僕らの姉弟は

古川優亜

文字の大きさ
上 下
8 / 19

しおりを挟む
「おか、あ。さま。」
私は何とかそれだけ言うとお母さまからの手紙を強く握りつぶしてしまった。
目からあふれる涙をぬぐいながら手紙を読んでる間、3人の王子はずっと私を抱きしめていてくれた。
お母さま以外の人から抱きしめられたことがなくて、違和感しかない。
それにこの3人はお母さまのお友達。
私が一人にならないようにお母さまが考えぬいた結果。
「クリスティーナ。もう大丈夫だからね。」
「俺たちがこれからずっと一緒だからな!」
「姉さま、これからずっと僕たちが守るから!僕、姉さまの騎士になるから!!だから、もう泣かないで。」
初めてお母さま以外の人からもらった優しくて暖かい言葉。
私を苦しめようとせず、優しく包み込んでくれる人たち。
お母さまは私に最高の人を残してくれた。
まだ、私は完全にはこの3人を信用できない。
でも。それでも歩み寄ろうとしてくれたから。
少しでも私から近づくのもいいかもしれない。
お母さまが信用したから。
だから大丈夫。彼らは私を守ってくれる。
もう、私は独りじゃない。

「クリスティーナ、落ち着いたかい?」
第一王子が指で私の涙をぬぐいながら微笑んだ。
「・・・。」
私は急に恥ずかしくなってこくりと頷いた。
3人の王子は私から離れてそれぞれ思い思いに動いていた。
第三王子はずっと私にくっついていて正直動きにくい。
第二王子はずっと窓から外の景色をみている。
第一王子は扉の前をいったりきたりしているし。
この3人は何がしたいんだろう。
「ねぇ、何して。」
「姉さま、しー!」
慌てて口を小さな両手でふさがれる。
「レオン、ルド。今すぐ、脱出の準備を。クリスティーナは僕と一緒に・・・。」
「いたぞ!呪われた子!」
扉が勢いよく開いて知らない男の人たちが入ってきた。
「あっちいけ、よ!!!」
第二王子が椅子を一人の男に投げつける。
「姉さまはこっち!」
第三王子に手を引かれ安全な場所へと連れていかれるが。
「動くな!!」
私は第三王子と仲良く拉致されてしまった。
「・・・ねぇ、この人たちは敵であってる?」
私は怯えている第三王子の手をそっと外しながら言った。
「あぁ、クリスティーナの命を狙うから敵であってるよ。」
第一王子は静かに言った。
剣を持つ手は小さく震えている。
「そっか。ねぇ、ロザルド様。私はお母さまから『逃げれる時間を稼げる程度に生け捕りに』と教わってるの。」
「え?」
私は首に回された男の手を強く握り体を持ち上げる。
そして足を高く上にあげて男の顔に命中させて。
「ぐはっ!!」
男の人から手を離すついでに腰にある短剣を奪っておく。
「ロザルド様、行くよ!」
着地してロザルドの手を握る。
「はい、姉さま!!」
私とロザルド様は走ってジョセフ様とレオンハルト様の元に向かう。
「クリスティーナ。一体君はローズ様から何を教わったんだい。」
ジョセフ様が私とロザルド様を後ろにかばいながら苦笑していた。
「私はどんなことがあっても生きていきたいから。」
私がそう言って笑うとレオンハルト様は
「女とは思えねぇな。」
と面白そうに笑っていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

王太子さま、側室さまがご懐妊です

家紋武範
恋愛
王太子の第二夫人が子どもを宿した。 愛する彼女を妃としたい王太子。 本妻である第一夫人は政略結婚の醜女。 そして国を奪い女王として君臨するとの噂もある。 あやしき第一夫人をどうにかして廃したいのであった。

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。 因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。 そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。 彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。 晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。 それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。 幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。 二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。 カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。 こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

処理中です...