当たり前の幸せを

紅蓮の焔

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fall days:『一意専心』

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[まえがき]
 そして出ました第三弾!
 今回は色んなIFストーリー書きました!
 一つ一つの話自体は、今回は短いはずです。
 キャラは三章までのキャラが出ます。いつも通り本編とは関係ありません。
 ちなみに、秋は『fall』と『autumn』の二つがありますが、作者は前者が好きなので選びました。由来としては、木の葉が枯れて落ちるかららしいです。はい、興味ないですよね。
 さて、それでは今回も滅茶苦茶で頭おかしいんじゃねーのかって鼻で笑っちゃうくらいのやつなので、楽しめる人はお楽しみください。楽しめない人はたぶん読まない方が良いです。





番外編1……『もしもレイカちゃんがネコだったら』

 にゃぁぁ~。

 ソファの上で丸くなった子猫の女の子がいた。彼女の名前はレイカ。生後約三ヶ月である。
 彼女は近頃、楽しみにしている事があった。

「ただいま~」

 ぴこっ、とネコミミが立った。

「今日も疲れたよ~」

 ぴこぴこっ。

「あー、疲れて動けないー」

 ぴょこんと顔を上げ、ソファから下りて、玄関の方へと歩いて行く。
 そこにはスーツを着た女性が座っていて──、

「あっ、レイカちゃん」

 近くに寄って行くと持ち上げられて、ほっぺたをすりすりとされる。
 それがどこかほっとして、うな~、と声が出てしまう。

「うん、今日も頑張るよ~」

 えへへー、と楽しげに笑う女性にほっぺたをすりすりされながら、レイカはやはり、うな~、と鳴く。

 だって、気持ちがいいから。





番外編2……『もしも朝起きると男女が逆転してしまったら』

 レイくんの場合

「おはよー」

「あっ、おは──あれ? レイくん、なんだかいつもより女の子っぽいよーな……ぽくないよーな……?」

「……え? そ、そう?」

 結果、困った顔をして笑う。


 レイカちゃんの場合

「うおおおおおおおお! レイくんレイくん! 起きて! ヤバいよヤバいよ!」

「えっ? えっ? 何? どうしたの?」

「ヤバいの生えちゃったよ!」

「えっ? えっ……?」

 結果、なんかテンション高くなる&寝起きのレイを困らせまくる。


 ネネさんの場合

「ハッ……! 胸が……無いっ!?」

 結果、鏡の前で大きな誇りが消えた事に落ち込んで布団に篭もる。


 コオロギの場合

「ネネさんおはよーッス」

「あんた誰よ」

 結果、見事に女になり三人から鋭い視線を受け、別人扱いされる。


 二弥ちゃんの場合

「おとーさん……」

「ん? どうしたんだい、二弥?」

「その……えと……うぅぅ……」

 結果、恥ずかし過ぎて人前に出られなくなる。





番外編3……『レイくんにラブコメ主人公の補正がかかるとこうなる』

 朝、チャイムが鳴った。

「レイくーん! 学校に行くでーす!」

「あ、うん! ちょっと待って!」

 靴紐を結んで、口にバターを塗った食パンを咥えて家の外に出ると、突然躓いて頭から倒れていき──

「やんっ♪」

 目の前の少女──ミズキの胸へと顔が埋められる。

「ああああああっ! レイくん! にゃにゃにゃ、にゃにしてりゅの!?」

 玄関で制服に着替えたレイカがにゃわわわわ、と顔を赤く染めて両手で顔を覆いながらもちらちらと指の隙間から覗いている。

「ままま、待って! 誤解だよ!」

「うふフフフ……。レイくんは私と、朝からお外でいちゃいちゃしたいんですっ♪」

