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願いが叶う水晶玉を操る三毛猫の剛

第1話

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学(まなぶ)の死から10年の月日が流れた。 

今日も森林で剛(つよし)は人間の姿で青空を見つめていた。 

「今日も良い1日でありますように」

青空に向かって口にしたその時、剛は近づいてくる気配を感じた。 

「この気配は白(はく)」

そう言って剛は森林に張っている結界を解いた。 

背を向けたまま剛が魔法の杖を持ったまま立っていると白が声をかけてきた。 

「お久しぶりです」

「元気だったか」

そう言って振り返った剛は白の隣に立っている男性の姿に驚いた。 

「学…」

「白(はく)さん、この人が言ってた人ですか?」 

白に向かって男性が問いかけると白が口を開いた。 

「そうです、剛さんに悩みを言えば解決してくれます」

「白…」

「俺は帰ります、剛さん、あとお願いします」

そう言って剛に頭をさげると白はその場から離れていった。 

2人きりになった剛は緊張していた。 

「……」

「話しても良いですか?」

「え、あ、はい」

「宮野大介といいます、ホストクラブを経営してます」

「それで悩みは?」

「2人のホストと俺が接客している女性客に告白されて困っています」

「……」

「聞いてますか?」

「…そっくりだ…」

「あの?」

「学…」

そう言って剛は魔法の杖を手から離し大介を抱きしめた。 

「会いたかった」

「……」

ギュっと抱きしめてくる剛に大介は無言で剛を抱きしめた。 

それから暫くして冷静になった剛は「すまない」と言って大介を離れさせた。 

「そんなにそっくりですか?」

「学が生き返ったのかと思ったよ」

「学さん、亡くなってるんですか?」 

「いろいろあって自ら命を奪ったんだ」

「俺が学さんにそっくりじゃなかったら思い出すこともなかったのにすみません、俺、帰ります」

「……」

「自分で何とかします」

「……」

頭をさげ歩いていく大介の姿を見つめながら剛は行かせたくないと思い追いかけ手首を掴み動きを止めた。 

驚いた顔で大介が見つめると剛が口を開いた。 

「願いを叶えてもらいたくて来たんだろ願いは何だい」

「2人のホストと女性客が俺に好意を抱かないようにしてほしいんです」

「了解しました」

大介の手首を掴んでいる手を離し魔法の杖に近づくと魔法の杖を掴み大介の願いを叶えた。 

「完了しました」

「願い叶ったんですか?」

「はい」

優しく微笑みながら剛が頷くと大介は近づき「ありがとうございました」と言って微笑むと剛に唇を奪われた。 

その後、剛は唇を離し口を開いた。 

「大介さんに会えて良かった、お元気で」

「……」

剛に向かって頭をさげると大介は剛に見送られながらその場から離れていった。 

その後、剛は再び森林全体に結界を張った。 

「学にそっくりな男性に会うとは思わなかったよ」

口にしながら空を見つめると剛の身体から水晶玉が現れた。

剛が空から目線を水晶玉に向けると水晶玉が口を開いた。 

「剛、学そっくりの大介に恋したんじゃないのか」

「……」

「否定しないということは図星か」

「……」

剛が背を向けると水晶玉が口を開いた。 

「俺は反対だ」 

「水晶玉が偉そうに」

「大介が学みたいになっても知らないからな」

そう言って水晶玉がその場から消えると剛は振り返った。 

ーホストクラブクリスタルー 

社長室で大介が仕事をしているとスタッフの男性がドアを開きながら声をかけてきた。 

「よろしいでしょうか?」

「どうしましたか」

「雇ってほしいと男性が来てるんですが」

「スタッフ?ホスト?」

「ホストで雇ってほしいと」

「わかりました、面接します」

「わかりました、どうぞ」

社長室の前で待っている人物に声をかけ中に入れるとスタッフの男性は社長室を出ていきドアを閉めた。 

「どうぞ」

男性をソファーに座らせると大介は椅子から立ち上がり近づくと向かい合ってソファーに座った。 

「ホストで働きたいとか」

「はい」

「お名前は?」

「水晶です」

「水晶さん」

「雇ってください」

手首にはめている水晶玉のブレスレットを外し大介に向けると魔法をかけた。 

「今日からホストとして働いてください」

ブレスレットを見つめながら大介が口にすると水晶が口を開いた。 

「ありがとうございます」

ブレスレットを手首にはめると水晶はソファーから立ち上がり社長室を出ていった。 

「どうでしたか?」

「今日からホストとして働いてくださいと言われました」 

スタッフの男性の問いに水晶が答えると黒(こく)が来店してきた。 

「黒!」

「いらっしゃいませ」

スタッフの男性が近づくと黒が口を開いた。 

「大介さんをお願いします」

「かしこまりました、3番でお待ちください」

そう言ってスタッフの男性が離れていくと黒は3番の席に行きソファーに座った。

「嫌な予感がする」

そう言って水晶は誰もいない2番の席に行きソファーに座ると黒を見つめた。

そこへスーツ姿の大介が3番の席に現れ「いらっしゃいませ」と言って黒の隣に座った。 

「いつもの酒で良いですか」

「はい」

黒が返事をすると大介はスタッフを呼びイチゴのカクテルを注文した。 

「酒を飲めない客なのに相手をしてくれてありがとうございます」

「気にしないでください」

「……」

優しく微笑む大介の姿に黒の胸はドキドキと高鳴り恋心が芽生えた。 

「嫌な予感が的中したか」

黒の様子を見ながら水晶が口にすると女性客が現れ接客をすることになった。 

それから何時間も時間が過ぎ空は暗くなりホストクラブは閉店になった。 

「お疲れ様でした」

「お疲れ様でした」

ホスト達を見送りドアを閉めると大介は社長室に向かい机に近づき椅子に座ると売り上げの計算を始めた。

その時、店のドアが開き黒が入ってきた。 

黒はドアを閉め暗い場所を歩き社長室に向かうとドアをノックした。 

中から「はい」と大介が返事をすると黒はドアを開き中に入った。 

「黒さん!」

驚いた顔で大介が椅子から立ち上がりソファーに近づき止まると黒はドアを閉め大介に近づいた。 
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