれは……!」
窓の外を見たシオンベールはその光景に怒りを覚えた。
竜化したミュゼリアの頭の上になんとゼドンが立っていたのだ。ミュゼリアの身体にもまがまがしい黒い斑模様があり真っ赤な目で白竜軍を見ている姿だった。
「ミュゼ……、ミュゼリア……、なんて惨い……」
シオンベールはたまらず窓に走り寄った。
「姫様!危のうございます!姫様!」
その後を追いかけるライラ。
「なんてことでしょう!……ミュゼリア……」
城竜軍に向け狂ったようにブレスを吐くミュゼリアを見てシオンベールは知らず知らず拳を握っていた。
「うわああああ!」「おのれぇぇぇぇ!」「ま、負けるか!」「う、腕がぁぁぁぁ!」
ゴブリンやオークなどの小物からヘルハウンド、そしてワーウルフやキマイラやグリフォン、巨大なサイクロプスやオーガ、なぜか海の魔獣マーマンやシーサーペントまでいた。
そんな魔獣と戦う騎士や兵士たち。魔物を一刀両断する騎士や数人で魔獣を駆逐する兵士、背後から襲われ絶命する者、腕を失うも果敢に剣をふるう者と必死に戦っている。
その時、ミュゼリアがゆっくりと白竜城の方に顔を向けて少しずつ口を開く。
「まずい!ミュゼリアが城にブレスを吐くぞ!」
ハンスが叫んだ。ミュゼリアまでの距離は遠い。
「まかせろ!」
急に走り出すベルクリット。
「おいベルク!」
ベルクリットは身体を白く輝かせると走りながら竜化した。
「何をする気だ!待てぇぇぇ!」
ハンスの絶叫とともにミュゼリアの咆哮が響いた。
「グワアアアア!」
ミュゼリアの口の奥が白く光ったかと思えばその口から青白いブレスが白竜城に向けて吐き出された。
高温度のそのブレスは真っすぐに白竜城に向かう。が、その間に青い竜となったベルクリットが滑り込むように翼を拡げ立ちはだかった。
「グワルルルアアアアア!」
そのブレスを浴びたベルクリットは悲鳴のような咆哮を上げた。
「ベルクゥゥゥゥ!」
青白いブレスに包まれるベルクリットに手を伸ばし目を見開くハンス。
「ちっ!」
ゼドンはミュゼリアのブレスを身体を張って防いだ青い竜を見て眉間を寄せた。
ブレスを吐き口を閉じたミュゼリアは、身体から炎を出して燃えているベルクリットを真っ赤な目で見つめていたが、ゼドンが爪先で合図すると魔物たちと戦っている騎士たちにその視線を移した。
だがその時燃えているベルクリットに向かい走る黒髪の男に気づき視線を向けるゼドン。
「黒髪……?」
いぶかしそうに見つめた。
急いで駆け寄った功助は燃えているベルクリットを水魔法で消火する。
「ベルクリットさん!……よかった、まだ生きてるぞ!」
顔に近づきその命の灯火がまだ消えてないことを知ると両手を大きく広げ白い治癒の光を充てる。
炎を消した黒髪の男は今度治癒魔法を行使している。
「何者だ?」
その男に興味を持つゼドン。
功助の白い治癒の光は巨大な青い竜をすっぽりと覆った。そして数分後。
「ベルクリットさん!」
長い首を持ち上げるとベルクリットの身体が白く光り徐々に小さくなり人族サイズに縮んだ。
「ふう。コースケ魔法師隊名誉隊長。命を助けていただき感謝する。この恩は生涯忘れない」
そういうとベルクリットは左旨に右拳を当てて敬礼をした。
「ベルクリットさん。。気にしないでください。それより身体の調子はどうですか?」
「問題ない。礼は後日改めてさせてもらう。今はミュゼリアとゼドンだ。いくぞコースケ!」
「はい!」
騎士たちのところに走り戻る功助とベルクリット。
「あれを治癒させるとはな。ふふふふ」
ますます興味を持つゼドン。
一連の行動を見ていたこの間も魔物たちと白竜軍の戦いは続いており、幾度もゼドンとミュゼリアは攻撃魔法を受けているがまったく損害はない。
「ほんっとにもう!なんで当たらないのよ!」
