光の姫巫女

古川優亜

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始まり

2突然の来客

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エミリーはハルキと遊びながらふと立ち止まった。
「どうした?エミ。」
「ううん、何でもない!」
不思議そうにハルキが言うとエミリーは首を横に振りハルキと手を繋いで歩き出す。
だが、ずっと曇り空を見ていた。
(またか。)
ハルキはエミリーの隣に立ちながらふと思った。
エミリーは決まって曇りの日になると空をぼうっと眺める癖がある。
何も言わずに空を眺め、何かを求めるように右手を動かす。
エミリーは決まって誰かと手をつなぐときは相手の左手を必ず握る。
「エミちゃ~ん!おいしい紅茶があるから、戻っておいで!!」
リンカの呼ぶ声で振り返るエミリー。
ハルキが左手を伸ばせばエミリーは笑顔で右手を差し伸べる。
いつもなら、二人並んで歩くのだが、エミリーは動かなかった。
「エミ?」
ハルキが首を傾げるとエミリーとハルキの周りが銀色に光りだした。
「い゛!!」
ハルキは痛みを感じエミリーは咄嗟に手を離す。
「迎えに来たよ、グレース。」
アメジストの瞳のエミリーと同じ髪色の少年が言った。
エミリーに手を差し伸べながら。
「オスカー。」
呆然と言うエミリー。
「てめぇ!エミから離れろ!!」
ハルキは左手を押さえながら言った。
一歩一歩後ろに下がるエミリー。
その顔色は生きているとは思えないほど白かった。
「一体、何事ですか!!」
遠くからアンの声が聞こえ、ハルキは走ってエミリーの手を握る。
「君は!!」
ジョンは少年を見て言葉を飲み込んだ。
「ル・ラーン家の従者がどうしてここにいるんだ。」
「妹を迎えに来て何が悪いんですか?それにもう俺はル・ラーンとは何の関係もありません。さぁ、帰ろう。グレース。」
少年・オスカーは一瞬でハルキの隣に立ちハルキからエミリーを奪い取る。
「エミ!!」
エミリーは抵抗もせずに体を小さくしてオスカーの腕の中にいた。
レイ・ロキ・アモンの3人が戦闘態勢に入り、一斉に魔法をオスカーだけにぶつけようとする。
すると
『ばちぃぃぃぃぃぃぃん!!!!』
大きな音で魔法がはじき返される。
「「「!!!」」」
「無駄だよ。殺意からくるものはすべて俺には通用しない。」
オスカーは眠そうにめんどくさそうに言った。
「お前は何者だ!!」
アモンが荒い口調で言いオスカーはそっとエミリーの耳を両手で塞ぐ。
「妹の面倒を今まで見てくれてどうもありがとうございます。でも、ここからは俺が見るので心配しないでください。」
オスカーが冷静に丁寧な口調で言う。
「はい、そうですか。とは言えませんね。」
ロキはそういい
「ちょっと待って。妹って何??」
アンだけが頭を抱えて悩んでいた。
「「「「「「「あ。」」」」」」」
リンカ・ジョン・ロキ・ラム・アモン・レイ・ハルキは口をぽかんと開けて反応する。
「はぁ。何もわからず俺は殺意を受けてたの。」
オスカーは頭が痛そうに抑える。
「いきなり、お嬢様を連れて行こうとするからだ!!」
アモンは子供の様に騒ぎロキが口を押える。
「わかった。今から話すから。でも、俺とグレースを離そうとしないでよね。」
また、くだけた口調になったオスカーはエミリーを横抱きにして屋敷に向かって歩き出す。
皆、何も言わずに後を追うようについていく。
正直に言って、オスカー、エミリー以外の誰もこの状況を飲み込めていなかった。
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