やばい彼氏にご注意を

SIVA

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7. 最終話 最低で最高の言葉

7-59

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つけたばかりの煙草を消した有栖川は、健気に咲いている一輪の桜の花を見つけると目を細めながら小さく微笑んだ。
「仕方ない。行くとしますか」
準備室を後にした有栖川が向かったのは卒業式が厳かに行われているだろう体育館。
コッソリと覗いた体育館から冷気が足元を通って行く。
小さくあたりを見回しようやく寒さに耐えながら自分の名前を呼ばれるのを待っている倫太郎の姿を見つけた。
直ぐに見つけられるほど見慣れた姿。
幾度となくその目に涙を溜めさせ、幾度となく釣り目をして怒らせたり、時にはその顔を真っ赤にさせて甘い声を出させたりしてきた。
今の表情はそんなどの表情よりも気が抜けて心が妙に落ち着く。
「ふはっ」
自然と口許が緩む。
すると、タイミングよく倫太郎の名前が呼ばれた。
ビクッと小さく肩が上がり、クリッとした目が見開かれ少し遅れて返事が聞こえてきた。
思わず吹き出し笑いをしてしまいそうになるのを必死にこらえながら、口許に手を当てた。
「あいつ。絶対寝落ちてたな。こりゃお仕置き決定だな」
そうぼやきながら有栖川は体育館を後にした。

***

眠気MAX状態で名前を呼ばれ正直マジでビビった。
声はうわずんだし、立ち上がるタイミングも完全にずれてたし、近くにいた奴らにはクスクスと笑われる始末。

***

無事?に卒業式も終わりそれぞれの教室に戻って別れを惜しんでいつまでも話し込んでいた。

教室の黒板には、絵の得意な女子たち数人が左の口角を上げてニタリと笑っている有栖川の似顔絵を描いていて、なんとなく雰囲気を捉えていてみていると若干ムカついてくる。
「わぁ!すごっ!目のクリッとした感じとか、あの口のニヤケ具合とか激似じゃん?」
「これ写メって永久保存しとこは」
他のクラスの女子たちが噂を聞きつけ教室になだれ込んできた。

俺は静かに事が過ぎるのを待った。
時折クラスの女子から話し掛けられ卒業アルバムの余白部分に何かコメントをとペンを差し出され、適当に書いていると若干の列が出来始めている事に焦りを感じた。
「武田ぁ!外行こうぜ!雪まだ降ってるって!」
列を見つけた有太が助け船を出してくれた。
「おう」
目の前の女子を最後にペンを返し立ち上がると早足で教室を後にした。

***

教室は人の熱気でほのかに暖かかったが、外に出ると体育館よりも流石に寒く思わず首を縮めてしまった。
「マジで似てたな」
「何が?」
「何がってお前さぁ……あれだよ。女子たちが描いた黒板のアリス」
「あぁ……」
「あ゛!!!お前今リアルアリスの事考えたろ!??」
「は、はぁ!?んなわけあるか!」

―――――ある―――――

俺は今返事を返しながら本物の有栖川の、しかも俺と二人の時にしか見せないだろう有栖川を想像していた。

ジト目で見てくる有太の視線が痛い……そんな目で俺を見ないでくれ。

「まっ。別にいいけどさ。流石に今日は来ると思ったけどな。なにやってんだあの変態教師は」
「そうだな」
会えない事はわかっていた。
間に合えといったけど、かたを付けて来いって言ったけど、そう簡単にはいかないような気はしてた。
俺はあからさまに表情を変え下を向いた。

ドンッ!



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