当たり前の幸せを

紅蓮の焔

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一章 泡沫の夢に

16話 『少女』

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 今日は、色々な事を話した。
 ミズキさんとの事。
 学校での事。
 色々と言ってもこの二つくらいしか話す事は無かった。
 だけど、とても楽しかった。
 今日のミズキさんとの事の話をしたらネネさんがちょっとほっぺをつねってきて、でも、少し反応が面白かった。
 テーブルにうつ伏せて「私も彼氏欲しい~!」と足をバタバタさせていて、謝ろうとしたらレイカちゃんとネネさんにほっぺをつねられてちょっと痛かった。
 学校での事を言うとレイカちゃんがネネさんに「ちゃんと勉強してないからよ~! 勉強しなさ~い!」って追いかけられたりして途中から僕も追いかけられた。と言うより捕まえられた。
 ネネさんがレイカちゃんを追いかけて、レイカちゃんが僕を捕まえてジタバタしていて、ちょっと痛かった。
 その後、三人でちょっとした勉強をしてお風呂に入ってからベッドに潜った。

 良かった……。

 今は、そう思える。
 少し前の僕は、「死にたい」とすら思っていたのに。
 昔の自分に言ってあげたい。
 我慢して。
 とても幸せな日々が待っているから。って。

 どうか明日も、明後日も、ずっと、この幸せが続きますように……。

 そう願って、そっと目を瞑った。





※※※





 また、あの真っ暗な空間に来た
 真っ暗な空間に白い立方体が浮かんでいて、そこには白いワンピースを着た膝裏までありそうなロングヘアーの少女が居る
 少女は立ち上がってゆっくりと歩いて来る
 音は立っていない
 フッ……と、突然消えた

 あれ……消え、た……? どこ、どこ……?

「ここだよ」

 ……? あれ、抱き着か、れてる……?

「うん。そう」

 ここって、どこなの? 君は? なんでこんな所に居るの?

 少女は顔を上げてその右目で見詰める「う~んとね~。ここは……どこだろ? 僕は……分かんない。なんで……? なんでだろ? 全部分かんない」

 左目、どうしたの……?

「知らない。でも、無いの」と顔を上げて、左目を開けて、見せてきた。真っ暗で、何も見えない。右目には金色の瞳がキラキラと輝いていて、まるで、ベタだけど……宝石みたいに綺麗だ。

「ねえ、お兄ちゃんは?」

 ぇっ……? 僕……?

「うん。お兄ちゃん」

 僕は…………レイ。剣崎、零。

「お兄ちゃんはレイって言うの?」

 うん。

「レイって呼んでいい?」

 ぇ……うん。別に、構わない、けど……。

「レイはなんでここに来たの?」

 ……分からない……。なんで、来たんだろう……?

「レイの左目はどうしたの?」

 …………っ? あれ? ……どうしたんだろ。分からない。

「お揃いだね。僕とレイ」

 ホントだね。

「いっぱいお話しよ。これからもずーっと!」

 ……それは、出来ない、よ。ごめんね。

「……? どうして?」

 だって、僕はやっと、幸せを見付けたから。

「し……あ、わせ……?」

 うん。とっても優しくて、僕の大切な人達。

「……うん。ぁっ……。僕、思い出したよ」

 あっ、反転し始めた。

 白色と黒色が段々と逆になっていって、また戻っていく。

「僕の名前はね──」

 戻っていく途中で灰色になって変色が止まり、スゥっと全体が白くなっていって──、

 目が覚めた。

「……あの子、リゼって……ゲームのキャラクターみたいな名前、だね……」

 夢の中で会ったあの子は、どこか見覚えのある顔で、気が付けばその子の事ばかり考えていた。
 ダメだ。
 六時三十分。
 まだ、少しなら時間がある。ネネさんは起きてるかな……?
 眼帯……は、……あれ? ……あった。
 枕の下に置いていたはずなのにいつの間にかベッドの隣に落ちている。
 ……寝相が悪かったかな……? 今までこんな事は無かったのに……。
 何がともあれ、眼帯は見付かった。
 左目を隠して深呼吸をする。
 こうした方が、なんだか落ち着いてきて、心が安らぐんだ。
 ……うん。行こう。

 レイは部屋から出ると一階に降りてリビングに向かい、ネネに「おはようございます」と頭を下げながら言うと洗面所で顔を洗う
 眼帯はしっかり外している
 眼帯は皆の前でしか着けない
 たまに外し忘れる事もない事は無い
 とにかく、眼帯を外して顔を洗うとタオルで顔を拭いて再び眼帯を着け直した

 よしっ。
 多分、もうすぐ七時だと思う。
 ここからじゃ学校まで二十分くらい掛かるから……、どれだけ遅くても八時五分までに出ないといけない。
 まだ、大丈夫。
 あっ、上からレイカちゃんの声が聞こえてきた。
 なんて言ってるんだろう……? 「寒いから布団返して!」みたいな感じの声が聞こえてくる。
 僕もそろそろリビングに戻ろう。

「ああっ! 今日だったの!?」

 上からレイカちゃんの叫ぶ声が聞こえてきて、リビングの前で立ち止まった。
 今日……? 何か……身体測定なら少し前に終わったし……。中間テストは来月だし……。

「早く食べて勉強して──」とやる事を挙げる度に指で数えていき、「うわぁぁぁああああ! レイくんどいてー!」
「ぇっ……! っ……!」

 なんとか避けれたものの、レイカは普通にカーペットを踏んで滑ってしまう
 カーペットも少しだけズレたものの、少し傾いただけでそれ以上の被害は出なかった

「ぃってて……。あっ! 早く食べて勉強しないと……!」
「レ、レイカちゃん……。今日、何かあるの……?」
「ん! ひょーひぇふほ!」と目玉焼きを乗せた食パンを口に含んだまま牛乳を飲んだ「っ。ごちそうさま!」

 多分、小テスト……だよ、ね?
 何を言っているのか少し分からなかった。
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