当たり前の幸せを

紅蓮の焔

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一章 泡沫の夢に

1話 『家族』

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「今日からここが君の家だよ」そう言ったのは『父親』のともみさん。
「ほ、本当に、ここで……?」

 僕の目の前には大きな庭にバルコニーのある白い、二階か三階はありそうな家。なんか、凄そう。

「君の事は娘から聞いたよ。いやぁ、この世にはホントにそんな人が居るんだね~。はははっ。安心したまえ。この家には娘と数人の使用人が住んでいるが安心して欲しい」
「は、はひっ!」
「面白い反応をするんだねぇ~」
「へぁ、いやっ、そのっ、チョット、きっ、きんしょ! ちがっ! き、きんちょ、緊張して!」
「大丈夫大丈夫。さて、私は仕事があるから失礼するよ」と言いながら足元のカバンを持って手を振り、「ではさらば~!」と電柱に横顔を直撃してフラフラしながら歩いて行った

「えと……。は、早く入らないと!」

 敷居を跨いで走って行く。左目に着けている眼帯を整えてから片手にカバンを持って。

「インターホンを押せば良いのかな……」
「初めまして~! ほうほう。君がレイくんだねぇ~?」
「は、はい!」
「クンクン……。おっ、ホントに変な臭いする~。ネットの情報も本物だったんだねぇ~」
「あ、の……」
「ああ、私の事聞いてない? 私はレイカ! ヨロシクね、レイくん」

 固唾を飲み込み、差し出された手を握り返して「よろしくお願いします!」と背筋を伸ばした

「にゅっふふ~。そんなに固くならなくてもいいよ~ん。ほら、部屋まで案内するからおいでおいで~」

 ガシッと手を掴んで中に引っ張って行く

「はいはいはいはい~! こっちがリビングでこっちがキッチン。あ、お風呂はこっちね。んで、二階の左側のが『コウちゃんの部屋』『ネネさんの部屋』そして右側が私の部屋にレイくんの部屋~! あ、奥の方ね」
「は、はいっ」
「あと~、コウちゃんとネネさんはお買い物に行ってて居ないけど凄い強いよ! 強盗なんて──」

 シュッと拳を一発誰も居ない方向へ向けて伸ばす
「一瞬でバラしちゃうから!」
「こ、怖い、ですね……」
「あ、でもね、コウちゃんは虫が凄い嫌いなんだよ! ネネさんは怖い映画が嫌いで~……」
「そ、そんな事、言っても良いのかな?」
「え? 良いよ良いよ! さもないとネネさんすっごい怖いし! でもでも、怖い映画を見てた時はすっごい可愛かったよ! 部屋の隅っこで鼻水垂らしながらふゎぁぁぁ……って言って泣いてたんだよ! コウちゃんの時はね~」
「う、後ろ」
「ほぇ?」

 クルリと振り返ると黒い笑みを浮かべた女性の顔が眼前に迫っていた

「レイカちゃん? 何を話しているのかしらぁ……?」

 親指で中指を押さえて指をポキッと関節を鳴らす

「ははは……」
「嬢さんっ! ホントないですよぉ! なんで虫嫌いなのバラしちゃうんスか~!」
「ま、まあ、落ち着こっ? ほら、レイくんを怖がらせちゃマズイでしょ?」
「なら先ずレイカちゃんが頑張らないといけないでしょ~?」
「ちょ! ごめん! ごめんごめん! ごめんなさい!」

 ひぎゃぁぁぁぁあああああ!! と、大きな声が辺りに響いた。レイはその隙に男の人の指示に従って自室まで案内されて部屋に荷物を降ろし始める




※※※





「ね、ねえ! レイくんも何か……って! ええっ!? うそっ! 居ない!」
「つ~か~ま~え~たっ!」

 お風呂に隠れていたレイカは案外すぐに見付かって『擽りの刑』に処された





※※※





「まあ、そんな固くならなくてもいっスよ?」
「い、いえ! か、固くなってません!」
「ん~。まあ、ここにはそこまで性欲強い人いないッスから安心しておけス」
「そ、そうですか」
「あっ、でも最近姐さんカレシ捜してたな……。あれ? それも性欲に入れて良いんスかね?」
「僕には、分かりません」
「そっスか。あ、荷物降ろすの手伝うッス」
「いえ。荷物は少ないので。あ、終わりました」

 階下から悲鳴が聞こえてきた。同時にインターホンも。誰だろ。

「誰か来たッスね。まあ、不良程度なら姐さんが瞬殺ッスよ」

 軽く微笑んでから外に出て行った。けど、目付きが悪いから、かな? 物凄く、怖かった。





※※※





「はいは~いっと。おっ、ミッちゃんスか」
「はいです。レイくんとレイカちゃん居るです?」
「あぁ、はいはい。居るッスよ。レイくんが二階の嬢さんの隣ッス。嬢さんは姐さんに……まあいつものッス」
「分かったです。なら、レイくんの部屋に来るように言って欲しいです」
「分かったッス」

 ミズキが中に入ると同時にドアを閉めてリビングの方へ向かった。ミズキは靴を脱いで階段を上がってレイの部屋へ向かう

「レイくん。居るです?」
「ミっ、ミズキさん!」

 ドタっと部屋の中で一度だけこけた音がしてからドアが開いた

「大丈夫です?」
「う、うん! ここの人達もとても優しくて! あ、ごめんなさい」と少し申し訳無さそうに「ど、どうぞ中へ!」とドアを開ける

「じゃあ、お邪魔するです」

 固唾を飲んで顔を火照らせながらドアを閉める

 まだ荷物を降ろしたばかりだし少しダンボールも残ってる。中身は無いけど。それでも、恥ずかしい。
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