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18章 その手の温もりは何処(いずこ)へ
308話 朝日の雫
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終わった
終わってしまった
その筈だ
白髪の女性の身体からはもう煙は出ていない。溶け始めている。少年も居ない。残りは一人だけ。その少女も惨敗した。もう誰もいない
敗けたのだ。敗北した。惨敗だ
全てが、終わってしまったのだ
その筈だった──
少年が目を開いた。髪に絡まっていた土の破片が落ちていく
黒い髪が段々と外側から金色へと戻っていく
『無』
まさにそうだ。彼の表情は無。瞳に宿る炎は無し。音も立て無い。立てる音すら無くなってしまったのだ
無音
近付いて行く。気付かれていない。胸を一突きした。無精髭の生えた男の胸を、穿った
初めて音が生まれた。血の滴る音だ
「ごゎふッ!」
胸から煙が出る。シュゥゥゥウウウウウ。と音を立てて
「て、テメェ……ッ!」
男が振り返ると同時に少年は胸から手を抜いてしまう。少年を睨み付け、蹴り付けた
べギャッ
骨の砕ける音が鳴る。既に下には人が多く集まっている。少年は無のまま、涙を流して戦った。表情は無い。ただ、涙を流している。右腕が可笑しな方向へと曲がり、紫色に変色している
「クゥゥゥウウウウウウソォォォォォオオオオオガァァァアアアアアキィィィィィイイイイイイ!!」
そう叫んで少年の顔面を殴り付ける。吹っ飛ぶ。物凄い勢いで飛んでいく。男が追い打ちを掛けるようにして少年を再び殴り、加速する。更に速度が速まった。空は、少し明るくなり始めている
そして堅牢な建物を破壊してその中へと入ってしまった
崩れていく。崩壊していく。地面を蹴り、少年に更に追い打ちを掛けようと男がその建物へ入り込み、瓦礫に腕を潰された少年の横腹に蹴りを入れて吹っ飛ばす。建物が崩壊していく。腕が取れる
「はぁっ……はぁっ……くっ……!」
脚首を掴む少年。感情はもう宿っていない。本能で動いているかのように掴んだまま離さない
べギッ
「ぐゎああああ!」
脚首を潰され尻餅を着く。男の脚からは煙が出ていない。胸の穴は既に埋まっている
その片手を駆使し、なんとか立ち上がった少年は最期に感情を見せ、床を蹴って男の上に乗って手を振り上げた
そして、男の、アワィラの喉を手刀で突き刺し、終わった。全てが終わった──
闇が晴れ、日光が射し込み始める
夜明けだ
綺麗な、綺麗な朝日
立ち上がり、朝日を眺める
綺麗な雫が頬を伝った。紅く濁った、綺麗な無色の雫が
少年が作った穴は堅牢な建物を崩してしまった。時期にここは崩壊する
朝日を見詰めながら少年は前に倒れる。建物から地面に落ちていく
頭が地面に向き、手が、足が風に弄ばれる。今、この瞬間に少年は散るのだ
グチャ……!
