僕らの姉弟は

古川優亜

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「うぅ。姉さまの馬鹿」
ロザルド様からずっとこんなことを言われ続けて早くも30分。
「はいはい。どうせ私は馬鹿ですよ。」
私は後ろからの文句を聞き流しながら歩き続ける。
「ルドも元気だなぁ。クリスティーナもよくあの高さから降りたよな。」
私の隣でレオンハルト様がいい、ジョセフ様は
「クリスティーナをどこにかくまうか。」
と言いながらぶつぶつと考え込んでいる。
「それにしても、様づけはしなくていいからな?」
視線を逸らして聞かなかったことにする。
「こら、逸らすな。無視もするな。」
「今更、なんて呼べばいいのよ。」
私が前を見ながら言うと
「普通に愛称で呼べよ。愛称で。」
とレオンハルトに言われるが
「あんたら3人の愛称なんて知るわけないでしょ。」
「「「え?」」」
あ、兄弟そろって同じ顔で同じ言葉を言った。
ていうかジョセフは考え込んでいたのに聞こえてたんだ。
「そこからかよ・・・。」
あ、レオンハルトが頭を押さえてる。
頭でも痛いのかな?
「痛くねぇわ、あほ!」
「え、怖い。心呼んだ?」
「姉さま、顔にも声にも出てたよ。」
ロザルドにまで言われちゃった。
お母さまから気を付けるように言われてたのに。
どうしようかな。
「姉さま、三男の僕はロザルド。愛称はルドだよ。」
「俺は次男のレオンハルト。愛称はレオンだ。」
「僕は長男のジョセフ。愛称はジョー。というわけでこれから僕たち兄弟と仲良くしてね、リティ。」
3人にそれぞれ自己紹介されてとりあえず頭の中に入れておく。
「とりあえずはやめろ、とりあえずは。」
「あ、また声にでてた?」
「思いっきり出てたよ、リティ。」
「姉さまは、隠し事が苦手な人だね。」
と、わいわい話しながら王宮まで歩く。



「さて、これからどうやってリティを隠すか。」
ジョーが腕くみをしながら考えるのをベットの上から眺める。
「姉さま!おいしいクッキーもらってきたよ!!」
「あ、ありがとう。ルド。」
ルドから美味しいクッキーをもらいパクリパクリと食べていく。
ついでにキラキラと目を輝かせているルドの頭を撫でてあげる。
「えへへ。」
子犬みたいで可愛い。
「いち、に、さん。」
ソファで考えているジョーの部屋の中なのに素振りをしている、レオン。
上二人の役割が決まってるみたい。
ジョーは基本的に物事を考え、レオンは実戦型。
ルドは・・・まだ、わかんないや。
「それよりも、リティ。処女がベットに横になりながら菓子を食べるなんてだめだぞ。」
レオンが汗をかきながら言うけれど
「いや、兄さまも室内では素振りだめでしょう。」
ルドが私の隣でレオンを注意する。
「君たち、3人は考えるの放棄しないで!!リティ、君は頭いいんだがら少しは考えよう!?」
あ、ジョーがパンクしてる。
もはや、遊んでいたら怒られた。
「て、言ったてなぁ。黒髪だと目立つから隠し切れねぇよ。」
レオンが汗を拭きながらいうとルドは
「・・・姉さまはこれからどうするの?」
と、不安そうに私の服をつかんできた。
これから?
そういえば、なりゆきで一緒にいるけれど、私はこれから自由にしていいんだ。
だったら、この城からも出てもいい!?
「「「・・・。」」」
あれ?
なんか空気が重い。
「リティが出ていきたいなら止はしないと。だけれど・・・」
ジョーが歯止め悪く言い、レオンは黙って素振りを始めた。
あぁ、そうか。
彼らにとってもここは安全じゃない。
だから、私を一人にしなかったんだ。
自分たちも危ないから。
呪われた子である私はもっと危ない。
でも、本当にそれだけ?
ここから出れば私は安全。
それなのにどうして3人はこんな顔をするの?
「姉さま。お願いです。僕を置いてかないで。」
「ルド?」
「やめろよ、ルド。」
ルドが私に抱き着いてきて何か、必死に訴えようとする。
だけれどそれをレオンは止めようとしていて。
「姉さまだけなんです・・・!!僕たちに。僕たちに嘘をつかないのは!!!」
ルドは目に涙を浮かべて手に力を入れて。
「ルド、いい加減にしなさい。」
いつも穏やかなジョーが声を荒げる。
どうして。
どうしてなんだろう。
この3人はどうして、こんなに苦しそうなの。
何かを隠そうとするんだろう。
私は3人を置いていけない。
『リティ。仲間と思ったら最後までその人たちを守るのよ、いい?』
お母さまの声がする。
生きていたころ、毎日のように言っていた言葉。
あぁ、そうか。
私は、彼らのことを。
思わず笑ってしまう。
この話は簡単なことだ。
私が選ぶ先。
それはーーーーー
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