「レれれ、レイくんんんん!?」

「ちち、違うよ! たまたま転んだだけで何もしてないよ……!」

 必死で弁明しても聞き入れてもらえず、登下校はレイカがレイと手を繋いで帰ることになった。





番外編4……『二弥ちゃんがヤンキーになりそこねたら』

「ちょ、ちょべ、べべべ……!」

 キラキラとしたピンク色のキャミソールとミニデニムスカートに身を包んだ二弥がピースサインをほっぺたに付けて、顔を真っ赤にしていた。

「ん? どしたのにやちゃん。そんな派手な格好して」

「おおお、おねーちゃんがっ……!」

「にゃははー。たしかにグレるならハデハデにしたらって言ったけど」

「うぅ……。やっぱり、恥ずかしいよぉ、おねーちゃん……」

 泣きそうになりながら短いスカートを下に引っ張ってどうにか脚を隠そうとしているけれど、中々隠れない。

「よしっ! じゃあここで着替えちゃおう!」

「レイカちゃん!?」

「おねーちゃん!?」

 同時に突っ込んだレイと二弥に、にゃはっ、と笑顔を弾けさせながら宥めるように手を振る。

「もー、レイくんもにやちゃんも大げさだなぁ、そんなに顔真っ赤にしなくても良いのにぃ。にゃふふふー」

「──おねーちゃん、言っていい冗談と悪い冗談があるよ……?」

 瞬間、陰を落とす二弥の瞳の奥に赤い『何か』が揺らめいた。

 その圧力に、レイカはガタガタと歯を鳴らし、たらたらと脂汗を流したのだった。





番外編5……『目が覚めると……』

 目が覚めると、レイとレイカの体が入れ替わっていた!

「ななな……! レイくんの体!?」

 昨日の夜、レイカがレイのベッドに潜り込んで寝たのが原因なのか、互いにベッドの上で正座しながら互いの体を確認するように見つめていた。

「え? えっ? なんで……?」

 レイカの手を見つめていたレイは、あわあわと前に座る自分の体と、今の自分の手を何度も何度も見返す。
 そんなレイの肩に、レイカはぽんっ、と手を置いた。顔を上げると、そこには何か達観した様子のレイカ──もとい、レイの顔があり、

「レイくん、こーゆー時は、深く考えちゃいけない」

 優しく、諭すようにそう告げた。
 その表情にレイは「レイカちゃん……」と不安に苛まれつつもなんとか平静を保つことができた。しかし、突然、肩を持つレイカが操るレイの手が震え始め、レイは眉をひそめた。
 レイカの方を見れば、彼女は俯いている。

「……」

「どど、どうしたの? やっぱり、嫌だよね……ごめんね」

「ぜ……」

「ぜ?」

 ──瞬間、レイカは顔を弾くように上げてベッドの上を飛び跳ねて立ち上がった。

「全力で楽しまなくっちゃーっ! にゃほほーい! ネネさーん! おっぱい揉ませてーっ!」

「わあああああ──っ! 待って待って待ってぇっ!?」

 全力の泣き声だった。





番外編6……『人類最後の二人』

 全世界がいきなり海の底に沈んだ。

「……なんだよこれぇっ!」

「コーイチくん、お魚釣れた?」

 イカダの上で二人、背を預けながらぷかぷかと海の上を浮かび、レイとコーイチは海に釣り糸を垂らしていた。

「こんなのやってられっか! あー! 米食いてえ! 肉もっ!」

「仕方ないよ。無い物を言ってもボクにはどうにもできないんだから」

「くっそぉぉぉぉ! せめてレイじゃなく女子だったら──可愛い女子なら!」

 ジタバタと暴れさせる足がイカダを揺らし、ギィ、ギィ、と波が跳ねるのと同時に軋む。

「……そんな考えじゃ、女の子が可哀想だよ」

「うっせ! うっせーよ! だってそーだろ!? 女の子と一緒ならさ、子供作って、その子供がまた社会を作る。そうすりゃ世界も安泰いつか肉も食える! 万々歳だろーが!」