紅い、紅い笑顔。片目の潰れてしまった瞳には感情が無い。虚無の笑顔。既に、音は出ていない。どこからも、出ていなかった
終わる間際、少年は夢を見た
楽しく嬉しい、しかし同時に、悲しい夢でもあった
少女と、お話しする夢だ
謝罪から始まり、告白に終わった
その声は届く前に掻き消え、何もかもが無に帰す。それでも、少年の心は変わらない。絶望の中であっても何も変わらない。苦しみが続くとしても変わらない
何故なら、それが少年だから。これまでの経験も、感情も、考えも、失った記憶も、魂も、その全てが少年であるのだから──
「……感謝、しないでもないですね。アナタの目的、私が遂行してさしあげます。サヨウナラ……そして、ありがとう……」
既に血塗れで潰れた少年の頬にそっと触れ、唇を付けた。傷だらけの少女は少年から服を取った。血に濡れた紅いパジャマを。紅い兎のパジャマを
終わってしまった
その筈だ
白髪の女性の身体からはもう煙は出ていない。溶け始めている。少年も居ない。残りは一人だけ。その少女も惨敗した。もう誰もいない
敗けたのだ。敗北した。惨敗だ
全てが、終わってしまったのだ
その筈だった──
少年が目を開いた。髪に絡まっていた土の破片が落ちていく
黒い髪が段々と外側から金色へと戻っていく
『無』
まさにそうだ。彼の表情は無。瞳に宿る炎は無し。音も立て無い。立てる音すら無くなってしまったのだ
無音
近付いて行く。気付かれていない。胸を一突きした。無精髭の生えた男の胸を、穿った
初めて音が生まれた。血の滴る音だ
「ごゎふッ!」
胸から煙が出る。シュゥゥゥウウウウウ。と音を立てて
「て、テメェ……ッ!」
男が振り返ると同時に少年は胸から手を抜いてしまう。少年を睨み付け、蹴り付けた
べギャッ
骨の砕ける音が鳴る。既に下には人が多く集まっている。少年は無のまま、涙を流して戦った。表情は無い。ただ、涙を流している。右腕が可笑しな方向へと曲がり、紫色に変色している
「クゥゥゥウウウウウウソォォォォォオオオオオガァァァアアアアアキィィィィィイイイイイイ!!」
そう叫んで少年の顔面を殴り付ける。吹っ飛ぶ。物凄い勢いで飛んでいく。男が追い打ちを掛けるようにして少年を再び殴り、加速する。更に速度が速まった。空は、少し明るくなり始めている
そして堅牢な建物を破壊してその中へと入ってしまった
崩れていく。崩壊していく。地面を蹴り、少年に更に追い打ちを掛けようと男がその建物へ入り込み、瓦礫に腕を潰された少年の横腹に蹴りを入れて吹っ飛ばす。建物が崩壊していく。腕が取れる
「はぁっ……はぁっ……くっ……!」
脚首を掴む少年。感情はもう宿っていない。本能で動いているかのように掴んだまま離さない
べギッ
「ぐゎああああ!」
脚首を潰され尻餅を着く。男の脚からは煙が出ていない。胸の穴は既に埋まっている
その片手を駆使し、なんとか立ち上がった少年は最期に感情を見せ、床を蹴って男の上に乗って手を振り上げた
そして、男の、アワィラの喉を手刀で突き刺し、終わった。全てが終わった──
闇が晴れ、日光が射し込み始める
夜明けだ
綺麗な、綺麗な朝日
立ち上がり、朝日を眺める
綺麗な雫が頬を伝った。紅く濁った、綺麗な無色の雫が
少年が作った穴は堅牢な建物を崩してしまった。時期にここは崩壊する
朝日を見詰めながら少年は前に倒れる。建物から地面に落ちていく
頭が地面に向き、手が、足が風に弄ばれる。今、この瞬間に少年は散るのだ
グチャ……!
紅い、紅い笑顔。片目の潰れてしまった瞳には感情が無い。虚無の笑顔。既に、音は出ていない。どこからも、出ていなかった
終わる間際、少年は夢を見た
楽しく嬉しい、しかし同時に、悲しい夢でもあった
少女と、お話しする夢だ
謝罪から始まり、告白に終わった
その声は届く前に掻き消え、何もかもが無に帰す。それでも、少年の心は変わらない。絶望の中であっても何も変わらない。苦しみが続くとしても変わらない
何故なら、それが少年だから。これまでの経験も、感情も、考えも、失った記憶も、魂も、その全てが少年であるのだから──
「……感謝、しないでもないですね。アナタの目的、私が遂行してさしあげます。サヨウナラ……そして、ありがとう……」
既に血塗れで潰れた少年の頬にそっと触れ、唇を付けた。傷だらけの少女は少年から服を取った。血に濡れた紅いパジャマを。紅い兎のパジャマを
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