僕らの姉弟は

古川優亜

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目が覚めると綺麗な天井が見えた。
目をきょろきょろと動かすと女性のすすり泣く声が聞こえた。
「どうしてなの?どうして私の娘は”呪われた子”なの?」
呪われた子?
「この子は何も悪いことをしていない!なのにどうして!!!」
女性の悲痛な声が響いた。
手を伸ばせば女性の髪を掴むことができる。
「クリスティーナ?」
私を見つめる瞳は潤んでいて、どこか悲しそうだった。
「おかあさま!だーいすき♡」
私が笑顔で言えば女性は嬉しそうに笑った。
「そうよね、お母様が泣いてたらダメよね。ありがとう、クリスティーナ。私の愛しい娘。お母様もクリスティーナの事が世界で一番好きよ。」
女性は私を強く抱きしめながら言った。
お母様。
「クリスティーナは絶対にお母様が守りますからね。」
女性、いや私のお母様は小さく呟くと頭をなでてくれた。
それから2年。
何事もなくお母様と過ごせていたある日。
悲しいことは突然やってきた。
使用人なんて誰もいない。
静かな屋敷だったのに。
突然使用人だと名乗る女性たちがやってきた。
「おかあさま、このひとたちはだれ?」
私はお母様の後ろに隠れていた。
お母様の顔色は青くてどうしたんだろうと思っていたのを覚えている。
そしてお母様は使用人たちからいじめられるようになった。
最初は食事が少ない程度だったのに。
日に日にひどくなっていって。
そのうえ一週間に一度出かけるときもあって。
出かけて帰ってきた日はいつも苦しそうな顔をしていた。
でも
「おかあさま?」
私がいるといつもお母様は「大丈夫よ。」と笑顔で頭をなでてくれていた。
たとえ使用人にひどいことを言われても苦しくなかった。
大好きなお母様がいてくれたらそれだけで良かった。
それなのに。
私が。お母様が何をしたの?
どうして、私じゃなくてお母さまを!!
お母様は何も悪くないのに!!
ある日、お母様は倒れた。
「おかあさま!?」
口から血を吐いて。
「だれか!おねがい、だれかきて!!」
近くに使用人はいた。
目の前で起きている光景を見て見ぬふりをされた。
それどころか
使用人たちは皆不気味な笑顔を浮かべていた。
「ど、うして?」
お母様は助からなかった。
冷たいお母様の手を私はただ握った。
少しでも温かくなるようにお母様の手に息を吹きかけ続けた。
目から涙がたくさん溢れた。
悲しい。悔しい。
私が呪われた子だからお母様は殺されたの?
こんなめにあわなきゃいけないの?
それなら
「呪ってやる。この世界を。お母様を奪ったこの世界を呪ってやる!!!」
心の中からどす黒い何かが出てきた。
周りが黒く変わっていき使用人の一人がその日を境に消えたそうだ。
6歳の私は強く強くそう思った。
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