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18章 その手の温もりは何処(いずこ)へ
307話 もう、敗けたくない
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そっと、目を開いた
レンゼの瞳に一人の少女が映る
「アリ……サ……」
ポタリ。と雫が落ちた。紅く滲んだ雫が
「起きた?」
「ああ……。ごめん、俺……」
「いいの。アナタの何があっても自分を曲げない。そんな所が好きだったから……」
蒼い空、薄い雲、花の咲く草原で膝枕をされている。そんな感触に目を閉じて
「俺、アリサの事が──」
と、目を開けた時には暗い部屋に寝転がっていた。瞳には少女が映る。アリサではなく、ソラが
「ホントに大丈夫? 一応治療はしたけど……」
「ぁっ……。……大丈夫だ。安心してくれ。全てが今ここで、終わる」
上体を起こしてベランダの方へ駆けて行き、アワィラを探す。居た。下でサラと交戦中だ。サラは苦戦している。レンゼがベランダから降りると同時に何度か殺された
「……なあ、アワィラ」
「あぁ? よぉ、起きたかザコ」
音を立てずに地面に着地するとアワィラを鋭い眼光で睨み付けた。左眼が、瞳が、二匹の龍が互いの尾を喰い∞のような形のものになっていた
「お前には感謝してる。なんて言わない。ただ、これだけを贈る」
地面を蹴り、アワィラの則頭部を掴んで顔面に膝蹴りを喰らわし、胸を蹴ってすぐに距離を取った
「さっきより、ちぃっと強くなったみたいだなぁ? えぇ? カスが」
垂れる鼻血を拭き、ニヤッと笑う。白煙は出ない。でも、アワィラの足元からは上がっている。サラのものだ
「じゃあ少しは相手してやろうじゃねえか」
返事はせずに走って行く。遠くの方では人が段々と群がり始めている。だからこそ、バレては終わりなのだ。バレれば軍に連絡が行く。その内の一フロアがなくなったからと言って関係ないだろう。誰かがその電話に気付けば終わりなのだ
だから戦う。せめて──。拳をアワィラの鳩尾に打ち込もうとした際に体を横に躱されてしまう
「ハハハハハハッ! やるじゃねえか! 見直したぜ!」
「お前に見直されても嬉しくねえんだよ」
髪を掴まれ、引き寄せられる。ブチッと数本が抜ける音が鳴り、刹那。アワィラの首にレンゼの頭が突っ込んだ
「がっ!? ぐっ……!」
すぐにその腕に髪を巻き付け、レンゼの首を締め付ける。足掻いても足掻いても離れない
「ぐそッ……! がっ──! ぁっ、ぐッ……!」
膝の辺りを蹴る。蹴る。蹴りまくる。それでも腕の力は緩まない。今度は首を締めている腕を引っ掻く。引っ掻いて引っ掻いて漸く血が滲み始めた
「そろそろ、死んで頂けますか?」
「テメっ! クソが!」
レンゼを捕まえていた腕を離そうとしたが、レンゼの髪が邪魔をしてそれを許さない。もう片方の腕でサラを殴る
しかし──
アワィラの頭の上に本が落ち、動きが止まる
「あぁ!?」
見上げると同時にアワィラの首と後頭部に拳が入る。首には子供の拳が、後頭部には女性の拳が
ゴギュッ
そんな鈍い音が鳴り、アワィラがその場でよろけて倒れる
「ッぅ……!」
顔をしかめてしゃがみ込んだのはサラ。それと同時にバキッと鳴り響いてアワィラが起き上がった
「テメェ……! このガキがァァァァああああ!」
髪がスルスルと腕から解けていく。それと同じようにレンゼが力無く地面にうつ伏せた。終わってしまったのだ。全てが終わったのだ。レンゼの髪の隙間からはボロリと土の塊が外に出た。それはまるで猫のような、猫の顔のような、顔の半分しかないような形だった
もう、終わってしまった──
アワィラへ殴り掛かるサラの鳩尾を殴打し、猿のようにベランダを一階二階と駆け上り本を投げた少女の前に躍り出た
「さっきはよくもやってくれたなぁ? えぇ?」
「だってもう読めないもの。だったら捨てたって良いでしょ? 誰だって要らない物は捨てる。これは常識。そんな常識も知らないの?」
「だったらなんだ? お前は俺に本を当てた。問題はこれだ」
突如、ベランダから射し込む月光が遮られた。地面が隆起してサラを持ち上げたのだ。青い光がやみ、アワィラに殴り掛かる
「邪魔すんな!」