「──その場合、食べられるお肉って……?」

「あ? そりゃあ──」答えようとして、コーイチは即座に釣り竿を手にレイに背を向けた「よし、魚釣るか」

「えっ? 話の続きは──」

「良いから釣れよ! 晩飯なくなるだろ!」

「ははは、はいっ!?」

 その日の魚は、大量だった。コーイチは貪るようにそれを食らい尽くし、すぐに爆睡した。レイはそれを苦笑して眺めている事しか出来なかった。





番外編7……『ミズキさんが魔王になった世界』

「フフフフフフフフフ……。世界を侵略するです!」

 真っ黒なマントに身を包んで、ミズキはモンスターの大群を操る。
 世界は刻一刻と魔王ミズキに支配されていく。かに思われたが。

 ──そこへ一人の勇者、レイカと、その従者レイがやって来た。

「魔王! 私こそが伝説の勇者! 無敵の戦士! めちゃくちゃ強いレイカ様だァァああああ! にゃーはっはっはーっ!」

 腰に手を当てて高笑いする勇者を見つめ、魔王は生温かい目線とふっ、と渇いた笑いが込み上げてくるのが収まらなかった。

「レイカちゃん……! 魔王さん、きょとんとしてるよ……! すごい驚いてるよ……!」

 見当違いの意見に申し出ようと魔王がそちらへ向いた瞬間──、

「きゅんっ」

 ハートの矢に心臓を射抜かれ、その場に倒れ伏した。

 二人はそれを呆然と眺め、やがて、レイカは剣の先っぽでつんつんと倒れた魔王を突いてみた。しかし、反応は無い。それどころか、顔の辺りから血が床に広がっていく始末。

 その結果を見届け、レイカは剣を高く掲げ上げた。

「私達の勝利!」

 いえーいっ、とピースしながら帰って行く勇者達の後ろで、倒れ伏している魔王は、笑っていた。

「ふへへ……。かわ、いい……」

 人生を投げ打った初恋であった。
 その年、魔王軍は世界を支配した。しかし、生活はこれまでと全く変わらなかった。
 変わったことと言えば、モンスター相手の商売には10%OFFの値段でする事になったくらいだった。若干物価が上がった。





番外編8……『皆がちっちゃく!』

「な、なんて事だ……!」

 レイカは朝起きて、リビングに下りてきた。そこで、不思議な夢を見たのだ。

「皆が、ちっちゃくなってるぅぅうっ!?」

「こらっ、レイカちゃん。朝から大っきな声、出しちゃメッ!」

 そう、キッチンの方からとてとてと走って来て、レイカの太ももをぽかぽか叩きながら言って来た。

「なんか、ネネさんが可愛くなってる……!」

「レイカちゃん、だいじょーぶ……?」

 それを心配した様子で見上げてくるレイに、レイカはにゃわー!と黄色い悲鳴を上げる。

「レ、レイくんから不思議な雰囲気が消えて、可愛さだけが漂ってくる──! 可愛すぎて眩しっ! ぎゅってしたい!」

「いえーい! ゲームぅ! いえーい!」

 そこへソファの方から聞こえてくる声にレイカは途端に落ち込んだような顔になる。

「……コウくんはいつもよりバカになっちゃった」

「レイくーん! 結婚するでしゅー!」

「ミズキしゃん!?」

「ミッちゃんは変わんないなぁ……。てか変わんな過ぎて、驚いたよ」

 これからどうしよ。とレイカはぼんやり考えた。目の前で可愛く動き回る三人を見つめ、レイカは一つの決心をする。

「考えるのやめよう!」

 次の瞬間、小さくなった三人に飛び付いた。





番外編9……『わんちゃんと二弥ちゃん』

 二弥はうぅぅ……、と唸り声を上げていた。

 ぴょこっと飛び出した猫耳がぴこぴこと動いている。
 スカートの中から出る尻尾が逆立ち、四つん這いになって威嚇の体勢に入った。

 眼前には、犬がいる。
 犬の方も二弥を警戒していて、グルるるるる、と唸っている。

 それは、ある日の公園での事だった。
 散歩中の犬がぴくっ、と立ち止まり、二弥に反応したのだ。二弥は二弥で、犬に睨まれ、睨み返すと唸られ、唸り返した。そして結局、こうなってしまった。

 犬の飼い主だった女性と、たまたまそこに居合わせたレイは困った顔でそれを見守っていた。

 女性は、突然唸り始めた犬を宥めようとしているが成功していない。レイは二弥を宥めようと、二弥に近寄って行くが──。
 その途中で重大な事に気が付き、その足を早めた。

