光の姫巫女

古川優亜

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始まり

1 当たり前の幸せ

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ルイスは少女と青年・ジョンを見ていたが諦めたように俯いた。
「ごめんよ、怖かっただろう?大好きな2人から離してしまってすまない。」
ジョンは少女を優しくさすりながら謝っていた。
すると少女は目に涙を浮かべたまま小さな手をジョンの大きな手に重ねる。
少女のピンク色の光はだんだんやわらぎ銀色の光も消えた。
「魔法を解いてくれてありがとう。」
ジョンはそう言うと少女を抱きしめたまま倒れた。
「「ジョン様!!」」
ルイスとジーク・周りにいた男たちが慌てて駆け寄る。
すると
『ごめんなさい。』
か細い声が頭の中に響いた。
皆、驚いて固まっていると少女がジョンの手を両手で握りながら目を閉じていた。
少女の体からまたピンク色の光が溢れたがそれは優しく温かいものだった。
光がジョンの体を包み込むように。
守るように広がっていくとジョンの傷は少しづつだが治り始めてきた。
ピンク色の長い髪は空中に漂い少女は神秘的に輝いてる。
「・・・君の魔法はとても優しいね。ありがとう、痛みが和らぐよ。」
ジョンは目を開くと少女の髪を優しく撫でた。
『・・・怖くないの?』
少女は目を開くと首を傾げた。
「怖くない。君の事はルイスとジークから聞いている。」
ジョンは立ち上がると少女を持ち上げた。
「君には聞きたいことがあるんだ。」
ジョンは優しく少女に言うとルイスとジークを振り返り微笑んでいた。
「2人とも、そろそろ魔法を解いたらどうだ?」
2人はその提案に頷くと魔法を解いた。
するとそこにいたのは7歳ぐらいの少年だった。
「???」
少女は何度か瞬きすると髪の長い少年にそっと手を伸ばした。
『ルイス?』
少年はふわりと笑い頷いた。
「ええ、そうですよ。私はルイスです。」
ルイスは嬉しそうに何度も頷きながらジョンから少女を預かる。
少女は次に赤い髪の少年にも手を伸ばし
『ジーク?』
と頭に響く声で言った。
「怖い思いさせてごめんな。」
ジークは少女の手をそっと握りながら言った。
「・・・それで、話しても大丈夫か?」
1人話の外にいたジョンは苦笑しながら言った。
「「す、すみません!ジョン様。」」
ルイスとジークが声をそろえて言った。
少女はルイスとジークの手を握りながら2人の間に座っていた。
「では、自己紹介させてくれ。俺の名はジョン。この国の第八王子だ。君の名は?」
ジョンが少女と同じ目線になるようにしゃがむと少女は首を傾げた。
「えーと・・・俺はてっきりまた頭の中に声が響くと思ってたんだが・・・。」
ジョンがそう言うと少女は困ったような顔をした。
『恥、さらし?』
と皆の頭に小さな声が聞こえた。
「「「は?」」」
3人は声をそろえて間抜けな声を出していた。
「それでは、年は?」
1人の男が慌てて聞いた。
少女は混乱していることをこの場にいた皆が願った。
しかし
『3歳。』
この言葉を元に全員が全員この少女がまともである事を悟った。
「君はそのひどい名前でこの3年間生きてきたのか?」
ジョンは怒りで肩が震えていた。
少女は何故ジョンが怒っているのか分からないといった顔で頷く。
「・・・ジョン様、怯えているのでほどほどに。」
ルイスがそう言うとジョンは肩で息をしながら頷いた。
「ああ、そうだな。今俺が怒ったところで意味がない。悪いが、2人でこの少女に合う名前を考えてくれないか?」
ジョンは少女の頭をなでながら言った。
すると、ルイスがすぐに
「それなら私は『エミリー』という名がこの子に一番合うと思います。」
ジョンは目を丸くした。
「決めるの早すぎないか?」
ジークが隣でぼそりと言うとルイスは少し顔を赤くしてから言った。
「よくこの子は魔法で光っていただろう?それに彼女にはこれから光のある未来を歩いてほしいですし・・・。」
ルイスはそう言ってから
「重すぎるでしょうか?」
と不安そうに周りを見ていた。
「ルイス、ぴったりじゃねぇか!!!エミリー!!!呼びやすいし女の子らしくて可愛い名前だな!!」
ジークは大きな声で言うと少女・エミリーの頭をわしゃわしゃと撫でた。
「そうだな。それに他にも意味があるんだろう?」
ジョンが意味深く笑うとルイスは
「やはりバレましたか。」
と顔をひきつらせた。
「他の意味は『大いなる光』『光の源』『光の恵み』です。」
ルイスはそう小さく言うとジークは
「さすが、本バカ。」
と笑っていた。
『エミリー・・・?』
頭に小さく響いた声。
皆が少女を見ると初めて少女の口角が少しだけ上がっていた。
「「「!!!」」」
皆、当たり前すぎて誰も気づかなかった。
名前をもらえる。
それは当たり前の幸せ。
誰もが親から名前という初めてもらえるプレゼント。
しかし、少女はこのプレゼントをもらえずに3年間生きてきた。
名前をもらえると言いうことはその人を肯定し、生きている証。
少女はようやくこの当たり前の幸せをつかんだのだ。
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