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5. そして始まる文化祭
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パーテーションが取られた瞬間、近くにいた生徒会委員がぴたりと足を止め、こちらに視線を向けてきた。
それが一人なら耐えられるけど、大きな荷物を抱えた人まで足を止めてこちらを見てくるとなると、視線のやりどこに困り、下を向いてしまった。
ヌッと伸びた手が、顎の下に置かれると自然と自分の顔が前を向く。
そこには、いつものヘラヘラした菊ちゃんじゃなくて、プロの顔をした菊川憲治の姿があった。
“自信を持ちなさい”
さっきの菊ちゃんの言葉がリフレインする。
目を閉じ、大きく深呼吸をして、菊ちゃんの方を見た。
菊ちゃんはようやく笑顔を見せてくれた。
「すっごぉい。あんた、今ここにいる生徒だけでも魅了させちゃって。あたし今『うちの子を見てよ見てぇ!!』って叫び倒したいくらい♡」
「菊ちゃんのおかげだな……ありがと」
「あら、当たり前でしょ?何言ってんの。お礼は優勝してから言ってくれない?これなら二神ちゃんにも負けてないわね、うん♡」
「あいつは?」
「ん~もう舞台袖に行ってるんじゃないかしら。あたし一人で二人を見るのは限界があるし、あちらはあちらのアシスタントが付いてるから、大丈夫よ」
「そっか」
あいつは、このコンテストに何食わぬ顔で参加するのか。
「どうしたの?」
「あ、何でもない。じゃ俺も行ってくる」
キョトンとした菊ちゃんを残して、部屋を出た。
***
「倫太郎」
壁にもたれ、長い足を延ばしてモデルみたいな格好で待ち構えていた男。
俺の姿を見つけるや否や、結構な声量で俺の名前を呼ぶ。
学校で名前をよぶなっつってんだろ……何度言えば……。
視界に入らないようにするのは、無理だったから少し距離を取って前を素通りしようとした。
通り過ぎる瞬間、大きなため息が聞こえ無意識に視線をそっちに向けてしまった……が最後、腕を取られ引き止められたその体勢は、このストーカーみたいな男が後ろからハグする状態。
「やめろって!誰かに見られたどう言い訳すんだよ」
「え?大丈夫。倫太郎で充電中ですって言うから」
「バ、バカだろ!?教師の癖にお前なんも考えてないだろ!」
小声で悪態をつく俺の唇の上に人差し指が乗った。
「シーッ。黙れよ」そう言われその手が顎の下に乗ると顔を上向きにされ男の唇が乗った。
「……んっ……ふっわっ…アッ、アリッ…」
舌を絡め取られるように、口の中を犯される。
身体を有栖川に向けながら離れようと胸に手をついた。
けど直ぐにそれは取り払われ身体がくっつく。
どのくらい濃厚なキスが続いたのか、すっかり俺の脚には力が入らなくなっていた。
倒れかけた瞬間、唇がようやく離れ「ほらほら、キスだけで倒れそうになっちゃって」クスクス笑いながら、腰に手を回し支えてくれる。
「はぁ……よし。倫太郎充電完了♡」そう言って身体が離れていく。
「その感じなら余裕で予選通過だな。ま、フロアからじっくりみててやんよ」
手のひらをヒラヒラさせながら、後ろ姿が遠くなっていく。
(な、な、な……)
ワナワナと怒りがこみ上げてきた頃には、生徒会長に手を引かれて、舞台袖に連れていかれた。
「大丈夫ですか?」
「へ?あぁ。だい、じょうぶ」
生徒会長は、心配そうに顔色をうかがってくる。
後ろからパタパタと菊ちゃんが近づいてくる足音を聞いて、振り返ると「みんな揃うと、どの子から攻め落とそうか迷っちゃうわね」と眉を垂れ下げながらつぶやいた。
「ん?」
突然こちらに視線を向けた菊ちゃんは、勢いよく顔を近づけてきた。
「なっ!!んだよっ」
その行動に驚いた生徒会長は思わず口に手を当てている。
またスンスンと鼻を近づけてくる菊ちゃんに「だぁから!香水なんてつけてないからな!」と大きな声をあげれば「そうよね。わかってるんだけど……この前も思ったんだけど、どこかで嗅いだことのある匂いなのよね」と言いながら離れていった。
