やばい彼氏にご注意を

2.遡る事、一年前……

2-48

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有太の視線を背中に痛いほど感じながら有栖川と教室を後にして、社会科の準備室に向かうと思ったのに、職員室に体が向いてるのは気のせいだろうか。
『何処行く気なんですか』
『ん～？ちょっと職員室寄ってからな』それだけ言って前を歩いて行く。

黙ってその後ろについて歩けば、通り過ぎる生徒の視線をやたらと感じた。
その視線はどれも前を歩いている有栖川に向けられている。
歩いてるだけで注目されるってどんだけオーラ放ってんだよこいつは。
歩いてる姿もスマートで、この男が自分の事が好きだなんて到底あり得ない。
きっとなにかの冗談なんだろうと思った。

今日のスーツは、季節にあった爽やかで涼し気なスーツだった。
例えて言うなれば夜店で売ってる着色剤たっぷりのあのジュースの色のような感じのやつ。
こんな色、絶対にこいつしか似合わないだろうって感じの色。
普通スーツってもっと落ちついた色じゃないのか？
今の季節だったら他の教師はもっとラフな格好か。
首までボタンを止めてネクタイもちゃんとしてベストもきちっと着ている。
ジャケットは流石に着てないけど、素人目でもわかるくらい、糊のきいた良いYシャツと、高級スーツには当たり前のように皺ひとつない。