やばい彼氏にご注意を

5. そして始まる文化祭

5-22

「りぃぃん！！んー♡もぉぉほんっと最高じゃない？！やっぱあんたはこっちの格好の方が似合ってるわぁ……ってえぇぇぇぇぇ？！！」
菊ちゃんの叫び声が部屋中に響き渡った。
「なんだよ煩いな。これ、ホントに俺に合わせて作ったのか？何か少しサイズが違う気がするんだけど」耳を抑えながら言うと「ちょちょちょ！何！？この衣装、二神ちゃんに渡したはずよ？」
どうりでウエストの辺りがでかいわけだ。
 「まじかよ。俺は、貰った袋の中の服をそのまま着ただけだけど」
 「あぁんもう！仕方ないわね。今更着替える時間なんてないわ！あんた色白だからこっちの衣装でも大丈夫よ！」 
全身を舐めるように見て、ほっぺたに置いていた手を払い取られ、丸まった背中をバシッと叩かれるとそのまま手を引かれ、試着室から出される。
勢いで腰をもたれクルクルと回転させられたかと思いきや、菊ちゃんは突然くるりと向きを変えて、少し後ろに立っている二神を見つけると手を挙げて、大きく首を振った。
 俺は二神の衣装を見ようと振り返ろうとしたところで「りんはこっち見ちゃダメよ！ちょっとぉ！そこの眼鏡君！ついたて持ってきてここにおいてちょうだい！」と言われてしまった。
「結果オーライね。あぁん♡二神ちゃんも素敵♡けど、ちょっと待って─────」
 菊ちゃんは、せわしなく動いている。
ついたてを置かれたとはいえ、肩ぐらいまでしか隠れていなくて互いの顔が見え俺たちは固まったまま、互いに横目で見ながら苦笑いをした。

俺の衣装だったはずのモノを二神が着ている。
水色ベースのチュチュが何枚も折り重なったフリッフリのミニスカート。
 片や漆黒のドレスはテールスカートになっていて、後ろが引きずるくらい長い。
 お互いに肩は丸出し状態。
 「お、俺にこれを着こなせってか……」
 モデルの二神ならともかく、ド素人の俺が着て良いドレスとは思えない。

しかも黒って！！
まだフリフリの方がよかった─────じゃない！！！