「二弥ちゃん!」

「うぅぅぅ……っ!」

「二弥ちゃんってば!」

 がしっとその肩を掴むと、二弥ははっとして、レイを見上げた。

「おにい、ちゃん……?」

「早く立って!」

「え?」

「見えちゃってるよ!」

 二弥は少し考えた。それから、すぐに耳まで赤くしてあわあわと慌て始める。レイの顔が見れなくなる。尻尾は逆だったままだ。けれど、すぐに立ち上がった。顔を両手で隠して、全速力で駆け出した。





番外編10……『チート能力を手に入れちゃったらこうなる』

 レイくんの場合

「ボクが、皆を守る──ッ!」

 ガキィン!と高い音が響いて、全ての衝撃と物質を塞き止める障壁を張った。
 そこにぶつかったのは、大質量のトラック。守ったのはレイカ。

「すごっ! やばっ! かっこいーっ!」

 きらきらと目を光らせるレイカに笑って見せ、トラックを避けたレイカを見て、障壁を解除する。次の瞬間に、レイは血を吐きながら高速スピンして空の彼方へと飛んで行った。

「レイくぅぅぅぅんっ!」

 キラーン、と、昼の空に星が光った。レイが笑ったような気がした。


 レイカちゃんの場合

 朝、レイカは寝坊して慌てて着替え終わり、速攻で家の外へ出た。

「ぎゃー! 遅刻するー!」

 しかし、レイカには奥の手がある。それは──、

「とうっ!」

 レイカは物凄い勢いで空へと舞い上がり、自分の家の屋根へと着地する。
 そして全速力で屋根の上を駆ける事数秒──学校へと無事到着した。

「ふぃー、間に合ったぁぁぁ……」

 チート能力『超強力な身体能力』は、こんな使われ方しかしなかった。
 あとは、ポテチの袋を綺麗に開けるくらい。


 コーイチくんの場合

「おらぁ! 喰らいやがれ! 雷落とし!」

「ぐああああああ!」

「フッ、お前もやるが、俺の方がもっと強えんだよ」

 コーイチはなんだかんだ技の名前を言ったり派手な演出したりしてカッコつける。


 ネネさんの場合

「くっ……! 朝ごはん作ったは良いけど、朝を楽しむ時間が無いわ……! でも、こういう時こそ! 時よ止まれ!」

 カチッと音を立てて、周囲の景色が色褪せる。自分以外がモノクロになったのを確認して、ネネはるんるん気分で自分の部屋へと向かって行く。自分の部屋にはマンガがたくさん置かれている。

「よしっ! マンガを読みましょ! まだ読み終わってないのもあるし!」

 ※時間を止める作業は一日に約三回、朝とお昼と夜中に使っています。
 それぞれ、朝の時間が欲しい、レイカちゃんが帰ってくるまでに昼寝してマンガ読んでたい、夜寝れない、などの理由で使っている模様。けっこう便利な時間を止める能力。止められる時間は自分の任意で、意識が無くとも一度かければ働いたままなのでとても便利。時間に余裕のない現代人には物凄く優しい能力。こんな能力欲しい。





番外編11……『もふもふ』

 朝目覚めるとレイがもふみ化していた!

