やばい彼氏にご注意を

2.遡る事、一年前……

2-41

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翌日の学校では、密かに火花が散っていることに気が付いたのは昼休みになってからだった。

相変わらずの有太の密着具合と目線だけで俺の行動を封じ込める変態教師に挟まれながら生活していると、疲れしか覚えない。
授業は真面目にやってくれるからいいんだけど合間にふらふら通路を歩くから気が散って仕方ない。

『じゃ、続きを読んでもらおうかなぁ。な？相良くぅん』
有太は有栖川を睨み付けるように立ち上がり、教科書に視線を戻した。
その隙に有栖川は俺の机の上に小さく折り畳まれた紙を置いて行った。
有太は勿論周りのやつにもばれない様に─────。
それを誰にも見つからないようにスマートにやってのけるから一瞬見落としそうになる。

ふわりと香る香水に思わず気が持ってかれそうになった。
慌てて机の上に置かれたそれを手で隠しながら辺りを見回して、机の下でゆっくりと開いた。

『武田くっぅん。後で、準備室、ね？』

急いでその紙をくしゃくしゃにしてやった。
教壇に戻っている有栖川は、俺の方を見てニヤニヤと笑っていた。

(くそっ。完全に遊ばれてるじゃんか！)
悔しくなって目の前でさらに紙をくしゃくしゃにしてやった。
そんなのあいつからしたら痛くも痒くもないんだろうけどやらずにはいられない。

嫌な予感しかしない場所には絶対行かないからな！


─────と、意気込んだ決意などまったく無視された俺は、準備室に強制連行されていったのだった。

＊＊＊

『いつも悪いね、武田君』
『悪いと思ってるなら今度から別の人にして下さい』
弁当を食う前に準備室に付き合えって最悪だ。
グチグチ返事を返しながら荷物を置く場所を探した。
『あ、それ適当に置いてくれる？』
『はい。そのつもりです』
『やだなぁ。そんな畏かしこまんないでよ。取って喰ったりしないからさ？今は・・』
最後の言葉に含みを持たせながら、フワッと頭の上に手が乗った。
『……』
『たっはははは。んな可愛い反応されたら襲いたくなっちゃうなぁ』
豪快に笑う有栖川とは裏腹に俺の表情筋は完全に死んでいた。