サラの首がおかしな方へと曲がる。ゆっくりとソラへ近付いて行く。全く物怖じしない姿勢で睨み返し、途端に襲い掛かった
結果は──
惨敗だ
レンゼの瞳に一人の少女が映る
「アリ……サ……」
ポタリ。と雫が落ちた。紅く滲んだ雫が
「起きた?」
「ああ……。ごめん、俺……」
「いいの。アナタの何があっても自分を曲げない。そんな所が好きだったから……」
蒼い空、薄い雲、花の咲く草原で膝枕をされている。そんな感触に目を閉じて
「俺、アリサの事が──」
と、目を開けた時には暗い部屋に寝転がっていた。瞳には少女が映る。アリサではなく、ソラが
「ホントに大丈夫? 一応治療はしたけど……」
「ぁっ……。……大丈夫だ。安心してくれ。全てが今ここで、終わる」
上体を起こしてベランダの方へ駆けて行き、アワィラを探す。居た。下でサラと交戦中だ。サラは苦戦している。レンゼがベランダから降りると同時に何度か殺された
「……なあ、アワィラ」
「あぁ? よぉ、起きたかザコ」
音を立てずに地面に着地するとアワィラを鋭い眼光で睨み付けた。左眼が、瞳が、二匹の龍が互いの尾を喰い∞のような形のものになっていた
「お前には感謝してる。なんて言わない。ただ、これだけを贈る」
地面を蹴り、アワィラの則頭部を掴んで顔面に膝蹴りを喰らわし、胸を蹴ってすぐに距離を取った
「さっきより、ちぃっと強くなったみたいだなぁ? えぇ? カスが」
垂れる鼻血を拭き、ニヤッと笑う。白煙は出ない。でも、アワィラの足元からは上がっている。サラのものだ
「じゃあ少しは相手してやろうじゃねえか」
返事はせずに走って行く。遠くの方では人が段々と群がり始めている。だからこそ、バレては終わりなのだ。バレれば軍に連絡が行く。その内の一フロアがなくなったからと言って関係ないだろう。誰かがその電話に気付けば終わりなのだ
だから戦う。せめて──。拳をアワィラの鳩尾に打ち込もうとした際に体を横に躱されてしまう
「ハハハハハハッ! やるじゃねえか! 見直したぜ!」
「お前に見直されても嬉しくねえんだよ」
髪を掴まれ、引き寄せられる。ブチッと数本が抜ける音が鳴り、刹那。アワィラの首にレンゼの頭が突っ込んだ
「がっ!? ぐっ……!」
すぐにその腕に髪を巻き付け、レンゼの首を締め付ける。足掻いても足掻いても離れない
「ぐそッ……! がっ──! ぁっ、ぐッ……!」
膝の辺りを蹴る。蹴る。蹴りまくる。それでも腕の力は緩まない。今度は首を締めている腕を引っ掻く。引っ掻いて引っ掻いて漸く血が滲み始めた
「そろそろ、死んで頂けますか?」
「テメっ! クソが!」
レンゼを捕まえていた腕を離そうとしたが、レンゼの髪が邪魔をしてそれを許さない。もう片方の腕でサラを殴る
しかし──
アワィラの頭の上に本が落ち、動きが止まる
「あぁ!?」
見上げると同時にアワィラの首と後頭部に拳が入る。首には子供の拳が、後頭部には女性の拳が
ゴギュッ
そんな鈍い音が鳴り、アワィラがその場でよろけて倒れる
「ッぅ……!」
顔をしかめてしゃがみ込んだのはサラ。それと同時にバキッと鳴り響いてアワィラが起き上がった
「テメェ……! このガキがァァァァああああ!」
髪がスルスルと腕から解けていく。それと同じようにレンゼが力無く地面にうつ伏せた。終わってしまったのだ。全てが終わったのだ。レンゼの髪の隙間からはボロリと土の塊が外に出た。それはまるで猫のような、猫の顔のような、顔の半分しかないような形だった
もう、終わってしまった──
アワィラへ殴り掛かるサラの鳩尾を殴打し、猿のようにベランダを一階二階と駆け上り本を投げた少女の前に躍り出た
「さっきはよくもやってくれたなぁ? えぇ?」
「だってもう読めないもの。だったら捨てたって良いでしょ? 誰だって要らない物は捨てる。これは常識。そんな常識も知らないの?」
「だったらなんだ? お前は俺に本を当てた。問題はこれだ」
突如、ベランダから射し込む月光が遮られた。地面が隆起してサラを持ち上げたのだ。青い光がやみ、アワィラに殴り掛かる
「邪魔すんな!」
サラの首がおかしな方へと曲がる。ゆっくりとソラへ近付いて行く。全く物怖じしない姿勢で睨み返し、途端に襲い掛かった
結果は──
惨敗だ
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