 もふみ化とは、全身がもふもふに覆われて顔の大きさくらいのぬいぐるみみたくかわいくなる、ちょっとした症状のことだ!
※数時間~二日程度で元に戻ります。

「な、なんだってぇっ!?」

「も、もふもふ……!」

「もきゅ~……!」
 ↑
もふみ化で上手く発声できない。

「ヤバい、レイくんげきかわぁぁ!」

「ペットみたいね……!」

 レイカとネネにぎゅっと抱き着かれ、レイは悲鳴を上げる。

 もきゅ、もきゅ、もきゅ。

 上手く声を出せず、レイはかわいい悲鳴を上げることしかできず、その日中、レイはとても可愛がられた。





番外編12……『アリスインワンダーランド・トゥ・エキセントリック』

 不思議の国に迷い込んでしまったアリス──もとい水色のフリルドレスに身を包んだレイカ。レイカは兎を追いかけ、穴にすってんころりん、落ちてしまったのだ。

「にゃわぁぁぁ……」

 感嘆の呟きが洩れて、レイカは何度も目を瞬く。目を擦る。そして、ほっぺたをつねる。

「……夢じゃにゃい」

 赤く腫れたほっぺたを擦りながら、レイカは辺りを見渡した。
 広間にいた。見える範囲では、ちっちゃい扉と、何故か手に持っていた金の鍵。あと、立派なテーブル。

 レイカは再び辺りを見渡す。そして、思い至る。

「──これは、夢だっ!」

 レイカは早速、扉に金の鍵を差し込み、しかし、扉が小さ過ぎて通れない事を知る。
 どこかデジャヴを感じたレイカは首を傾けて腕を組むが、答えは出ない。

「──あっ」

 ピンッ、と電球が閃き、爆発した。

「アリスだ!」

 くるりと振り返り、早速ケーキを探す。あった。テーブルの上。小瓶も一緒に。レイカは小瓶を壁に投げつけ、パリンと割れて中身が壁にぶちまけられたのを見届けた後にケーキを食べるためにフォークを探し──

「あった!」

 ケーキの前に置かれたフォークを使い、早速ケーキを食べ始める。

 ──後に、不思議の国では『進撃の少女』と言うタイトルで伝承として語り継がれた。

 ちなみにレイカは、この後すぐに目を覚まし、朝っぱらからレイにその話を聞かせようと叩き起こしに部屋を飛び出した。





番外編13……『怖い話』

 レイカはレイとネネにリビングにて怖い話を聞かせようとしていた。

 外ではゴロゴロピシャぁっ!と雷が鳴ったり、ざーざーと強い雨が振り続けていたり、挙句の果てには風がびしばしガラス戸を叩く。そんな日の夜、電気を消して暗くしたリビングにて、レイカは話し始める。

 ──そう、それは、こんな日の夜中の話だった。

 そんな語りから、レイカは話へと入り込ませる。
 ピシャぁっ、と雷が鳴った。

 ──その日、レイカは外がうるさくて中々寝付けなかった。

 起き上がって、トイレに行ったその時──!

「トイレの中で、ミッちゃんがレイくんの抱き枕を抱えて、『はぁ……はぁ……っ』ってしてたの……!」

 ネネは頭を抱え、レイカに尻を向けてガタガタと震えてしまう。が、当のレイは頬を両手で隠し、恥じらいをその顔に浮かべてハートマークを辺りにふよふよと漂わせる。

「あれ? レイくん怖くなかったの?」

「ミズキさんは、そこまで僕の事を……ぶふっ!」

「あー! レイくんが鼻血を……!?」

 と叫んだ所で、頭を背後から掴まれ、瞳から生気が失われてしまう。
 レイカの背後に立つ彼女はギラリと魍魎のように凶悪な笑みを浮かべて、耳元で囁いた。

「レイカちゃん、それをどこで知ったか、詳しく話してもらうです」

 その後、連れ去られた少女の悲鳴と思しきものが雨に掻き消され、溶けていった。





番外編14……『精神不安定レイくん』

「ふふふフフ……。レイカちゃん……」

「まずいっ!? 精神不安定レイくんが出て来たぁっ!」

 ソファでレイカに抱き着きながら頭を撫でて「ふふふフフ……」と笑うレイに、レイカはにゃわぁと溶けていく。絶大なる包容力と愛情の応用『撫で力』の高さによりなせる技の一つだ。

「気持ちいい~……」

「レイカちゃん、かわいいね」

「にゃわっ!?」カチン、と石化してしまった。

「食べちゃいたいくらい」

 瞬間、レイカの石化は崩れるように解除され、代わりにガタガタと震えが止まらなかった。レイの顔を見た瞬間、レイカは刮目する。

 レイが自分の膝の上にレイカの頭を乗せたのだ。

「にゃばばばばばばばばばば──っ!?」

「よしよーし。レイカちゃん、嗚呼、レイカちゃん。本当に、かわいいなぁ……」

 次の瞬間、レイカは耳まで赤くしてぷすぷすと頭がショートする。

 レイカはKOされ、レイが元に戻るまで『撫で力』の大いなる力の前に、ただただ無力と成り果てるのだった……。





番外編15……『最強幼女決定戦』

 アイカちゃん、二弥ちゃん、リゼちゃん、ナツミちゃん、ナツメちゃん、アオイちゃん、黒い衣を纏った名も無き女の子、ついでにメィリル(ろおざ)。三章までに出て来た幼女達の、最強決定戦が開かれた。

 ※二弥ちゃんは三章
  リゼちゃんは一章
  その他皆二章で出て来たよっ!