何発も何十発も魔法攻撃をするもゼドンにもミュゼリアにもダメージを与えることどころか当たりもしないことに地団太を踏むシャリーナ。
「緑の騎士の矢や槍の物理攻撃も聞かないとは」
その横でラナーシアも歯噛みしている。
「戻りました」
「あっ、お帰りダーリン。お疲れ様。ベルクリット団長、復活のようね」
「ああ。すまない。感謝はまたあとでする。で、戦況に変化は?」
「見ての通りあれだけの攻撃をしてもなーんのダメージも与えられないわ。ほんっと腹立つ。ミュゼちゃんを早く助けたいけど……」
かなり少なくなった魔物や魔獣と戦う兵士たちと、ミュゼリアとゼドンに矢を射る緑の騎士たちを見てまた地団太を踏むシャリーナ。
ミュゼリアはその場を動くことなく白竜軍の攻撃を受けているがゼドンの障壁に守られてまったくダメージがない。
「うっとうしいな」
ゼドンが再び爪先で合図すると今度ミュゼリアはその大きな翼を広げた。
そして大きく一度翼を上下すると周囲の兵士や騎士が、おまけに味方であろう魔物や魔獣たちも吹き飛ばされた。そして数舜後に青の騎士団や魔法師隊のいるところまで暴風が迫りその風圧で何人かが吹き飛ばされた。
「きゃっ!」
小柄なシャリーナがその風に飛ばされそうになったが功助がその身体を抱き留めた。
「あ、ありがとダーリン」
「いえ。でもあのミュゼリアの力……」
「うん。竜化してるとはいえすごい力ね」
「どうすれば……。できればゼドンをミュゼから離したいところだけど」
再び兵士や騎士が攻撃を開始したがミュゼリアはあまり動かず見ず槍や水矢を生み出し兵士たちに撃ち出している。
「シャリーナさん。もしかしてミュゼはフログス子爵と同じなんじゃ?」
「え、うん。たぶん、っていうか十中八九同じだと思う。そう、契約の紋章を無理やり描かれたってことだと思う」
「解呪はできないんですか?」
「うーん。今は難しいわね。なんせミュゼちゃんは今覚醒してるから、つまり眠りについてないから。フログス子爵を解呪できたのは子爵が気を失って意識がなかったからよ。でも今のミュゼちゃんは……」
「それじゃ眠らせればいいってことですか?」
「そう。…………ちょっと待って、今何か思い出しそうなの。なんだったかなあ、えーとえーとえーとーーー……」
暴れるミュゼリアを見つめながら何かを思い出そうとしているシャリーナ。
「あっ!思い出した!」
「えと、思い出したって何を?」
「そうよそうよ、うん。あのね、契約の紋章を刻まれてもとても意志が強ければ己の力で解呪できたわよ確か」
「はい?どういうことですか?」
「あのね、そもそも契約の紋章は術者が肉体的、精神的に相手を自分の意のままに動くようにするためのものなの。でもその相手が強い拒絶をしたり、刻まれたあとでも強い意志があれば跳ねのけられるの。わかる?」
「つまり精神的に強い者になら契約の紋章に打ち勝てると?」
「そうよ。あたし思うんだけど、ミュゼちゃんってとっても意志が強いと思うの。ダーリン専属の侍女としてどう?きっと一本筋が入ってるような行動とかしてない?」
「うーん。そうだな。侍女が転職だと言ってて強い誇りをもっているし、侍女として一生懸命俺を世話してくれるし。何よりベルクリットさんを思う心はとても強いと思う」
「でしょ。だから契約の紋章で縛られている心を解放してあげればミュゼちゃんの契約の紋章は消え去るわよ」
「でも、どうやって?」
「そうねえ……。可能性があるとしたら……。ミュゼちゃんの心に、ゼドンの支配の奥底に追いやられている心に直接話かけて覚醒させられれば……。でも、そんなこと……」
と、それを聞いていたハンス。
「シャリーナ隊長。それできるかもしれん」
「へ・できそうなのハンス副団長?」
目を見開いてハンスを凝視した。
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