それが一人なら耐えられるけど、大きな荷物を抱えた人まで足を止めてこちらを見てくるとなると、視線のやりどこに困り、下を向いてしまった。
ヌッと伸びた手が、顎の下に置かれると自然と自分の顔が前を向く。
そこには、いつものヘラヘラした菊ちゃんじゃなくて、プロの顔をした菊川憲治の姿があった。
“自信を持ちなさい”
さっきの菊ちゃんの言葉がリフレインする。
目を閉じ、大きく深呼吸をして、菊ちゃんの方を見た。
菊ちゃんはようやく笑顔を見せてくれた。
「すっごぉい。あんた、今ここにいる生徒だけでも魅了させちゃって。あたし今『うちの子を見てよ見てぇ!!』って叫び倒したいくらい♡」
「菊ちゃんのおかげだな……ありがと」
「あら、当たり前でしょ?何言ってんの。お礼は優勝してから言ってくれない?これなら二神ちゃんにも負けてないわね、うん♡」
「あいつは?」
「ん~もう舞台袖に行ってるんじゃないかしら。あたし一人で二人を見るのは限界があるし、あちらはあちらのアシスタントが付いてるから、大丈夫よ」
「そっか」
あいつは、このコンテストに何食わぬ顔で参加するのか。
「どうしたの?」
「あ、何でもない。じゃ俺も行ってくる」
キョトンとした菊ちゃんを残して、部屋を出た。
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「倫太郎」
壁にもたれ、長い足を延ばしてモデルみたいな格好で待ち構えていた男。
俺の姿を見つけるや否や、結構な声量で俺の名前を呼ぶ。
学校で名前をよぶなっつってんだろ……何度言えば……。
視界に入らないようにするのは、無理だったから少し距離を取って前を素通りしようとした。
通り過ぎる瞬間、大きなため息が聞こえ無意識に視線をそっちに向けてしまった……が最後、腕を取られ引き止められたその体勢は、このストーカーみたいな男が後ろからハグする状態。
「やめろって!誰かに見られたどう言い訳すんだよ」
「え?大丈夫。倫太郎で充電中ですって言うから」
「バ、バカだろ!?教師の癖にお前なんも考えてないだろ!」
小声で悪態をつく俺の唇の上に人差し指が乗った。
「シーッ。黙れよ」そう言われその手が顎の下に乗ると顔を上向きにされ男の唇が乗った。
「……んっ……ふっわっ…アッ、アリッ…」
舌を絡め取られるように、口の中を犯される。
身体を有栖川に向けながら離れようと胸に手をついた。
けど直ぐにそれは取り払われ身体がくっつく。
どのくらい濃厚なキスが続いたのか、すっかり俺の脚には力が入らなくなっていた。
倒れかけた瞬間、唇がようやく離れ「ほらほら、キスだけで倒れそうになっちゃって」クスクス笑いながら、腰に手を回し支えてくれる。
「はぁ……よし。倫太郎充電完了♡」そう言って身体が離れていく。
「その感じなら余裕で予選通過だな。ま、フロアからじっくりみててやんよ」
手のひらをヒラヒラさせながら、後ろ姿が遠くなっていく。
(な、な、な……)
ワナワナと怒りがこみ上げてきた頃には、生徒会長に手を引かれて、舞台袖に連れていかれた。
「大丈夫ですか?」
「へ?あぁ。だい、じょうぶ」
生徒会長は、心配そうに顔色をうかがってくる。
後ろからパタパタと菊ちゃんが近づいてくる足音を聞いて、振り返ると「みんな揃うと、どの子から攻め落とそうか迷っちゃうわね」と眉を垂れ下げながらつぶやいた。
「ん?」
突然こちらに視線を向けた菊ちゃんは、勢いよく顔を近づけてきた。
「なっ!!んだよっ」
その行動に驚いた生徒会長は思わず口に手を当てている。
またスンスンと鼻を近づけてくる菊ちゃんに「だぁから!香水なんてつけてないからな!」と大きな声をあげれば「そうよね。わかってるんだけど……この前も思ったんだけど、どこかで嗅いだことのある匂いなのよね」と言いながら離れていった。
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