「なんで私が司会側なの!?」

「レイカちゃんはもう中学生だから、じゃないかな……? これ、一応、『見た目が小学生くらいの女の子』対象だから……」

「レミちゃん? どうして私がこっち側なのかしら……?」

 金色に輝く髪が宙を漂い始め、それらが刃となりレイに迫り来る。
 しかし、それを横から炎の壁で庇う幼女──二弥が立ち塞がった。

「あら、何かしらあなたは」

「お兄ちゃんに、危ない事しないで……!」

「ナツメ!」とナツミ。

「お姉ちゃん……?」ナツメ。

「カエデたまどこー?」アオイ。

「レイ以外の人と会うの初めてだなー」リゼ。

「……」名も無き少女。

「こ、ここ、どこ……?」アイカ。

「ナツメー!」

「お姉ちゃーん!」

 ぎゅっと抱き合う二人を見つけて、アオイが「あー! あのときのー!」と指差して叫ぶ。

「え? あの子誰……?」

「あ、お姉ちゃん。この子は、たしかあの山で──」

「あのおくつのどーやったのー!?」と走って来るアオイからナツミの手を引いて逃げた。

「来ないで!?」

「やだー! おちえてー!」

「な、なんで逃げるの!?」

「ふふふ……。レミちゃんの前にどうやらあなたがやられたいようね……」

「お兄ちゃんとお姉ちゃんは絶対に守る……!」

「やれるものならやってみなさい……!」

「な、何、怖い……」

「世の中の女の子ってこんなにも元気なんだ」

「……」

 司会側では、この状況を説明する解説役のミズキが不在のため、この状況を的確に説明できる者がいなかった。レイはひやひやとナツミ達や二弥達、アイカへ向ける視線を行ったり来たりして、慌てふためき、レイカに至ってはその場で眠る始末。

