空蝉

ひさかはる

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 場所を寝室に移す頃には口づけをも許す女になっていた。現金なものと自虐をしながらも抗えない大きな膨らみにあなたは充たされ、両の手は裸の男の背にまわり、しっかりと抱かれ続けた。

 何度果てたのか覚え切れないなか、男の根は女の陰から抜かれ一度目の放射を果たした。

 腹を越え、胸を越え、頤にまで散った男の逞しさにあなたのまなじりは妖艶になった。指で掬い上げ、口内に垂らせば濃密な男が薫り鼻孔から抜けていった。喉に引っ掛かりのある粘度に何やら愛情めいたものを感じ、胃のなかでも新しい命は生まれ得るのではないかと嗤った。

 男はあなたの脇に転がり、天井を見上げた。

 男の身体から熱が放射し始めると謝罪に向かう気配が感じられ、惨めにされることを拒むようあなたは半身で起き上がり、充分な硬さの残る根に顔を寄せ、それから頬張った。

 味わった事のない苦しみに唇は歪み、確かな悦びが心のうちにけたたましく響き渡り、あなたの腰を眩ませた。自身の指を陰へ送れば滴る艶に当てられ、酔わされ、舌が一層淫らになってゆくのを抑え切れず、一心不乱に味わった。

 両脇に男の手が挿し込まれ、口惜しくも舌は根を離し、騎乗の形にされ、男の根が女の陰を指し示した。

 じっとりとした時間を掛け、挿し込まれてゆくと、すべてを呑み込む前に女の奥に到達した。

 それでも押し込まれる根にあなたは天井を仰ぎ、派手な声を上げたと同時に達した。

 ふるえる両腿の悦びに応えるよう、あなたから小水が零れていった。

 男は気にする素振りなく、あなたを下から衝き上げ、休む間もなく二度目へと運んでいった。

 粘膜という粘膜すべてが弛み、口角からも目頭からも鼻孔からも醜態が溢れ、夜明けにはまだ早い夜のなか、茫とした白みが視界に拡がっていった。
 
 男が去ったのは朝が来る直前だった。

 玄関のドアを閉め、ひとりになり寝室に戻れば、カーテンの隙間から見計らっていた朝が片脚を射し込みベッドの汚れた水面を輝かせた。

 黄味掛かったシーツに躁ぐものを見たあなたはその上に跨り、小水を重ねながら男の根を想い、周囲に撒き散らせながら自涜に向かった。

 拡げられた陰はゆうに三本の指を呑み込み、男の再現を手伝ったが本物には敵わない快楽は慰め以上の効果はなく、淋しさのなかであなたは達した。

 インターフォンが鳴り、あなたは玄関へと駆けた。

 ドアを開くと、電気屋が含みのある笑みを両のまなじりに載せていた。

 あなたは落胆を隠そうともせず、素気なく扉を閉めた。

 二度インターフォンは鳴らされたが、あなたは意にも介さず寝室で自涜に耽った。

 電気屋が覗いているであろうレンズのことなど一向に構いはせず、汚れたシーツのうえで今夜を待ち続けた。

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