泣き虫陽菜は魔法使い☆

古川優亜

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泣き虫でも魔法使いになりたい!!

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「陽菜!?」
パパが慌てて私を立たせてくれる。
「どこが痛いの?陽菜。」
ママが私の手を握りながら顔を覗き込む。
私は泣きながらも慌てて立ち上がる。
お兄さんが心配そうに近づいてきたから。
私はお兄さんを警戒する。
「威嚇しないでよ。何もしないよ?お兄さんは何もしてないでしょ。」
お兄さんはそういうと優しい手で私の頬を触られる。
体に不思議なものが流れてくる。
「あ、あぁ。ああああああああああああ!!!!!」
強い痛みに思わず大きな声が出る。
さっきとは違う大きな痛み。
体が動かない。
まるで何かに縛られてるみたい。
「陽菜!?」
「どうしたんだ、しっかりしろ!!」
ママとパパの声が聞こえる。
あれ?
痛みはなくなってきたけれど、周りが暗くなってきた。
音もあまり聞こえない。
暗いよ。
ママどこ?
パパ、ハルの手を握ってよ。



あれ?
ここどこ??
すごく明るくてポカポカする。
お花も大きな木も綺麗。
お日様が眩しい。
ママとパパはどこに行ったんだろう。
歌声が聞こえる。
優しくてどこか悲しくなる歌。
目から涙が溢れる。
大きな木に寄りかかりながら一人の男の子が歌ってる。
黒い髪の毛が風になびいていて。
私が近づいても何の反応もしない。
ただ目を閉じて歌い続けるだけ。
ただ、その歌ってる姿はすごく寂しそう。
「よしよし!」
私はいきおいよく男の子を抱きしめる。
「!!」
だって男の子の目から涙が流れていたから。
止まっていた涙がまたあふれ出す。
どうしてそんなに寂しそうに歌うの?
悲しそうに見えるの?
どうして一人でここにいるの?
言いたいこと、聞きたいことはたくさんある。
それでも私は男の子を抱きしめたまま、泣くことしかできない。
涙が止まらない。
「大丈夫だよ。陽菜がいるからね。ずっとここにいるからね。」
ぎゅっと抱きしめたまま男の子の頭をなでる。
どうして、こんなに胸が苦しいんだろう。
男の子にぎゅっと捕まれる。
私と男の子だけ
周りが夜になったかのように暗くなる。
ずっとこのまま、一緒に・・・
私が遠くなる意識で考えてた時。
『陽菜、おいで。パパが抱っこしてあげよう。』
パパ?
『今日は陽菜の好きなオムライスよ!』
ママ?
『ハル、いつまでぼーっとしてんの!』
美緒?
『『『戻っておいで!!!』』』
大好きな人たちの声。
そうだ、私はいつまでもここにはいられない。
「ごめんね。やっぱりずっといられないや。」
私は男の子から離れる。
歌わずにただ黙ってるだけ。
「でも、大丈夫だよ!!私がまたここに来るから!!そしたらいっぱいいっぱい陽菜と遊んでね?」
私が言うと男の子は小さく頷いた。
「またね。」
最後に抱きしめてから言うと体がふわりと浮いた。
家族の元に帰らなきゃ。





「・・・るな。陽菜!!」
誰かが私を呼んでいる。
「お願いだから、目を開けて!!ママにもう一度微笑んで!!!」
そんなに大きな声で呼ばなくてもちゃんと起きるよ。
ていうか、あれ?
「・・・ママ?パパ?」
顔にお水が落ちてきて目を開いたら、ママが目にいっぱい涙を浮かべて泣いていた。
「ど、どこか痛いの!?」
ママの涙をぬぐいながら言うと
「は、陽菜ー!!!」
突然パパに抱きしめられた。
「パパ!?」
一体何がどうなってるのか誰か説明して!!
後ろからパパ、前からはママに抱きしめられ、板挟みになってしまった。
「本当に娘思いの親ですね。」
お兄さんは床に伸びている。
私が寝ている間に何があったんだろう?
皆は何があったかわかる???
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