 結果として、優勝者は二弥だった。

 勝因としては、火が熱そうだったから降参した、と語る幼女の群れが大半を成したせいだ。メィリルは炎に焼かれ、髪がショートヘアとなり戦線離脱。

 こうして、第一回最強幼女決定戦は幕を閉じた。

 なお、今大会の優勝者には『最強幼女』の称号が贈られた。





番外編16……『達する……ッ!』

「…………」

「ん、二弥ちゃん、どうしたんだろ?」

 レイは黙り込んで座っている二弥を見つけて首を傾げた。そこへサッとレイカが現れて真剣な様子で説明を始める。

「アレはね、レイくん。頭の中で戦ってるんだよ」

「え? 戦い……?」

 余計に頭に疑問符を浮かべたレイに、まるで諭すような口振りで、優しく説明する。

「そうなの。二弥ちゃんは自分の煩悩と戦ってるんだよ……っ! 今見せるね!」

 レイカが二弥に手を伸ばし、翳すと、二弥の前にもやもやとした煙が姿を現した。その煙に少し仰け反るような形で驚いたレイは何度も瞬きを繰り返してレイカを見つめる。

「レ、レイカちゃん……? いつの間に……?」

「ほらっ! アレが二弥ちゃんの煩悩だよ!」

 ──自主規制中。

「うわあああああアアアッッっッ!?」

「くっ、なんて凄い煩悩なんだ!? まるで天国のようじゃないか!」

 その煩悩の姿を見たレイは部屋の端まで即座に逃げ延びて頭を抱えてガタガタと歯を震わせた。縮こまるその様子は、怯えるどころか、まるで恐怖を超えた何かのようであった。

「コワイ、ボンノウコワイ……」

「……ふぅ」

 二弥が目を開けると、背後に気配を感じて振り返った。

「あ、お姉ちゃん」

「にやちゃんも罪な子だねえ? あんな煩悩を持ってるなんて」

「えっ!? ──な、なんの事かなあ……?」

 口笛を吹きながら目を背けると、背けた先にレイを見つけて立ち上がった。

「ね、ねえねえお兄ちゃ──」

「ヒィぃいいィいぃぃィイイイッッっッ!!」

 恐怖するレイの姿に、二弥はただただ心が傷つけられて目がみるみるうちに死んでいった。





番外編17……『ミラクル☆ときめき! 輝け腐れ! 魔法少女レイカちゃん!』

 私の名前は石田レイカ! 年齢はヒミツで、血液型はB型で、あとは……ちょっと皆には言えない秘密があるんだけど……。ま、とにかく今は絶賛遅刻寸前なんだっ☆ てへっ♪

「ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイやばぁぁぁあああああい!」

 でも、こんな時間じゃ道路は混んでて大変大変。──だったら、誰もいない屋根を走れば良いじゃん! って事で、今は屋根を自称時速二百キロで走ってるところ!

 とかなんとか言ってる内にもうすぐ学校が見えてきたよ!

「あと──五秒ぉぉぉッッッ!?」

 もうこれは自称時速二百キロ一センチで走るしか……!

「グオオオオオオ!」

 うるっさ! ウソ、怪獣が出ちゃった!
 道路交通法無視してる! そんな悪い子は──

「魔法少女レイカちゃんが、お仕置きだああああ!」

 時間が無いから走りながらカバンの中からステッキを取り出して「へーんしーん!」って変身! これが私のヒミツの一つ! 私は町の平和を悪の組織『なんたらかんたらBBQ』から守ってるんだ!

 しかもなんか五十キロくらい離れてたから自称時速二百キロで向かって行ってステッキを振りかざしてぶん殴って頭潰して学校行った!

「あと四秒!」

 教室に空いてた窓から飛び込んで到着!

「セーフっ!」

 おでこの汗を拭いた所でチャイムが鳴って一息ついて、さあ自分の席に──

「ここ、三年の教室じゃんッ!」

 びゅん、て教室戻って何事も無かったかのように席に座りました!
 おしまい!

「あれ、石田さんなんか……臭くない?」

「てかその格好……」

「あ、ちょ! 臭いヤバくなってき──!」

「ヤババババババババババ!?」

「ぶくぶくぶくぶく……」

「こ、れは……死ぬ……(チーン)」

 なんでかクラスの皆が倒れたけど気にせず私も倒れることにします!

「マジ、草ァ……」

 ああ、目が回ってきた。
 これが、私の二つ目のヒミツ……魔法少女になると、激臭を放つ……。

「ぐふッ……」

 かくして、クラスに臭いテロが起こった。





[あとがき]
 今回もたぶん頭湧いてるんじゃ、って感じの多かったんじゃないでしょうか。
 精度は上がった……気がする!
 まあ今回も一万字近かったけれども、いつもよりは短いものを数撃った感じ、かな?

 最後の『魔法少女レイカちゃん』は、ちょっと前回説明不足過ぎたかなぁ、と思い、続編作りました。何気にレイカちゃん書くの楽しい。
 ちなみに悪の組織のフルネームは『なんちゃってたらこ缶詰大好きなたらちゃんの事を愛でたいTHEブレイクバッドクエイク』です。略して『なんたらかんたらBBQ』です。
 悪の組織の幹部の趣味とこだわりを、口と拳で話し合い作られた名前です。
 この名前には組織員の血と汗と涙とゲロが混じっています。悪の組織の話もまたいつか書くつもりです。

 そして、二弥ちゃんの妄想したものはR-15~R-18くらいのやばいものでした。レイくんと✕✕✕とかして隠さなきゃいけないレベルの妄想してました。その辺りは、読者の方々のご想像にお任せいたします。

 最強幼女決定戦は、ほとんど作者の贔屓です。確かに二弥ちゃん強いですが、最強では無いです。もっと強い奴があの中にいます。

 今回も楽しんでいただけたら幸いです。それじゃあまた本編で!
 次回のIFシリーズは、作品が終わってなかったら出ます。──たぶん出ます。

 それじゃあ本編もお楽しみにね!
 バイバーイ!
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