やばい彼氏にご注意を

4.絶賛、文化祭準備中

4-3

(俺のこれ……どうにかしないと。この、目が合って思い切りそらすとか) 

自分がやられたら絶対やだもんな。 
そっと視線を戻して、教科書越しに有栖川の方を見た。
もうこっちは見てなくて、自分が持ってきた本に目を落としている。 
こう見ると普通の教師だなって思う。 
けど、何で臨教なんてやってんだろう。 
あんなに授業がわかりやすくて、何気に生徒思いで、多分こいつは教師に向いてんだろうけど。 

ん？……あれ？
俺何考えてんだ。 
教科書を下ろしてプリントに目を落とした。 
最近考える事と言ったら、勉強の事よりアニメの事より有栖川の事ばっかだ。 
絶対にばれたくない気持ちだ、これ……。 
鼓動が早くなってる。 
今、俺あいつの事を考えてドキドキしてるとか。

あ、あ、ああり得ないんだけど！！！ 
勉強に専念しないといけない時期だろ！！

結局、プリントの後半を解くことなく授業が終わってしまった。 
こんな事、初めてだ……。 
後ろからプリントを集めに来た男子が「武田のプリントで空欄とか珍しくね？」と言いながらプリントを取り上げて前に持っていった。 
珍しいというか、初めてだよ！！！ 
「はぁ……最悪」 
これじゃ、テストやばい。 

＊＊＊ 

空はすっかり秋めいているのに、気分は全然浮上しない。 
最近全然、好きなアニメを見れないし、グッズだって買いに行けてない。 
それもこれも全部あの変態教師のせいなんだけど！！！

「はぁ」 

ため息ばかりがでる。 
俺ってこんな乙女だっけ？ 
眼鏡のずれを直しながら廊下を歩いていると、後ろから声をかけられた。 
どんな顔をして振り返ったのかわからないけど、酷くおびえた顔をしている女子。 
「あぁ、えっと……なに？」 
「あ、えっと、武田君。ほ、放課後話したい事があるんだけど、そ、その、時間ある、かな？」 

また─────

 文化祭が近くづくにつれて、こうして女子に呼び出されることが増えてきた。 
文化祭に彼氏、彼女と一緒に過ごすのがステータスと思っているらしい。 

そんなもの……。 
視線を女子に戻し、少し覚めた口調で「ごめん、話なら今聞くけど」と言えば「えっと……その……」と、もじもじしている女子。 
その姿にイライラしていると突然背中がゾクッとして、振り返った。 

｢えっ……｣

何でここにあの変態有栖川が？？？ 
有栖川は、黙って俺を見降ろしている。 

ん？何？
どういう事？